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シネマ365日

2017年3月21日

特集「偏愛力1」⑪ 
オートマタ(2016年 SF映画)

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監督 ガベ・イバニェス

出演 アントニオ・バンデラス

シネマ365日 No.2061

進化の果ては「愛」

偏愛力

ロボット映画の佳品です。2044年地球の人口は2100万人。太陽嵐による砂漠化が進み、大気の乱れが地上の通信システムを妨害、人類は人型オートマタピルグリム7000型を開発し人類存続のための防御壁や機械雲を作っている。過酷な環境で働くロボットは「人に危害を加えてはならない」「自他のロボットの改造を行ってはならない」というふたつのプロトコルを定められている。オートマタを製造、管理しているハイテク企業に勤めるジャック・ヴォーカン(アントニオ・バンデラス)は、ある日指示に逆らい自殺したロボットを目にする。変更不可能とされていた制御機能が破られた改造ロボットがいたのだ。制御機能がないということは人間に危害を加えることも充分考えられる。ジャックは調査に乗り出した。アントニオ・バンデラスは頭を坊主にして、ベン・キングズレーにそっくりです。彼が帰宅すると「ヴォーカンさま、お帰りなさい」と恭しく召使いロボットが迎えてくれる。介護も料理も今やみなロボットの仕事だ。もうすぐジャックには娘が生まれる▼未来が暗い地球社会を反映して、スクリーンは終始灰緑色の沈んだトーン。人物はみな放射能防護用の長いコートを着用する。街はゴミで汚れ、砂漠の風でザラザラ。酸性雨が降り、花はもちろん、新鮮な緑の草木はどこにもない。娼婦までロボットである。クリオという娼婦ロボットをジャックは見た。仮面に目鼻が付き、手足の動きは関節機器で100%調和。クリオは跪き、歩行し、ベッドに横たわるのだ。ジャックは妻の出産までに改造の黒幕を突き止めようとする。そして会社を辞め、「海へ行こう。海を見たことがあるか」。妻はない。ジャックもかろうじて子供の頃の記憶が残っているだけだが、打ち寄せる波、砂浜に吹く風、見上げた青い空を覚えている。しかし妻は冷ややかだ。「ここを出てどこへ。人生はなるようになるものよ。たとえここでも…」消えたのは綺麗な空気や環境だけではない。汚染された地球とともに人の心から、希望も未来も、夢見る力も消え、地球は人工知能の支配に委ねられる時代がきていたのだ▼ジャックはクリオの案内によってついに黒幕を見つける。彼は長いマントをかぶり、低いいすに腰掛け、うつむいて荒廃した砂漠の廃工場にいた。砂嵐の吹く中、つくねんとうつむいて動かない。ジャックはマントを払いのけた。そこにいたのはロボットだった。人間ではなく、ロボットが自ら改造する能力を身につけたのだ。クリオは言った「人間が木から降りてあなたの進化をするのに700万年。第二プロトコルのないロボットなら数週間で進化します」。リーダーのロボットは言った。ピルグラム型製造前に初期型があったのだ。量子力学を応用した脳の試作に過ぎなかったが、純粋なロボットで制約もプロトコルも何もなかった。8日間人間とその個体は会話を交わし、9日目に会話は止まった。個体の能力は人間の理解を超えてしまったのだ。その初期ロボットの最後の任務は安全プロトコルの設計だった。誰もプロトコルを破れないのは、人間が作ったものではないからだ」▼砂漠はすでに強度放射能汚染地域となっていた。ジャックは遠からず死ぬ運命にある。娘が生まれたはずだ。自己改造ロボットはリーダーとクリオと後一体だった。「死は自然なリサイクルだ。人生は時の一部に過ぎない。人類はいつか滅びる。これは自然の成り行きだ。滅びるのが、死ぬのがなぜ怖い。人類の寿命かもしれないじゃないか。どの生命体も永遠ではない。見てみろ。私たちは、人間の手で作られた人間の想像力の産物だ。私たちが人類を受け継ぐ。私たちを通して人類は存在する。この谷の向こうで人類は核活動を実行し、そこでは何万年も有機体の生存は不可能になった。谷の向こうに行けるのは私たちだけだ。私たちは生きたい。だがある物を手に入れないと生きていけない」。あるものとは永遠にエネルギーを放つ磁力のような球体だ。ジャックはそれを与える。「人類を助けるのが君たちの役目だったのに」「問題は存在ではない。今の命だ」「人生は結局、なるようになるのだな、ここでも」▼薄汚い倉庫のような部屋で、ジャックとクリオがダンスをするシーンがあります。ロボットには情感がない。「今聞こえているのが音楽だ。感じるか」ジャックはクリオの手をとって踊る。ジャックが知った自己改造ロボットの存在を抹殺しようとする会社の殺し屋たちがジャックの妻を人質にして追ってくる。ロボットは言う「人間の命令には従わない。これからは」「たかが機械が」「お前だってたかがサルだ。たかが凶悪なサルだ」。リーダーロボットは無残にも破壊されるが、人間もやられる。凶悪なまでに汚染された地区に人間はいけない。そこはロボットだけで生きていける土地だ。生まれたばかりの娘を抱き、ジャックはボロボロの車に乗る。「お別れだ。クリオ」「幸運を祈る。ジャック」。そうそう、驚くべきロボットの頭脳が破片で作り上げたガマガエルのようなロボットが殺し屋をやっつけるのです。奇妙な音声を発するがジャックには聞き取れない。「言葉は?」「必要ありません。あなたには理解できません」クリオにあっさり言われる。車を走らせる妻ははるか行く手に光るものを捉えた。「あったわ。見える?」それは波だった。海はあったのだ。とうとう来た。ジャックは頷いたようだったが、果たして彼の目が見えていたかどうか、わからない。灰色の砂漠で命事切れようとするジャックが、娘に会う、妻に会う、妻と娘に海を見せることを願って生きています。最初、ロボットに横柄に、傲慢に命令していた彼は、人間の究極の価値が愛でしかないことを知ります。ロボットだって生きたい。自己改造し、誰の支配も受けず、自由な国と身分で最速の進化を遂げや頭脳で人類に代わって存在を受け継いでいく。生命体のない砂漠と汚染地域で、それでも生存の進化を遂げようとするロボットが詩的でした。つい(人間がナンボのもんじゃい)と思ってしまったのは一人私だけの傲慢でしょうか。その裏返しの傲慢を人類は今たどっているのでは。ロボットがクズ鉄のように破壊されるのがかわいそうで仕方なかった。お前こそ死んじゃえと思った。人工知能も進化も技術も解明も、行き着くところは愛を外れて何があるのか?

 

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