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特集「タイムレスな女優」

2017年3月1日

特集「タイムレスな女優」① 
ニュースの真相(上)(2016年 事実に基づく映画)

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監督 ジェームズ・ヴァンダーヒルト

出演 ケイト・ブランシェット/ロバート・レッドフォード

シネマ365日 No.2041

歪められた証拠 

タイムレスな女優

ケイト・ブランシェットが弁護士事務所の廊下で、編み物をして順番を待っているという、意外なシーンで始まります。彼女の自己紹介はこう。「わたしはメアリー・メイプス。テレビ・プロデューサー。ニュースの世界に20年。エミー賞2回。捕虜虐待を暴いた。テーマを見つけチームを組み60分の番組を作り上げる」。メアリーはCBSの内部調査委員会への召喚を控え、弁護士と打ち合わせにきたところ。事件は2004年、CBSのメアリー・チームはブッシュ大統領の兵役逃れをスクープした。翌日ニュースの証拠文書が偽物だとブログで出回った。タイプライターしかない時代に、その文書はワードで作成されているという指摘だった。偽造の文書を見抜けなかった取材陣は、大統領侮辱という大ミスをしでかしたことになる。万全の態勢で臨んだ取材だった。証言の裏も取り、文書の確認も怠りなかった。どこかに罠がある。テレビ局内部ではそれまで好意的に支持してくれた上司も敵に回り、外部からの中傷と脅迫でメアリー・チームは孤立する▼ケイト・ブランシェットが濃い目のメイクをバチッと決め、四面楚歌の中で信念を貫くジャーナリスト。好きそうな役です。メアリーを信頼し、取材を任せるCBSの伝説のキャスター、ダン・ラザーにロバート・レッドフォード。メアリー・チームの個性豊かなメンバーは金でも動かぬ、名誉でも動かぬ、リスクを物ともせず、真実を報道するジャーナリストの本能に燃える男と女たちです。映画化で綺麗になりすぎた面はあるかもしれませんが、事実を追い証人に会い、証拠を握ろうとする取材、今は古くなったかもしれない「足で書け」という記者のイロハを、きっちり抑えていく地道なプロセスと、基本を守る彼らの姿勢には好感を持ちました。やたら騒々しい特ダネ競争の事件ドラマとはまた異なる迫力がありました▼メアリーとチームのメンバーは総力を挙げて偽造疑惑挽回に打ってでます。しかし証人は証言を翻し、微妙なニュアンスの違いで前言を否定するなど、と思うとなぜこんな資料が、と思うような豊富な情報を敵側が持っていて、メアリー・チームの成果はなかなか上がりません。世間ではガセネタで汚名を着せられた大統領という、願ってもないゴシップで持ちきり。CBSは内部調査委員会を開く。ずらりと並ぶ弁護士団に対し、メアリーは彼女の弁護士とふたり、ポツンと対面の席に着く。味方弁護士は事を荒立てずにいれば収束するとアドバイスします。弁護団の追求は執拗ですが、メアリー・チームの取材に手落ちはなかった。委員会にはブッシュの側近もメンバーに入っています。ネットの書き込みには「このクソ女」「邪悪な左翼のクズ」「ろくでなしのブス」「社会主義者のフェミナチプロパガンダ」「男が相手にしないから女とやる」「ババアの腹を裂く」。人格無視の中傷がずらり。さすがのメアリーも意気消沈し、とにかく弁護士のアドバイス通り、委員会に反抗せず、事実を即物的に述べる対応で切り抜けてきたメアリーは「以上だ。追って結果を知らせる」という責任者の通達に待ったをかける。ここからがメアリーの最終弁論です▼俳優の技量にとって、セリフの内容を解釈する分析力もさることながら、そのモトになる明晰な記憶力も大事な要素に違いない。セリフが映画の決め手となった作品に「ハンナ・アーレント」があります。十数分に及ぶセリフだけのシーンを、声と表情で、難しい思想劇を視覚化したのが主演のバルバラ・スコヴァでした。ケイトは例のキツネ目を据えて切り出します。本作のクライマックスですので引用します。「メモが偽造者は1971年の空軍州兵に関する詳細な知識を持ち、習慣や規則、短縮形まで知っている。ブッシュの公式記録を把握し、メモ内容が矛盾していない。当時の空軍州兵の主要人物すべてを知り、名前だけでなく考え方やお互いの関係にも詳しい。ギリアン中尉が個人的メモを残していたことを知り、上官がどう感じていたかも熟知している。これらをもともと知っているか、調べるかしないと、わたしたちを騙すことはできない。それだけ時間を費やし正確を期す人物が、わざわざワードで打つと思いますか」メアリーは、文書はニュース報道後の大統領保護策としてか、あるいは報道そのものを操作しようという政府の黒幕が、故意にブログで騒ぎ立てた仕業だと指摘したわけね。さらに続きます。

 

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