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シネマ365日

2017年3月29日

特集「偏愛力1」⑲ 
家族の灯り(上)(2014年 家族映画)

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監督 マノエル・ド・オリヴェイラ

出演 ミシェル・ロンズデール/クラウディア・カルディナーレ/レオノール・シルヴェイラ/ジャンヌ・モロー

シネマ365日 No.2069

オリヴェイラかく語りき

偏愛力

マノエル・ド・オリヴェイラ監督は、2015年106歳で没しました。映画の生き字引ともいえるこの大監督に、のっけからミーハー的な話題もどうかと思うのですが、彼の女優の好みについて少し。オリヴィエラ監督は監督業の長い中断があり、本格的に再開したのは70歳を過ぎてからです。1年1作のペースで新作を撮り続けました。尋常ならざる体力・精神力といえませんか。シャネルもそう。香水以外のビジネスを休業していたシャネルが、再びゲートを開き、シャネル帝国を復活させたのは70歳。こういう人間離れした人種っているのですね。ご存知の通り、オリヴェイラの映画には独特のスタイルがあり、特撮もしない、SFも手掛けない、スペクタクルもやらん、音楽的センスは抜群なのですが、ミュージカルとなると、なんじゃソレって感じ▼そのくせ(トいっていいかどうか)女優にはすごいこだわりがあり、お気に入りはカトリーヌ・ドヌーヴでした。旺盛な活動を開始してからの作品に、「メフィストの誘い」「クレーヴの奥方」「家路」「永遠の語らい」「夜顔」などがあります。ジャンルで言えば文芸、社会派で、みなドヌーヴの主演か、ドヌーヴに関連がある。「クレーヴの奥方」は、ドヌーヴの娘のキアヌ・マストロヤンニがタイトル・ロールでした。「家路」は、なんでドヌーヴでないといかんのか、意味がわからんくらいちょっとだけの出番なのに、それでもドヌーヴを出してくる。「夜顔」。言わずと知れたドヌーヴの代表作「昼顔」の後日譚です。つまり、彼は面食いなのだ。スタイルや体つきや、身長があるとかないとか、痩せているとかそうでないとかより、顔にこだわりがあるに違いない▼そう思って見ていると、本作の主演女優のひとり、レオノール・シルヴィエラは23歳のときの「アブラハム渓谷」から「ブロンド少女は過激に美しく」を経て本作まで、20年以上にわたってオリヴィエラ監督の映画に出演してきました。派手ではないが、目鼻立ちのキリッとしたところが、ドヌーヴの雰囲気に似通っています。もっというなら、オリヴェイラはミステリアスな女優が好きなのです。下町の庶民派ではない、曰く言い難いムードのある女優。ホットドックをかじっていようと、握り飯にかぶりついていようと、ズタボロのシャツをまとっていようと、エレガントであることを失わない女優。それで言えば本作のこの二人はどうでしょう。クラウディア・カルディナーレとジャンヌ・モローです。ドヌーヴの話題から彼女らに飛ぶとミステリアスを通り越し、世界文化遺産の話題に、ヴェルサイユ宮殿からアンコールワットに瞬間移動した気がする。もはや映画界の大文化財だといいたくなる▼「永遠の語らい」は、ご存知のように「9.11」の直後に取られた文化への憧憬です。世界の代表的文化遺産をヒロインがめぐり、そこに込められた人類の平和と永遠の祈りを、旅を共にする各国の女性代表と語る。ドヌーヴとシルヴェイラが共演しています。華やかな豪華客船の旅を、監督はあっさり船を爆破、ヒロイン、シルヴェイラを海の藻屑としてしまう。文化も平和はかくのごとき。そして愛も人生はかくのごとき、と言いたそうなのがこの「家族の灯り」でした。

 

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