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特集「菜の花の匂うベストコレクション」

2017年4月2日

特集「菜の花の匂うベストコレクション」② 
教授のおかしな妄想殺人(2016年 コメディ映画)

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監督 ウディ・アレン

出演 ホアキン・フェニックス/エマ・ストーン/パーカー・ポージー

シネマ365日 No.2073

ゾンビ男の殺人計画

菜の花の匂うベストコレクション

さっぱりつかみどころのない映画だったわ。エイブ・ルーカス(ホアキン・フェニックス)はアメリカ東部の小さな大学の哲学科の教授。「心身ともボロボロで、とても恋愛なんかできない」教授は、シングルモルトの小瓶をポケットに入れ、大学の構内を歩きながらちびちびやる。かつては本も出し、講演もやり、マスコミに騒がれ、哲学の星と持ち上げられていたのに、妻の浮気か親友の死か、何かのショックで人生に絶望し、投げ出している。厭世的で無気力。衒学的な言辞を弄して学生に人気はあるが、意欲的でない彼の態度振る舞いが教授会では不評。にもかかわらず容姿端麗、成績優秀な女子学生ジル(エマ・ストーン)がエイブに興味を持って接近する。ありえないような設定ね。ジルのBFロイはデートのたびジルがエイブの話しかしないのですっかり気分を害し、それでも誠実な彼は「エイブの話はもうよせよ」と何度か軌道修正をジルに申し入れるのだが、彼女は受け入れない▼退屈ねえ。布袋腹のおじさん教授が人生に行き暮れていようと、厭世的だろうと無気力だろうと、勝手にやってよ。ジルだっていい加減な女だわ。悩む中年メタボ男にいかれるなんて、彼女の悪趣味に付き合いきれないわ。優柔不断が服をきたような男に、女性教授リタ(パーカー・ポージー)やジルみたいな綺麗な女がなんでフラフラ好きになるのよ。ウディ・アレンは自分の妄想を映画にしたのね。彼も一世風靡した映画人のきらめく星だった。世を拗ねたポーズが時代に迎合しない毅然たるスタイルであり、女をちやほやしない脚本が世間の女嫌いに受けた。でも彼のかっこよさなんか、距離を置いてみるとただの自己撞着じゃないの。ただひとつ、人になんと言われようと「それがどうした」のポーズに、ファンははまるのよ。彼の脚本にせよ監督にせよ、類い稀な才能だと思うわ。でも陰気だわ。どんなコメディを書いても陰々滅々。よくこれで笑う人がいるなと思うくらいダーク。「ブルー・ジャスミン」なんか、あれがサバサバした男っぽい、ケイト・ブランシェットのキャラでなければ、まさに「陰の気・毒気」の宅配便よ。アレンの映画の特徴って、わたし、不幸なことに、見終わって爽やかだったとか、気分よくなったという映画があまりないのね▼リストラや減給や、手当の増減に毎日必死で生きる市民にエイブ教授のような暇つぶしの贅沢な悩みは許されておりません。彼は魂の喪失者なのですって。早く言えばゾンビじゃないの。さっさと墓へ戻りな。リタ教授は海外で暮らすのが夢だが、夫とは目的が一緒にならず、人生にもがいている。エイブを口説き、ベッドを共にするが情熱のない男に半ば諦めムード、それでもきっぱり手を切らず、綺麗な海岸でデートし、夫の愚痴をエイブに聞かせる。「亭主が嫌なら別れろよ」と気のなさそうにエイブがいう。「無理よ」とリタ。「私は精神崩壊寸前だ」とエイブ。このおじさん、「精神崩壊」が売り文句なのね。黙って木っ端微塵になればいいのに、ウザッタイ人▼その彼がついに人生の目標に出会った。レストランで盗み聞きした悪徳判事の噂だ。子供の親権を争う母親は、育児放棄、虐待の夫が単独親権を持った、判事が賄賂で夫の肩を持ち、不公平な判決をした、母親は「あんな判事死ねばいい」と涙を流し、恨んでいる。エイブの脳の電球が灯った。「殺人。わたしなら誰にも疑われずにやれる。赤の他人を殺すのだ。動機はない。この殺人を成功させよう。人生に意味が見つかった!判事こそ生きる値打ちのない男だ。ゴキブリはふみ潰せ」殺人計画に彼は興奮し、セックスも野獣のように激しくなった。アレンは「罪と罰」のパロディにしたかったわけ?それにしても軽いわね。エイブは判事の毒殺に成功し、死因は心臓まひとされた。ある日ジルがエイブの留守中自宅に上がり、青酸カリの痕跡を見つけた。「判事はあなたが殺したのね」「世直しさ」「どうしよう。あなたは大事な人なのに、刑務所に入ったらもう会えないわ」「通報するのか」「当然よ。この街を出て行って。二度とあなたに会わない。あなたの哲学はフランス人の実存主義かなにか知らないけど、やったことは殺人よ。自首しなければ通報するわ」▼エイブは自首すると約束したが、腹のなかでは(誰がするものか、人生の喜びってやつがやっとわかったのに)。同行者として、リタを行きたがっていたスペインに連れて行くことにする。自首だ、警察だと騒ぐジルは邪魔者である。エレベーターの事故に見せかけ殺すことにした。ジルを廊下に誘い、エレベーターに押し付け、転落させようとしたら、ジルが激しく抵抗、足を滑らせ転落したのはエイブだった。ジルの独白。「エイブの記憶はやがてゆっくり薄れていった。でも恋愛や人生や自分のことを実地で学んだ。エイブは言っていた。教科書に書いてあることなんかアテにするな」。アレンが本作を作ったのは、アホらしい結論を勿体つけて言うためか。人を馬鹿にしている。このゆるさ、このタルさ、女優を替えても、インスピレーションがわかなくなった、どういじめていいのか、わからなくなったのね、かわいそうに。次なる女優はクリステン・スチュワートですって。ううむ、どう見てもアレンのガス欠は隠しようがないな。でもいい映画になることを祈るわ。

 

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