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特集「偏愛力」

2017年3月17日

特集「偏愛力1」⑦ 
ウーマン・イン・ブラック亡霊の館(2012年ホラー映画)

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監督 ジェームズ・ワトキンス

出演 ダニエル・ラドクリフ/キーラン・ハインズ/ジャネット・マクティア

シネマ365日 No.2057

なんて恩知らず

偏愛力

19世紀のイギリスの田舎町、クライシン・ギフォードが舞台。弁護士のアーサー(ダニエル・ラドクリフ)は、弁護士事務所の所長から因果を含められ、ギフォードに出張した。勤務成績が良くないから、今回の出張で成果が出せなかったらクビなのだ。町のイールマーシュの館に行って、死亡したアリス夫人の遺言書を探し出すことが仕事である。着いたら町の人々の目が冷たい。子供の変死が立て続けに起こり、住民は未亡人の呪いだと信じている。娘たちが3人、揃って窓から飛び降りたり、洗剤を飲んで血を吐いて死んだり、焼身自殺したり。館は干潟の向こうにあり、干潮時でないと屋敷に続く道は現れない。ゴシック建築の豪壮な邸宅だが、今は無人で荒れ放題だ▼ホラーの基本が忠実に描かれる。カビの生えた屋根裏部屋、暗い長い廊下、風邪と雨にガタピシなる部屋、誰もいない部屋で聞こえるオルゴールの調べ、幽遠な太いロウソクの灯り、暗がりに浮かぶ女の影、見下ろせばしっかり墓地もある。ラドクリフ君、いやアーサーは地元の名士サム(キーラン・ハインズ)の協力を得て、屋敷の古手紙や書類の整理にかかる。宿は追い出された。余所者とくに館を調べて亡霊を起こす奴は追い出すに限るらしいのだ。それにしても住民の全員が疑惑と憎しみに満ちてアーサーを見るのは亡霊の恐ろしさを物語る。亡霊、亡霊とさっきから書いているが、どういう亡霊かというと、亡き未亡人が自分の息子ナサニエルが死んだ悲しさに、住民の子供たちをとり殺しているというのだ。事実、子供たちは何人も事故死した。サムの息子も死んだ。夫人のエリザベート(ジャネット・マクティア)は、「双子」と称する2匹のワンチャンを息子代わりに可愛がっているが、可愛がり方の度がすぎている。犬に服を着せ、椅子に座らせ、テーブルの席に着かせるのだ。要するに、子供を亡くした悲しみで人々はみな心と神経にダメージをこうむっていた▼首のかかっているアーサーは熱心に調べた。意外なことがわかった。ナサニエルはアリス未亡人の息子ではなく、彼女の妹ジェネットの子だった。子供のいないアリス夫婦はナサニエルを手に入れたくて、アリスを精神障害者に仕立て病院に入れてしまい、勝手に養子縁組をしてナサニエルを奪った。しかも馬車に乗ったナサニエルが沼地で溺死したのを見殺しにした、息子を奪ったばかりか死なせてしまった、ジェネットは嘆き首を吊って死んだ、その呪いが続いている…。律儀なアーサーは、息子の遺体を発見し母親と一緒に埋葬したら霊も鎮まると考え、沼地に沈んだ馬車からナサニエルの遺体をあげ、母親の墓に一緒に埋葬した。ラドクリフ君、自分で沼地に潜ってコールタールみたいな土に真っ黒になって馬車を引き上げるのよ。ところがだ、土地では黒い女の影を見た人は死ぬと言われてきた。もう亡霊も得心したから出てくるまい、誰でもそう思う▼でもよほど執念深いのか、彼女の亡霊はしつこくアーサーにつきまとい、アーサーの息子が来た日、不気味にホームの影から見つめているのだ。みれば息子はよちよちと線路を歩いている。アーサーはホームから飛び降り、間一髪息子を抱き上げた…目を開けると辺りは無人。息子が訊く。「パパ、あの人は誰?」。アーサーは微笑んで教える。「ママだよ」。自分を産みおとして死んだ母親を息子は知らなかった。アーサーと妻と息子は手をつなぎ、白い光の輝く場所へ消えていった…要するに妻が迎えに来て親子揃って天国へ行ったのね。おい、ちょっと待ったらんかい。ひどいじゃない。イギリスの亡霊の業界には義理もヘチマもないのか。成仏という高度な魂の機能を持っていないのか。やっと息子を探し出し、自分の元に返してくれたアーサーになんという仕打ちだよ。むちゃくちゃだわ。日本でこんな不義理をする幽霊なり、亡霊なり、いたかしら。彼らは怨念が浄化されると気がすんで天上に安住するのよ。それを、なんだ? 我が子の魂を救ってくれたアーサーと子供も死なせちゃう、さらに地上をウロウロし誰かに取り付くつもりなのだ。こんな恩知らずがいていいのか、なんとかしてくれよ。

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