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シネマ365日

2017年2月7日

特集「決断する女」⑦ 
ZIPPER/ジッパー エリートが堕ちた罠(2016年 社会派映画)

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監督 モーラ・スティヴンズ

出演 パトリック・ウィルソン/レナ・ヘディ

シネマ365日 No.2019

地獄に墜ちな

決断する女

彼が大統領にもしなったらと思うと、アメリカって、男の下半身に寛大なのね〜。この映画で本当にすごいのは、主人公のセックス依存症の検事(のちに議員)サムではなく、妻のジェニー(レナ・ヘディ)よ。彼女は夫の暴露記事が出る寸前に、書いた記者に身を挺して記事を握りつぶさせるのだけど、それは夫の危機を救うというより、ファーストレディを見据えた野心の一里塚と言ったほうが当たっている。しかしだ、それにしても「もうダメだ。検事を辞任する。落ち着いたら民事に移る。君は望み通り弁護士ができるよ」頭を抱える夫に経緯を問いただしたジェニーは、ものも言わず家を出て、夫の車をバットで叩き割り、どこかに走りさる。ついたのは暴露記者のコーカーの家だ。彼はジェニーに惚れている。ジェニーは単刀直入「書かないで。私は大統領夫人への道を守りたい。売春婦と夫が寝たことなんてどうでもいい」。コーカー「同類だからな。16歳のときから君に憧れていた」「13歳でしょ。で、どうするの?」…▼帰宅したジェニーは「コーカーは書かない」と一言。夫に「私たちの夢を、ふたりで定めた目標を投げ出さないで。もう引き返せない」「無理だったら?」「地獄へ堕ちて」「君がここまでやるとは…」「彼女(娼婦)たちはわたしにない、何かがあった?」「何もない」。なんです、これ。サムはエリート検事で司法長官を目されている。若くてやり手でイケメン、妻は美人。サムにいいよる実習生もいるが、浮気はしない。そのかわり部屋のパソコンでこっそりポルノサイトを見て自慰に精出す。息子もいる。夫婦仲はいい。ジェニーはロースクール時代、サムより成績がよかったが、家庭に入って内助の功に尽くしている。彼女の父は法曹界の大物だ。妻に頭が上がらない夫は担当中の裁判の証人としてきたエスコート・サービスの女性からサイトの存在を知り、思い迷った挙句、予約する。一度踏み外すと怒涛のごとくのめり込み、止まるところを知らない▼彼女ら高級娼婦は政財界の大物しか客に取らない。一晩1000ドルから2500ドル。会うのは指定されたホテルだ。はまり込んだサムはたちまちカードの限度額を超え、それでも約束の時間に遅れまいと、会議は途中で抜ける、架空のアポはこしらえる、コンビニで限度額を引き上げなりふり構わずホテルに走るのだ。女に免疫のない男が狂うと恐ろしい。夫の様子がおかしいとジェニーは感づいてはいたが、まさかここまで狂奔しているとは知らなかった。改めて夫に訊く。「何人とやったの。どうだった。なぜ浮気じゃないの。あなたは女をモノ扱いしているのよ。結婚が不幸だったのなら離婚すればいいのに」理詰めで来られてもサムは右往左往するだけだ。ジェニーが記事を差し止めたおかげで危機を脱したサムは無事当選。大統領に一歩を踏み出した。政界のフィクサーは釘をさす。「言っておくことがある。ジッパーの問題だ。議員になったら保護観察の身だ。クリーンである義務がある。国民にはおとぎ話が必要だ」彼はやたらジッパーをおろすなとサムに警告したのだ。シーンは一転、あるホテルの前でリムジンを止めたサムは物慣れた様子で部屋の前に。結婚指輪を外し、ノックし、ドアの陰に消える。愚かにもホドがある。遠からず破滅よ。身から出た錆びね。ジェニーも大統領夫人だなんて、人頼みの野心は捨てて、夫のトバッチリ食ってもっと大きな傷と恥を被らないうち、さっさと弁護士を開業したほうがいいわ▼サムみたいな無分別な男が泣きつく理由はほぼ決まっているのよ。「現実の世界から少し離れたかった。別人になりたかった。自分を忘れたかった」。現実を噛み締め、自分を見失わず、倒れても、また倒れても、起き上がらなくちゃいけないのが人生の修羅場でしょう。そしてそんなことはほとんどの男も女も、泣いたり、わめいたりしながら、でもやり抜いているのよ。今度こそ奥さん、助けてくれないわ。地獄に堕ちな。

 

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