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特集「ザ・クラシックス」

2017年2月18日

特集「ザ・クラシックス6」② 
容疑者(1944年 サスペンス映画)

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監督 ロバート・シオドマク

出演 チャールズ・ロートン/エラ・レインズ

シネマ365日 No.2030

犯罪者に甘くない監督

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1940年代、この時代の映画っていいですね。ロバート・シオドマク監督なので余計そう思うのかもしれません。昔の映画って、尺がせいぜい80分、90分くらいだから、どうでもいいことをジャラジャラ描いておれなかった。手短なセリフをテキパキと喋り、シーンをあっさり溶暗にして次に移る。紙をめくると次の場面に飛ぶ紙芝居と一緒で、スピーディーなことこの上ない。それに、シオドマクは特にそうですが、登場人物がやたら多くない。名前を覚えるのも一苦労というややこしい長い名前もない。ジャックとか、ベティとか、中学の教科書で聞き覚えのある、ごく通常の地元アメリカ人の名前が多いのもグッド。ストーリーがシンプルな分、適切な場面転換で、スクリーンの印象を新鮮に保つ。それとシオドマク映画の女性はみな個性豊かなファム・ファタールだ。本作には強烈な印象の「イケズ女」が登場します。主人公フィリップ(チャールズ・ロートン)の妻です。そして殺される。殺されても仕方ないと、ほとんどの男性は思うにちがいない(笑)。イケズ女にせよ、悪女にせよ、シオドマクの女性たちはとてもパワフルです▼1902年のロンドンの話。フィリップはタバコ商店の支配人。妻のコーラとの間は冷え切っている。あまりに口やかましく支配的なので、息子ジョンは仕事に没頭できないと、引っ越した。フィリップは息子の部屋に移り妻と寝室を別にした。口には出さないだけで内心妻を嫌悪している。この夫婦の言い争いは壮観だ。「夫が年中家にいないから何曜日かもわからない。森の木を選び損ねたわ。ねじれて太った醜い木を選んでしまった」(フィリップは90キロの巨体である)。夫「お互いこの結婚で幸せを感じたことはない。愛し合うのをやめれば相手の行動が嫌になるだけだ」「わたしが嫌いなのね」「ぼくたちにはまだ何年も人生が残っている。お互いに別々に幸せに生きよう」「別々?」「離婚さ」妻は体面が悪いと逆上する▼夫は事務所に求職に来た、身寄りのない女性メリー(エラ・レインズ)と知り合い、好意を持ちあっていたが妻の勘づくところとなる。フリップは「もう会えない。妻に知られた。君に危害が及ぶ」と別れ話を持ち出す。ただではおかない女なのだ。その夜メリーと別れて帰宅すると、何もかも調べ上げた妻は「会社の上司にぶちまけてやる、あんたはクビよ、女の勤め先にも行ってふしだらな女だと教えてやるわ。充分な解雇の理由よ。クリスマスの特別プレゼントとして、明朝彼女の職場に持って行ってあげるわ。覚悟なさい!」。憎々しく夫を睨みつけ2階の自室に引き上げます。夫は唇を震わせステッキをつかむ。翌日、夫人は階段から落ちて事故死したことになっている。何一つ疑われることなく夫は葬儀を終える。そこへロンドン警視庁の警部補が訪問し、報告書だけではわからないと、しつこく現場を見て帰った。隣家のシモンズは妻に暴力を振るうDV男。働きもせずフィリップに金を無心に来る。フィリップは何でこんなゴロツキに、貞淑で美しい妻が耐えねばならないのか、気の毒で仕方ない。この男がフィリップに近づき「君の女房が死ぬ前夜、激しい口論が聞こえたぞ、翌日死亡して君は若い美人と再婚、保険金まで手に入れるのは運よくできすぎていないかね。警部補が聞きこみにきた。話そうか」と脅しにかかり、5ポンド巻き上げて帰る。次は「25ポンドだ、君が生きている限り俺は安泰だ」とうそぶく。シモンズが調子に乗って喋っている陰で、フィリップは飲み物の支度をし、スコッチに睡眠薬を入れた▼フィリップという男性は人と争うことをしない。シモンズに言わせると「柔和な者が地を受け継ぎ、我々がそれを奪う。君は戦わない。羊がハエを殺さないように」…争わないけれど殺しちゃったのね。フィリップは息子がカナダに移住するのと一緒に、自分たちも行こうとメリーにいう。ケチのついた土地にいたくないのはメリーも一緒で、新天地に移ることを決めた。船の出航の日、混雑するデッキに警部補が来て、シモンズの遺体があがった、犯人は彼の妻だという。フィリップは驚愕する。夫人は無実だというが…。警部補は初めからフィリップが犯人だと目星をつけていたが証拠がない、フィリップの人柄からして根っからの犯罪者ではないと判断し、自首するように、シモンズ夫人を架空の犯人にしたわけ。そうなの。息子夫婦と妻を客船に残したまま彼は下船し、一人警察に向かうのです。シオドマクの主人公たちは、大抵殺されるか、精神病院もしくは刑務所入り。本作も例外ではない。犯罪者に甘くない、クールなラストが特徴です。

 

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