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特集「B級映画に愛をこめて」

2017年2月24日

特集「B級映画に愛を込めて5」② 
ダミー(2003年 日本未公開)

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監督 グレッグ・プリティキン

出演 エイドリアン・ブロディ/ミラ・ジョヴォヴィッチ/ヴェラ・ファーミガ

シネマ365日 No.2036

やさしい気持ちになれる

23-28_B級映画

DVDのパッケージでは、ミラ・ジョヴォヴィッチが主演のサスペンス・アクション風ですが、全然ちがいます。ミラはオクテで、見ていてイライラするボーイフレンドのスティーブン(エイドリアン・ブロディ)の尻を叩き、彼が一目惚れした、職安の就職カウンセラー、ロレーナ(ヴェラ・ファーミガ)との恋を成就させる、どっちかというと三枚目の、柄でもないキューピット役を、わりと上手にこなしました。エイドリアン・ブロディは「戦場のピアノスト」でアカデミー主演男優賞。その後ふっつり受賞はもちろん、ノミネートにもなっていないという、珍しい人。ヌラ〜とした細長い顔が一大特徴で「ゆるキャラの哲人」ウェス・アンダーソンの「ダージリン急行」や「グランド・ブダペスト・ホテル」でおなじみです。ヴェラとエイドリアンは同い年の29歳でした。今から見るとどちらも初々しく、エイドリアンはたっぷりした艶やかな黒髪に、ヴェラはみずみずしい肌に、透明感のある、青春の名残をとどめています▼スティーブンは30歳になっても親と一緒に暮らす、気の弱い独身男。テレビでたまたま見かけた腹話術に魅了され、すぐ仕事を辞め人形を買い、見よう見真似で操り、腹話術の仕事を求めて職安に。担当のカウンセラー、ロレーナに恋する。スティーブの家族は変わっている。母親はノックもしないで部屋に入ってくる。父親は失業中でプラモデル作りに夢中。姉ヘイディは歌の才能があるのに人生に懐疑的で、小言ばかり言っている。友人のファンゴラ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は音楽で身を立てたいのだが歌は下手で、万引きの常習犯だ。スティーブが腹話術師になるつもりだと聞くと、早速「腹話術」の本を万引きしてきてやる。スティーブはダミー(人形)を介してしゃべるようになる。自分が言えないことでもダミーに喋らせたらスイスイ話せる。スティーブはダミーに話しかける。「僕は高校では仲間はずれ。短大では落ちこぼれ。未だに両親と同居。人生の負け犬さ」。そんなときロレーヌから老人ホームの余興に腹話術の仕事があると電話が入った。スティーブはダミーを連れ、がら空きの会場で、それでもなんとか喋り通す。ファンゴラは「電話してきたのだろ。デートに誘いなよ」ハッパをかけ、やっとデートにこぎつける。喜んだファンゴラは親切にもロレーヌの家のドアに赤ペンキで礼のつもりで「借りができたな」と書き、ロレーヌは、スティーブが変態だと思って警察に届け、スティーブは侵入禁止命令を食らう▼ロレーヌには悲しい過去があって、今は娘と二人暮らしだとか、いくつかのエピソードを経て物語は落ち着くところへ落ち着きます。スティーブはやっとロレーヌとキスして、ファンゴラはバンドを結成、ヘイディはステージで熱唱する。物語としてはこれといった変哲もなく、淡々と過ぎる日常です。でもそれがかえって、ミラのとんがった顔がスクリーンに現れるだけで刺激になったり、ヴェラの曰くありそうな、気になる雰囲気が漂ったり、エイドリアンが長い顔でボソボソ喋ると、深遠な人生の奥行きがあるような気になり、それにヘイディの大きな目・鼻・口の大きさはエイリアンを思わせ神秘的でさえある。登場人物たちの、うまくいかなかった人生があっちこっちにぶつかり、こすり合わされ、思いがけない展開があって、それがうまくいくか、そうでないか、いろいろあるものの、現実と折り合いをつけてなだめ、なだめ、あるいは勇気を出しつつ生きていく。大感激はないけれど、やさしい気持ちになれる映画です。自分がダミーに乗っ取られるような気がして、一度はダミーを捨てるスティーブが、意を翻してダミーと組んで腹話術をやっていこうと決めるところなんか、人間、何でもいいから好きな仕事でやっていくのがいちばんいいのだよと、幸せとは平凡であることを再認識。ミラがコミカルな、以外な一面を見せました。

 

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