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特集「偏愛力」

2017年3月14日

特集「偏愛力1」④ 
世にも怪奇な物語(上)(1969年 ホラー映画)

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監督 ロジェ・バヴァデム/ルイ・マル/フェデリコ・フェリーニ

出演 ジェーン・フォンダ/ピーター・フォンダ/アラン・ドロン/ブリジット・バルドー/テレンス・スタンプ

シネマ365日 No.2054

黒馬に悪魔の少女

偏愛力

原作がエドガー・アラン・ポーです。ポーのすべての作品の背骨は、逸脱の楽園とも呼びたくなる反自然主義にあります。彼の紡ぎだした怪奇と幻想は、夜空の星のような美しい虚無の空間で、今もまたたくことをやめません。ポーは人間の魂もまた、自分以外に決して知り得ない異世界でのみ自由であることが可能だと考えました。この妄想への偏愛がなければ、彼の詩も小説も決してこの世に送り出されることはなかったと信じます。「世にも怪奇な物語」はポーの小説を忠実に映画化しています。今から考えると、よくこれだけの映画人が集まったものだと驚嘆せずにいられない。第一話「黒馬の哭く館」第二話「影を殺した男」第三話「悪魔の首飾り」が収録されました。オムニバスですから、それぞれは短編です。にもかかわらず監督たちは腕を競い、彼らの代表作に加えてもいい、独自の映像美で仕上げています。怪奇と幻想の父ポーに対する、まるでオマージュのようです▼冒頭こんなナレーションが入る。「恐怖と宿命はいつの世にもある。それゆえ私が語る物語に日付は必要ない」つまり時代は関係ない、人がいる限り語られる。人間の心の「黒馬…」は、「黒猫」とともに、ポー一連のダーク・ファンタジーの傑作です。ヒロイン、フレデリック(ジェーン・フォンダ)は22歳にして莫大な遺産を引き継ぎ、日夜、女王さまのようなわがままな暮らし。ところがある日、森で出会ったウィルヘルム(ピーター・フォンダ)は言いなりにならない、アタマにきたフレデリックはウィルヘルムの馬小屋に放火し、愛馬とともに焼死させてしまう。以来、フレデリックの城に黒馬が現れ、フレデリックの心を奪う。ジェーン・フォンダの装束ときたら、バーバレラか。時代に関係ない設定とはいえ、史劇とSFが合体したような映像はさすがロジェ・ヴァデム。タカビーなヒロインはジェーン・フォンダにぴったりだし。嵐の日、落雷で燃え盛る草原にフレデリックは黒馬とともに姿を消す。ウィルヘルムの魂が黒馬に姿を変えて呼びに来たのでしょう、きっと▼二話を飛ばして先に三話に。フェデリコ・フェリーニですけど、この主人公トビー(テレンス・スタンプ)が、かつて名声をほしいままにした舞台の名優。ドラッグとアルコールによっておちぶれ、奈落の底をさまよっている。そこへイタリアの名車フェラーリを報酬に、映画出演の話が舞い込む。ローマ空港には取材陣が押し寄せ、到着したのはイタリアの映画祭。舞台に立ったトビーは、呂律の回らぬ舌でスピーチした後、用意されていたフェラーリに飛び乗り、深夜のローマの街を暴走する。やがて車は工事途中で途切れている道路に。彼にまとわりついていた少女の幻影が現れ、トビーは狂ったように叫びながらアクセルを踏み込み、ボールで遊ぶ少女に向かって闇の中を疾走していく。果たしてトビーとは実在の男なのか。フェリーニは物語の根本から観客に揺さぶりをかけてきます。少女の恐ろしく、いやらしい表情は悪魔が姿を変えたものに他ならない。フェリーニとは「道」のジュリエッタの存在にせよ、「甘い生活」の夜明けのローマにせよ、「女の都」の、マルチェロ・マストロヤンニの夢にせよ、映画そのものが幻想と呼びたいシーンで織りなされる。本作は短編であるものの、フェリーニが魔術師の真価を発揮した傑作。

 

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