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シネマ365日

2017年3月13日

特集「偏愛力1」③ ペニー・ドレッドフル2 
ナイトメア〜血塗られた秘密〜(下)(2014年 ホラー映画)

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企画製作総指揮=ジョン・ローガン/ピッパ・ハリス/サム・メンデス

出演 エヴァ・グリーン/ジョシュ・ハートネット/ティモシー・ダルトン

シネマ365日 No.2053

ひとりで歩くのね

偏愛力

本編のクライマックスはヴァネッサとルシファの対決です。ルシファはヴァネッサそっくりに似せて作った人形の口を借りてしゃべります。ヴァネッサの内にある光と闇が、どっちがどっちを乗っ取るか、ですね。二人の長いセリフの応答で、脚本のジョン・ローガンは怪奇文学上のリテラシーを、惜しげもなく開陳し、ここだけでちょっとしたセリフ劇を構成します▼ルシファ「我々は神の怒りに触れ、地上と地獄に投げ落とされた。兄弟二人の、一人は地上へ、一人は地獄へ落ち、永遠の憎悪に萌えた。地上に落ちた兄弟は夜中に人の血を吸い、わたしは地獄で死者の魂を食らった。我々の束縛を解き、天国を奪い返し、神を玉座から引きずり下ろす誓いを立てた。その時は闇が地上と天国を支配するのだ、永遠に。ヴァネッサ、お前に安らぎを与えよう。愛する男との平穏な暮らしを。死ぬ時は家族がお前の手を握ってくれる」ヴァネッサ「そのあとは?」「苦しみもなく、恐怖におののく夜もない。お前はわたしの最愛の伴侶となる」「わたしの仲間は?」「解放され自由に生きられる」「神は?」「よりよい神を見出せる」「わたしは?」「本当のお前になれる。苦しみを終えるのだ。わたしにキスを、ヴァネッサ」ヴァネッサは自分の人形に近づき、唇を触れようとして止まる。「普通の人生をわたしにくれる? わたしがそれを望むとでも? わたしは自分を知っている。あなたは?」。従わないヴァネッサにルシファは怒り、激しい呪文の掛け合いになる。ここのシーンの言葉はヴァービス・ディアブロと言われる言語、19世紀独特の詩や言葉の言い回しを使い、邪悪な音が連なったような異言語を作った。セリフ・コーチは毎日現場で一音ずつ教え、俳優たちは毎日繰り返し練習した。エヴァは「口からではなく体から出す」言葉を発し、形相も凄まじく変化する。渾身の力を込め、大音声の呪文と共に、ヴァネッサが人形の顔面をガシっと掴むとボロボロと皮膚が崩れ落ち、眼窩から無数の透き通ったサソリの幼虫が這い出てきた。ヴェネッサは止めの言葉を叫ぶ。「愛する者よ。誰が主人か知れ!」轟音と共に屋敷は崩れ落ちた。ヴァネッサの内なる悪は鎮まったのだ。ヴァネッサは透明な小さなサソリを手のひらに乗せる。サソリは手のひらの皮膚の中に溶け込んだ▼フランケンシュタインは、ドリアンの屋敷で踊るリリーを見つける。二人が踊るのはきらびやかな死のダンスだ。彼らはフランケンシュタインを生かしておき、研究を続けさせ、支配者の種族を残し、人間を従わせる不死の存在になろうと密約する。ヴァネッサはイーサンに「一緒に来て」と頼む。イーサンはしかしヴァネッサの元から去る。ヴァネッサはミスター・クレア(クリーチャー)に会いに行く。彼はロンドンを離れようとしていた。「行き先は」「人がいないところ。わたしの夢は自分と違う者と親しくすることだった。その夢は消えた。自分の本性を知り、血を流すことを避けるには、人がいない場所に行くしかない。あなたは?」「わたしには逃げ場がない」とヴァネッサ。「自分で棄てたの」「わたしときてくれ。誰も人のいない場所に」「クレア。わたしの周りには苦しみが集まってくる。あなただけは苦しめたくない。あなた程人間らしい人間はいない」。こうしてヴァネッサチームは解散となりました。ヴァネッサはイーサンから手紙を受け取りました。映画史に残る美しい別れの手紙かもしれません▼「親愛なヴァネッサ。君の優しさは一生忘れない。俺は生まれて初めて寛大な心を知った。君の思いやりと理解に感謝する。最も恐ろしく孤独なとき、君はそばにいてくれた。君は光を灯してくれた。だが俺は闇に生きる人間だ。もっと早く閉じこもるべきだった。忘れられた丘の、深い土の中に。君の道は困難かもしれないが、俺は破滅へと進む。一人で歩くのだ。君への愛を込めて。イーサン」。読み終えたヴァネッサは壁の十字架を外し、暖炉の火にくべた。つぶやく。「一人で歩くのね」。十字架はもう要らない。それは烙印のように、自らの背中に押されてある。神も悪魔も自分の中にいる。闇も光も抱いて、一人で歩くのだ…。ゴールデン・グローブ賞、エヴァに取らせたかったな〜。

 

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