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特集「B級映画に愛をこめて」

2017年2月23日

特集「B級映画に愛を込めて5」① 
ダーティー・コップ(2016年 犯罪映画)

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監督 アレックス・ブリュワー/ベンジャミン・ブリュワー

出演 ニコラス・ケイジ/イライジャ・ウッド

シネマ365日 No.2035

男たちのやり切れなさ

23-28_B級映画

イライジャ・ウッドが16歳のとき、アン・リー監督の「アイス・ストーム」に出演したとき、イヤな予感がしました。変人のアン・リーが、無垢のイライジャをおかしくしてしまわないだろうか、妙な粉まぶしにしないだろうかと。さいわいイライジャは「ロード・オブ・ザ・リング」三部作、「ハッピーフィート」のペンギンの声など、社会に毒を流す心配の皆無な映画にその後出演し、これでこの子も変態の道に入らないですみそうだと思っていたら、なんとアレクサンドル・アジャに捕まってしまったのです。それが31歳。「マニアック」に主演したのです。自分に言い聞かせたものです。不幸中のさいわいだと思おう。おぞましい監督でなく、ホラーの貴公子・アジャだから、イライジャはきっと得るところが多々あるに違いない。ありすぎたのでしょうか。彼はその後、「狙われた黒鍵」「ゾンビスクール」と続き、紅顔の美少年はいつしか途方にくれた、おぼつかなげな視線を気だるげにたゆたわせる、貧乏神のような中年のオッさんに。そこへ公開されたのが本作! しかも相方はニコラス・ケイジときたら、もうどう転んでも、まともな道には戻れないかも▼映画が始まって間もなく「やっぱりねえ」と思いました。イヤな予感はよく当たる。イライジャ扮するラスベガスの刑事ウォーターズは、ストーン刑事(ニコラス・ケイジ)とともに、現場検証で査収した証拠品を横流しして上前をはねる、せこい内職で小銭を稼いでいた。ニコラス・ケイジが植毛したのかどうか、禿げ上がっていることは事実だけど、割と毛のある頭です。彼は52歳になり、往年の切れ味のいいアクション、細身にガシッとついた鋼鉄のような筋肉は失われ、制服の上からでもわかるボテ腹になっています。そのかわり、といってはナンですが、アップになったときの炯炯とした鋭い眼光は、さすがニコラス・ケイジ。1本15億円ともいわれるギャラを取るだけの俳優だと思わせます▼粗筋は簡潔にしてよくある話。逮捕された小者の麻薬売人に20万ドルと言う高額の保釈金がキャッシュで払われ、売人は当日釈放されていた。「あんな下っ端の売人が、なぜ大金で保釈される値打ちがあるのだ」胡散臭さを嗅ぎ取ったストーンとウォーターズが金の出処を探ると、とある建物のなかに、巨大な金庫が隠されていることを突き止める。あの中は金か麻薬が眠っている、盗み出せば億万長者だ、どうやって持ち出す? ストーンは家を抵当に入れ、ドイツの会社に超高性能のドリルを発注した。一生一度の大博打である。映画は完全にストーンの犯罪者目線で進む。金庫室の上の住人は初老の男と若い女の二人だ。押し込んだストーンとウォーターズは二人を縛り上げた。警備員が見回りにきて、ウォーターズが対応し、うまく帰らせた。でもストーンは警備員をサイレンサーで射殺してしまう。男も反抗したといって殺してしまった。女も殺そうとするのをウォーターズは止め、トイレに手錠で繋いだ。ストーンは銃の売人も簡単に殺してしまった。声も表情も変えず、あっさり人を殺すストーンの変貌ぶりに、ウォーターズは空恐ろしくなる▼しがないピンハネ警官から殺人鬼に、音もなくスライドしていくニコラス・ケイジがいいですね。彼にいろんな評判はあるけれど、ありきたりの俳優ではないですね。金庫は破った。分厚い鉄の扉を開けると白い部屋だった。大金も麻薬もなく、白い壁に白い天井、白い床だけの部屋。外科室みたいに清潔だ。壁は碁盤の目状の直線があり、一つ一つの長方形が、はめ込みのボックスになっていた。一つの箱を開けると平たい大きなトレーに、整然と並んだ大粒小粒のダイヤモンド。何百万ドルになるのか見当もつかない。ウォーターズはいう。やめよう、とてつもない相手だ、殺される前に逃げようと。ストーンは耳を貸さない。ここまで来て何をいう、大丈夫だ…ウォーターズは女のところに引き返した。トイレのパイプに繋がれた女は、3歳の息子がいる、夫に迎えに行くよう電話したい、と訴えた。ウォーターズは電話してやるから番号を俺の掌に書け。ダイヤを詰め込んだカバンを持って金庫室から出てきたストーンをウォーターズは射殺しダイヤをもとに入れ戻す▼結末は、こうとでもつけなければ他にないとは思うが、あっけない。女が掌に書いた番号は組織の仲間の番号だった。車から女を下ろしたウォーターズは、ギャングの車に襲撃され殺される。二人の警官の遺体は警察に収容され、警官のバッジが遺品として査収された。センスの悪い運び方でこそないけれど、虚しい映画ね。人生に何の希望も先行きもなく、このままうだつのあがらない仕事を続け、上司同僚から格別重きも置かれず、年をとって死んでゆく、主人公たちが自分らのことをそうみなしている、やり切れなさがジンワリと伝わってくる。気力の充実しているときにみた方がいいわ。

 

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