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シネマ365日

2017年2月16日

特集「二度と見たくない傑作」⑦ 
レクイエム・フォー・ドリーム(2001年 社会派映画)

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監督 ダーレン・アロノフスキー

出演 ジャレッド・レト/ジェニファー・コネリー/エレン・バーンスティン

シネマ365日 No.2028

底なし沼 

二度とみたくない傑作

人間をサドとマゾに大別するとしたらダーレン・アロノフスキーは完全にサドね。この映画、登場人物が全員破滅するのよ。誰のせいでもない自分から破局へ走るのです。ごく普通に生活している日常のネジがどこかで狂う、その一本のネジは誰の頭の中にもある。たいていはしっかり締めているのだけど、ちょっとした拍子にズレが生じ、だんだん大きな歪みになり、取り返しのつかない奈落にはまり込む。どこにも救いのない映画だわ。狂う人間、逸脱する人間、その結果幸福になるか不幸になるかわからないけど、我知らず正気を踏み外してしまう人間って、ダーレンの好きなテーマね。「ブラック・スワン」のヒロインも心の闇にとりつかれてめちゃくちゃ自分を痛めつけてしまうし「ノア 約束の舟」だって、生命あるものの総脱出なんてやった挙句ノアは一種の「燃えつき」で虚脱してしまう▼原作がヒューバート・セルビー・ジュニアです。ダーレンと同じブルックリン出身。結核で片肺を切除し、喘息に苦しみ、ホームレスをしながら「ブルックリン最終出口」を書いた。映画にもなった。これにはまだ多少の救いはありましたが本作は涙も出ません。それをまたダーレンが、妖しい光線の入りみだれる映像なんかにするから地獄図的よ。いちばんかわいそうだったのはエレン・バースティンが演じた主婦のサラです。団地に住む平凡な主婦。息子のハリー(ジャレッド・レト)は母親の唯一の楽しみであるテレビを質入れしてドラッグを買うような奴だ。でもサラは息子を愛し、息子も母親をたまにだけど気遣っている。サラはテレビの視聴者参加コーナーに出演するオファが来るが、着ていくつもりの赤いワンピースの背中のファスナーが止まらなくなっていた。食べ過ぎと運動不足で太ってしまったのだ。一念発起ダイエットに励むが効果がない。ダイエット専門の病院に行くことにし、そこで出される何種類かの怪しげな錠剤を毎日服用することになった▼ある日、帰宅した息子は、そいつらはダイエットに覚せい剤を出すのだ、飲むのをやめろと忠告するが、体重が減り始めたサラは嬉しくて耳を貸さない。ハリーは友だちのタイロンと麻薬の密売に手を出し、恋人のマリオン(ジェニファー・コネリー)といつか洋品店の店を持とうと夢を描いていた。しかしつい手を出したドラッグがやめられず、マリオンもハリーもタイロンも薬を手に入れる金をつくるため、闇売春や密売人一味の手先になるなど、泥沼にはまっていく。サラは次第に幻影を見るようになり、やせ細り、常軌を逸した言動をとるようになる。ハリーはヘロインを打ちすぎた腕の傷が壊疽を起こし、病院で切断される。タイロンは刑務所行き。マリオンはセレブたちのセックスパーティーで、見世物同様の屈辱的な売春に浸かり、自分を見失っていく▼世間の誰もが持つありふれた動機だった。ハリーは小金を貯めたらマリオンと店を持つつもりだった、タイロンはやさしい母親の元に帰るつもりだった、サラは痩せたかっただけだ、それが身を滅ぼしたなんて、どこで何が狂ったのだろう。わたしたちは底なし沼に残ったたった一筋の道を歩いているようなものだ。一歩足を踏み入れる場所を間違えたら、地獄の底まで引きずり込まれる。私たちが今まで人並みに安定した生活を送ることができたのは、たくさんの人に守られた奇跡なのだ。厚生福祉のビデオや講演より、この映画を見せてやれ。人は何も悪いことをしていなくても滅びることがある。死ぬことがある。殺されることがある。知らないで、自分でそれを招いていることがある。

 

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