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特集「偏愛力」

2017年3月23日

特集「偏愛力1」⑬ 
迷宮の女(上)(2005年 ミステリー映画)

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監督 ルネ・マンゾール

出演 シルビー・テステュー/ランベール・ウィルソン

シネマ365日 No.2063

シルビーの起用 

偏愛力

多重人格モノはどんでん返しが作りやすいせいか、傑作・名作が多々あります。古典からいえば「サイコ」「エンゼル・ハート」それと「アイデンティティ」も入れよう。やや新しくなって「シャッターアイランド」「マシニスト」「ファイトクラブ」。で、思うのですが、主人公がほとんど男性で、女性の多重人格モノではセシル・ド・フランスの「ハイテンション」ハル・ベリーの「フランキー&アリス」ジョアン・ウッドワードの「イヴの三つの顔」、多重人格ではないがどんでん返しではオリヴィア・デ・ハヴィランドの「暗い鏡」ベティ・デイビスの「ふるえて眠れ」などがあるものの、数からいうと断然少ないのだ。女は正気でも豹変するのに、これ以上多重であられてはかなわん、ということ?▼本作はフレンチ・サイコ・サスペンスの佳品であり邦題からして卓抜です。「迷宮の女」なんて特にひねったようには見えないが、このタイトルに最大の仕掛けがある。名付けた人のセンスのいい、抜群の「つかみ」に一票。多重人格であるから、登場人物があれこれ成り替わるのが定石で、逐一ストーリーを書いても作り込みが巧みであればあるほど込み入って来ます。だから、この映画が成功した幾つかの要因についてだけ書きたい。最大のそれはシルビー・テステューの起用でした。そもそも「ヒロインで作りにくい多重人格モノ」に敢えて女優をぶつけた監督の自信を買おう。彼女の登場からラストまで、主人公クロードの動きに目が話せなくなるのは、心理の微妙な変化を彼女が繊細に表出するからです。何度も書いたけど、彼女がフランソワーズ・サガンを演じたときは「ソックリ度」にたまげました。目が、鼻が、造作のあれこれが似ているのではなく、サガンの雰囲気とか持ち味が生き生きしていたからです。サガンとは20歳で億万長者になった、フツーの人生からかけ離れた女性だった。彼女のノーマルでない頭の中を、どんな肉体が覆っていたのか。69歳で死ぬまで、細身のパンツの似合う少年のような体型は変わっていません。エステ? さあ。それより昼夜逆転、賭博に酒にタバコ、ドラッグに執筆、不規則極まる、しかもエネルギッシュな生活では、太る暇もなかったのでしょう▼シルビーはこのとき32歳だった。金髪の短い髪、クルッとした瞳。スクリーンでは精神病院に収容された患者。医師に刃向かう、脱走する、暴れる、自傷する、散々てこずらせ、自分が座る椅子一つ決めるのにもサイコロを振る。白いランニング一枚とGパン。胸は薄く、腰は細いズン胴で、落ち着きなく貧乏ゆすりをする。クロードという名前からして男女曖昧である。ストーリーには2本の縦糸があります。パリを騒然とさせている連続殺人事件。パリ警察のレイは心理捜査官のマチウスにプロファイリングを要請する。犯人のイマジネーションに思考を重ねながら追跡するマチウスは、地下の下水道に腐乱した27体もの死体を発見する▼もう一つは犯人逮捕後、クロードが精神鑑定のため病院で診察を受けていること。担当する精神科医ブレナック(ランベール・ウィルソン)は、彼女から暴行を受けながらも、催眠術によって、人格の分裂が起きた子供時代に遡った。暗い地下室にクロードは閉じ込められている。台所で待っていなさいと母親に言われたのに、「ママ、ママ」と探しながら地下室に来てしまった。奥の方にママはいたが一人ではなかった。男がいた。重なっていたママは離れ、怒り、クロードを鎖で繋いで地下室に放置した。

 

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