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シネマ365日

2017年2月9日

特集「決断する女」⑨ 
ペギー・スーの結婚(1987年 ファンタジー映画)

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監督 フランシス・フォード・コッポラ

出演 キャスリーン・ターナー/ニコラス・ケイジ

シネマ365日 No.2021

やさしきコッポラ 

決断する女

離婚するつもりで現在別居中の主婦ペギー(キャスリーン・ターナー)が、過去に遡った夢の中で、夫チャーリー(ニコラス・ケイジ)との愛を確認、再出発を決意するというお話。夢の中で、というのは、同窓会でクイーンに選ばれたペギーが、ろうそくを吹き消す寸前気を失って倒れる、気がつくとそこは高校時代の学校の保健室。友達はみな25年前のままで心配そうにペギーを覗き込んでいる。家に帰ってきた。出迎えたママに「懐かしいわ」ママ「?」。ペギーの部屋は高校生のママ。妹のナンシーが帰ってきた。「ナンシー、愛しているわ!」抱きしめた姉に「いつも意地悪ばかりしていたくせに、きょうはどうして?」。このナンシーが驚くなかれ、監督の娘ソフィア・コッポラだ。ニコラス・ケイジは甥。ペギーの娘ベスはオスカー女優ヘレン・ハント。チャーリーの悪友にジム・キャリー、なかなか豪華な配役陣なのです▼本作は製作費が安かったせいもあるけど、ヒットしました。誰の胸の底にもある「高校時代に戻れたら」の甘酸っぱい過去回帰の回想と、ノスタルジアを掻き立てた、コッポラ得意の叙情性が顕著。娘もこの感性を受け継いでいるのですが、ソフィアの場合、感性が豊かすぎるのか、とりとめもなく美しさに迷い込み、結局何が言いたかったのか、よくわからない恨みがよくあります。でも、この映画を見ると彼女が女優ではなく、監督を志向したのがわかる気がします。どう見ても演技の萌芽ってものじゃないしね。キャスリーン・ターナーは「ローズ家の戦争」とか「白いドレスの女」とか、「私がウォシャウスキー」とか「決断」というにたる、心身ともアクティブな女性をよく演じています。それらに比べたら本作はファンタジーであり、離婚を思いとどまった理由が、そもそも夢で高校時代を一巡したという、アリス顔負けのノリなのですが、先に述べたように、誰もが持っている「高校時代」のノスタルジーが猛烈に隠し味として効いています▼ペギーの周りにも、恋人と寝るとか寝ないとか、授業をサボっていかがわしい場所に出入りした、大学進学に猛勉するメガネ虫男子、数学にずば抜けた成績で、だからつまはじきされる秀才、男子を追い回す女の子グループ、彼女らの夢は結婚、誰もそれを疑わず高校時代をエンジョイしている。バカらしいほど幸福感に溢れる青春映画なのです。それが、いや気がささず最後まで見ておれるのは、映画が必ずしもシアリアスである必要はないことと、コッポラの丁寧な作り込みのせいで…よくありません? 話はちっとも面白くないけど、一生懸命しゃべっているから、悪いから最後まで聞いていよう、という講演会。そんな感じで見ちゃうのね。それと俳優たちね。キャスリーンはあの通り、何をやらせても堂々として、同じく何をやらせてもインチキくさくなるニコラス・ケイジと好一対なのよ。彼女とニコラスは犬一匹で喧嘩するような、仲がいいのかよくないのかわからないのだけど、少なくとも奇妙なお友だちね▼もう一つの成功要因を挙げると同窓会。誰でも思い当たることがこの映画にはあります。高校時代、自分のことを好いてくれていた男の子が他の女性と結婚し、しかも彼は社会的に成功して、美しい奥さん同伴で来る。彼を見る同窓生の羨望のまなこ。あのときバカで軽薄な男子がカッコよく思えた女の子たちは、自分がミスったと思うか? いいえまあ、お似合いのカップルね」と口々にほめそやしながら、心の中では、だれの上にも不幸は巡ると、一瞬魔女になる。同窓会とは過去と自分と友人たちに邂逅し、人生の実相を再確認する場所である。そこでペギーは離婚を思いとどまり、チャーリーとやり直そうと決める。こういうところがコッポラの男感覚ね。思えば高校の時からず〜と成功に縁のないチャーリーだけど、優しいのね、彼は。女に見捨てさせないのよ。

 

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