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特集「ザ・クラシックス」

2017年2月17日

特集「ザ・クラシックス6」① 
リターン・トゥ・パラダイス(1998年 日本未公開)

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監督 ジョセフ・ルーベン

出演 ヴィンス・ボーン/アン・ヘッシュ/ホアキン・フェニックス/ヴェラ・ファーミガ

シネマ365日 No.2029

ホロ苦い希望 

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この映画を見ていると感慨深い。製作時、主役3人は、ヴィンス・ボーン28歳、アン・ヘッシュ29歳、ホアキン・フェニックス24歳、本作でデビューしたヴェラ・ファーミガは25歳だった。それから18年、誰も沈没せず、第一線を維持しているのがうれしいね。ジョセフ・ルーベンはジュリア・ロバーツの「愛が壊れるとき」やジュリアン・ムーアの「フォー・ガットン」など、サスペンスを得手とする監督です。本作も二転三転するプロットや、予測を許さない不透明な結末など、ある意味では社会派サスペンスといえます。筋書きはシンプルです。旅先のマレーシアで知り合ったアメリカ人青年3人が、現地で大麻・女・酒三拍子揃って羽目を外す▼シェリフ(ヴィンス・ヴォーン)とトニーは、環境保護活動のため滞在するルイス(ホアキン・フェニックス)と別れ、帰米する。2年後、弁護士ベス(アン・ヘッシュ)が現れ、「ルイスが大麻所持で逮捕され2年間服役している。タイの麻薬取締の法律は厳しく、このままだとルイスは麻薬の売人として、8日後に絞首刑になる。残る二人が戻り服役すれば全員が刑期3年に。ひとり戻れば6年。誰も戻らなければルイスは死刑」と告げる。3年か、6年か、見殺しか。人ひとりの命がかかっている。シェリフはベスに「あんただったら戻るか」と訊く。ベスは「自分の答えを出していたから、あなたたちの答えを訊きに来た」と答える。シェリフの父は反対、トニーの婚約者のケリー(ヴェラ・ファーミガ)も反対。トニーは「半分戻る気でいる」とシェリフはベスにいう。最低限、ルイスの命は助かるからホッとしている。ベスは「トニーをひとりで行かせるなんてサイテーよ」と揺さぶり、結局ふたりとも刑を分担することに同意する▼マレーシアに向かう機内でベスがルイスの姉だとわかる。飛行機が着陸したとたんトニーはシェリフに言う。「まだここにいるつもりか。彼女は嘘をついた、弟のためならなんだってするぞ。俺たちは彼女の悪夢につき合わされたのさ」だがシェリフは止まり裁判所で刑を受け入れる。判事はシェリフの言動に感銘し、刑期の短縮は可能かと検察に示唆する。すべてうまく行くはずだった。だがこの事件を嗅ぎつけた米国の大手新聞が「美しい蝶の国(マレーシア)の裁判」について書き、簡単に言うと大麻所持くらいで死刑判決はどうかしていると批判したのだ。裁判長は「わが国の法を侮辱した」と烈火のごとく怒り「西欧人は麻薬に対するわれわれの法制度が理解できない、腐った社会の治安維持には厳しい法律が必要なのだ」と、一審の判決通り死刑執行を言い渡した。判決が極刑すぎるかどうかは別として、アジア人とアジア国家に対する欧米人の、軽率あるいは侮辱と受け取られても仕方のない批判に、裁判長が反駁したのは心情的にわかります▼絞首台に上がったルイスにシェリフは獄窓から叫ぶ。「ルイス、俺はここだ、ここにいる、お前は一人じゃない、俺を見ろ、見えるか、お前のこと、見ているぞ、お前は一人じゃないぞ」…後日ベスが面会に来た。「見たの?」「見たよ。神に誓って安らかな表情をしていた」「わたしの努力が足りなかったわ」「君は誰にもできないことをすべてやった」「なぜトニーと帰らなかったの?」「君が待っていると知っていたから。もし逃げていたら、二度と君の顔を見れない。そのほうが刑務所より辛い。君を見ていたい」「わたしもあなたを見ていたい。非公式にだけど、アメリカ大使館がマスコミの熱が冷めたら釈放してくれるって。最高で6か月。弟を家に連れて帰ったらすぐ戻ってくる。あなたが出るまで、ペナンを離れない」。着地点としてはラブストーリーですが、シェリフもベスも、ともに払った犠牲の大きさが物語を締め、辛口ではあるものの、希望の見える未来を示唆しています。

 

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