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特集「偏愛力」

2017年3月26日

特集「偏愛力1」⑯ 
スーサイド・スクワッド(2016年 アクション映画)

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監督 デヴィッド・エアー

出演 ウィル・スミス/ジャレッド・レト/マードット・ロビー/ヴィオラ・デイビス

シネマ365日 No.2066

満足か! オンブお化け

偏愛力

シェイクスピアもかつてはポピュラー・カルチャーだったことを思えば、アメリカという多元主義文化がアメリカン・コミックス・シリーズを生んだ、スーサイド・スクワッドが映画化され大ヒットしたことは、驚くには当たらないのだ。SNSの普及と発達によって、コミュニケーションとは単語カルチャーになった今、コミックであろうが小説であろうが、学生は大学で記憶術を学ぶ必要もなければ、それを身につけて永続的に活用する必要もなくなった。その代わり視覚的テクストの解読にかけては、変化の激しい知識の断片をやすやすと読み解いていく。初めからどことなく邪険な書き方になったとしても、「知識の断片」を「映像の断片」と置き換えたら、それだけで「スーサイド・スクワッド」所感はいえたのに等しい▼読みようによっては半分嘆いているみたいに聞こえるかもしれないが、そうとは違う。驚くほど膨大な情報量をコンパクトにまとめた、それだけでなく、いかにありふれたストーリーだとしても、アメリカン・コミックスのスーパー・ヴィラン(悪役)が、個性豊かに総出演するオールスターの楽しさ。この場合の「個性」は「メークアップ術」に言い換えてもいい。映像の曼荼羅世界、絢爛豪華な金襴緞子とでも呼びたくなるような、特殊視覚化のためのメカの勝利。お話は荒唐無稽なのに「そんなことはわかりきっているのだから、今さらぐちゃぐちゃ言うな!」叱りつけられそうなまでに堂々とした作風。「ヘイル・シーザー」の後に本作を見ると感慨深い。そうか、映画とはかくもジャンルと作劇と技術の競合による死闘を繰り返し、市場の危機をくぐり抜け、生き延びてきたのだと…。人間のエンタメに対する欲望とは、決して満足することのない「おんぶお化け」みたいなもので、オンブしてある場所にまで連れて行くと、ここじゃ足りん、もっと先まで行けと言い、連れて行けばもっと先だと命じ、絶対に背中から降りないのだ▼しかし、さすがのオンブお化けも、本作に関しては、たとえいっときではあっても、おとなしくならざるをえないだろう。永遠のヒーロー、スーパーマンが死んでから米国政府の最高機密会議が開かれ、席上、第二のスーパーマンとして犯罪者による特殊部隊を作ろうと決まるのである。政府高官アマンダ(ヴィオラ・デイビス)が危機を訴える怖い顔を見ると、笑ってはいけないと思うのだ。彼女は「ダウト~あるカトリック学校で~」でアカデミー助演女優賞、「ヘルプ 心がつなぐストーリー」で同主演女優賞にノミネートされた名優である。あんたがなんで?場違いかと思ったがとんでもない、非情の官僚をバシッと決めるのだ。世界一を自認するヒットマン、フロイドにウィル・スミス、アサイラム(精神病院)の精神科医が、患者とできて精神的・肉体的改造によるショックで、感情面が歪みサイコパスになった医学博士ハーレイ・クインがマーゴット・ロビー。彼女の恋人ジョーカーがジャレット・レトだ。犯罪者チームは「スーサイド・スクワッド」(自殺部隊)と名付けられ、成功すれば刑期の短縮、失敗すればその場で「はい、さようなら」倒す相手がこれまたふざけた相手で、魔女に取り憑かれた考古学者、ジューン・ムーン博士の世界征服の野望を破壊すること▼ド派手なアクションで倒し、倒され、の攻防がメーンなのだけど、見ているうちに思うのよ。要は、魔女とはいえ、女一人を寄って集ってやっつけようとしているだけね。何てシンプルな構図。知識や科学で解明できない異次元・異界の物体を「女」という存在で総合して、ええい、生かしておいたら面倒だってことにするのね。古来受け継いできた魔物と言ってもいい。人間の考え方って、技術革新のスピードほど鮮やかな進化は遂げられないことが、つくづくよくわかったわ。

 

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