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特集「菜の花の匂うベストコレクション」

2017年4月12日

特集「菜の花の匂うベストコレクション」⑫ 
ロストガール(下)(2010年 ヒューマン映画)

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監督 ジェイク・スコット

出演 クリステン・スチュワート/ジェームズ・ガンドルフィーニ/メリッサ・レオ

シネマ365日 No.2083

分かちあうさびしさ

菜の花の匂うベストコレクション

ある夜、仕事から帰ってきたマロリーがトイレから出てこない。ロイスが声をかけると苦しげに呻いている。「アソコが何かおかしいんだ」「アソコってどこ?」「ヴァギナよ」「おしっこは?」「すごく痛む」「薬を調達するわ」ロイスは夫を叩き起こし薬局に走らせた。「マロリー、こっちへいらっしゃい。白い綿の下着は持っている?」「ううん」「じゃ、何も履かなくていい。ガウンは?」「(首を横にふる)」「わたしのを貸してあげるわ」手当を終え、店を休ませマロリーを衣料品店に連れて行った。店員が「娘さんが試着室に」と呼びに来た。マロリーは赤や青の派手柄の綿の下着をどっさり選んで満足そうだった▼ロイスはダグにも隠していたことをマロリーに打ち明けた。娘の事故は、ボーイフレンドと一緒に車にいるのを見かけて、自分が追いかけたせいだ、あのまま放っていたら何も起こらなかったのにと。「娘さんの事故はあんたのせいじゃない。わたしのママが死んだのもわたしのせいじゃないんだ」。ロイスはまたしても、マロリーの不思議な言葉力に、誰からも得られなかった親身な慰めを感じる。「あなたのママは美人だったのね」マロリーを見つめそういうと、うれしそうに頷き「胸も大きかった。そこは父親に似たんだ」と付け加えた▼そろそろ仕事に行くというマロリーをロイスは引き止める。「もう少し休まないとダメよ。売春はやめるべきよ」「売春じゃない、ダンサーだよ。働かなきゃ」「いいえ、やめさせるわ。16歳で売春もしている。放っておけないわ」マロリーは「親じゃないのだからどけよ。あんたの知らないことをわたしは知っている。何人咥えた?」ロイスは平手打ちを食わせる。マロリーは飛び出す。夜、警察から連絡があった。夫婦はマロリーを引き取りに行く。気に入らない客と揉めたのだった。クラブは営業停止となった。帰路、信号で停めた車からマロリーは勝手に降り「わたしは娘じゃない。今さら無理だよ」と叫んで走り去った▼夫婦は家に戻った。ダグは隣の住人に「いつでも電話を」とマロリーへ伝言と現金を預けた。二週間後、マロリーから電話があった。ダグは身振りで(マロリーだ)とロイスに知らせた。ベガスに行くことにした、これからバスに乗る、お金をありがとう…「俺たちはいつでもここにいる」とダグ。「ロイスが、君は賢い娘なのにもったいないといっている」マロリーがはにかんだ。「じゃ」。さっぱりと清潔な服に身を整え髪も短くカット、スーツケースはダグからのプレゼント、到着した大陸横断バスにマロリーは歩いていく。背中にきっぱりとした決意がある。大げさな感動ものではなく、しみじみと心が温かくなるとてもいい映画です。メリッサ・レオが、勇気を奮って夫の後を追うのがコミカルで、そこから映画はどことなくメリッサに焦点が移っていく。母親だからわかる情愛でマロリーを見守り、ふたりの女は年齢こそ違え、寂しかった自分たちの過去を分かち合うのです。久しぶりに男に声をかけられた、それを喜ぶ素直なメリッサの中年女が切なくて美しい。前半、凍りついたように冷たかったロイスの表情が、夫と再会し現実の世界に戻り、孤独なマロリーと気持ちを通わすようになって、生き生きと表情が豊かになる。メリッサは別人のように演じ分けています。クリステンは「ランナウェイズ」や「レディ・ソルジャー」や、ハリウッドの大作でない映画でいい味を出しています。そういえば曲者ジュリエット・ビノシュと堂々渡りあった「アクトレス」も、ヨーロッパの映画でした。

 

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