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特集「B級映画に愛をこめて」

2017年2月25日

特集「B級映画に愛を込めて5」③ 
漆黒の闇で、パリに踊れ(2012年 犯罪映画)

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監督 フィリップ・ルフェーブル

出演 ロシュディ・ゼム/サラ・フォレスティエ

シネマ365日 No.2037

夜明けのパリ

23-28_B級映画

俳優には、名前も履歴も知らなかったけど、ふと見たワンシーンにハッとして、あれはだれなのだろうと、映画が終わってから調べてしまう女優や男優がいます。ロシュディ・ゼムもそのひとりで、彼の映画を初めてみたのは「この愛のために撃て」でした。フレッド・カヴァイエ監督の佳品です。重傷を負った凶悪犯サルテがゼムの役。映画の鍵となる男をサルテが寡黙に演じました。で、どこが「ハッ」だったのかといいますと、ラストシーンです。サルテは主人公夫婦を助け、自分は服役するのですが模範囚として早く出獄する。彼は自分を陥れた男の部屋に影のように現れる。復讐を秘めた孤独な男を背中だけで演じたゼムにしびれたわ。決してハンサムではないし、むしろゴリラ顔だし、演技もうまいのか下手なのかよくわからないのだけど雰囲気のある人なのよね。男でも女でも、そんな人っていません? 内面に持っているものがいっぱいあると感じさせる人。自分は喋らず話し手を上手に促す落ち着いた人▼この映画でも主人公シモン・ワイス警部(ロシュディ・ゼム)は大活躍するわけではなく、しっかり後ろめたいことをやっているベテランの刑事という設定です。原題の「ある夜」の通り、パリの夜回りにでた刑事の夜明けまでの行動を追っただけにすぎない。刑事が立ち寄る店やバーでたむろする男たちとのやりとりで、彼の背景がうっすら炙り出てくる。パトロールする区域はモンパルナス、ピガールのこわい場所だ。パリの裏の顔、ドラッグ、売春、密輸密売、犯罪都市としての顔が夜のネオンのなかに浮かび上がる。シオンはその夜、若手女性警官・ローレンス(サラ・フォレスティエ)と初めて組み、パリは地元だという彼女が「キャバレー号」(シモンのパトカーの愛称)運転手となってバーやディスコやクラブを巡回した▼犯罪取り締まり班のトップであるシモンにはいくつかの特権がある。違法営業を取り締まりだけでなく新規開店の営業許可も与える。歓楽街を牛耳るギャングたちもそれゆえシモンには一目おく。シモンも「郷に入れば郷に従え」とばかり、アメとムチを使い分け役得にあずかってきた。夜の顔役ガルシアは彼の親友でもある。行き先のバーで情報を仕入れ、相談に耳をかしアドバイスしたり、ローレンスは戸口で「待っていろ」といわれたり、「中に入って座っていろ」あるいは「紹介してやる」とか、売春ホテルやバーや、行く先によってシモンの指示は変わり、情報を集めているのか与えているのかわからない。相談に乗るといってもフツーの社会の市民相手ではない、話をする相手がみな昨日の犯罪者か明日の犯罪者なのだからハードな巡回である。シモンが店に入るとだまっていてもバーテンが酒をだす。まれに「何にします」と聞かれると「スコッチ」。ストレートでクイッとやるのである。ローレンスも一度はスコッチを頼んだが、入る店ごとに必ず酒が出るのでとてもつきあっておれない。シモンは「クイッ」とやるのは一杯のときも二杯のときもある▼自分が内部調査班の対象になっていることをシモンは感づいている。だれか密告したやつがいる。その夜シモンはギャングの大物リンドネルから、自分を調査班に売ったのはガルシアであることを知らされる。シモンは子供を連れて実家に行っているように妻に電話し、リンドネルに会いにいく。リンドネルとガルシアはパリの暗黒街で反目している。どちらにも通じて甘い汁を吸っている悪徳弁護士がゴルスキーだ。この弁護士の助言でガルシアは保身のためシモンを密告した。なんとなれば自分の店に許可をおろさないシモンを消そうとしたのがリンドネルで、シモンを役職からはずすため、二股をかけているゴルスキーがガルシアをそそのかしたのである。シモンはリンドネルに単独でかけあい、ガルシアに手出しをしないこと、ゴルスキーをクビにすることを条件に、リンドネルの店に営業許可を与えることを約束する。すでにパリは夜明けになっていた。そこへゴルスキー殺害の報告が入る。なんとまあ仕事の早い▼シモンは内部調査班に連行される。班長の取り調べがあると伝えられ、何時間も手錠のまま椅子で待ったあげく班長が来た。班長こそローレンスだった。彼女はシモンと行動を共にして彼の違法行為をその目でみた。しかし証人のガルシアはシモンの無罪を主張し、家宅捜査でも物証がなかったことからシモンはとりあえず停職処分、調査結果が出た段階であらためて尋問するとトーレンスは告げるが、シモンは「辞めるよ。潮時だ」と答える。夜明けのシーンでパリ警視庁が出ます。パリ警視庁の玄関でラストを迎えるフィルム・ノワールの傑作にリノ・ヴァンチュラとロミー・シュナイダーが共演した「検察官」(DVD題「レイプ殺人事件」)がありました。深夜の巡回、駆け引きと脅しの取引、犯罪と裏切りの町パリから闇の顔が消えていく夜明けをシーンにいれたのが秀逸でした。

 

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