女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「最高のビッチ」

2017年4月15日

特集「最高のビッチ2」③ 
ハリウッドにくちづけ(2016年 ホラー映画)

Pocket
LINEで送る

監督 マイク・ニコルズ

出演 メリル・ストリープ/シャーリー・マクレーン/ジーン・ハックマン/デニス・クエイド

シネマ365日 No.2086

崖っぷちの女優

最高のビッチ

2017年ゴールデングローブ賞の生涯功労賞の受賞式で、メリル・ストリープはキャリー・フィッシャーの言葉を引用しました。その前年亡くなった「レイア姫」こと、キャリー・フィッシャーは本作のヒロイン、スザンヌのモデルであり、キャリーの父はエディ・フィッシャー、母はデビー・レイノルズです。母親デビー・レイノルズをシャーリー・マクレーンが演じています。キャリーが没したのは60歳でした。まだまだ先のあった人生です。その翌日デビー・レイノルズは娘の後を追うように亡くなっています。メリルが引用した言葉は「壊れた心を取り戻し、それを芸術に変えよう」でした。本作の原作・脚本ともキャリー・フィッシャーです。自らドラッグ依存症で死の一歩手前まで行き、母親はアルコール依存症で入院治療を続けた、女優というのはまったく、業の深い職業だと思わざるをえません▼半死半生で病院に担ぎ込まれたスザンヌ(メリル・ストリープ)から映画は始まります。メリルは41歳、シャーリーは56歳でした。スザンヌは見るからに生活が荒み、未来も希望もない中年の女として登場します。病院に駆けつけてきた母ドリスは、派手な出で立ちで元気はいいが、どことなく孤立している。見舞いに来た祖母の、娘や孫に接する態度や言葉は、冷たいとは言いませんが、おざなりです。彼女らが祖母にとって家庭の中のどんな位置付けだったか、多分相当なトラブルメーカーであり、心配の元凶だったと思われます。映画会社は、スザンヌのカムバック第一作の条件として、必ず母親と同居して撮影所に通うことを挙げます。スザンヌは退院したとはいえ、目を離したらドラッグに逆戻り、撮影中スキャンダルを抱え込むのは御免である、そんな懸念がありあり。スザンヌは母親の存在がプレッシャーだった。それが元でドラッグと男関係に走った。母は母で、娘に過干渉で甘やかし、いい年になった娘から子離れできない、映画は共依存の濃い母娘密着で進んでいきます▼B級映画の出演が決まったスザンヌが、予算が少ないからリハーサルなし、すぐ本番だと言われ、サボテンに抱きつき、縛り上げられたところに生きた蛇を放される、撮影のトリックや偽物の背景など、素人が見て楽しいタネ明かしも織り込みながら、母娘の確執が描かれていきます。母親は若い娘の才能を妬み、娘は母親の名声とキャリアに劣等感まみれ。しかも映画界にはデミ・ムーア、ジュリア・ロバーツ、ジョディ・フォスターら、新しい若い女優が輩出していた。原題は「崖っぷちからのハガキ」よく言ったものです。心が弱くなっているスザンヌは、ついつい、口先三寸の男のやさしさにホロリ、一夜をともにして朝帰り。待ち構えていた母親にどやしつけられるが、これもどうかしら、もう子供じゃない娘に構いすぎるにもホドがあるでしょ。しかしながら芸能人としての、エンタティナーとしての血は争えない。母親は、娘は女優としては三流でも、音楽なら一流だと、音楽に進むようにアドバイスする。とにかく情の濃い母娘だから真実、お互いを思い合っているのだ▼男と別れたスザンヌはー警官役やらサボテン抱きつき役やらの後、音楽シーンの撮影に入る。母親は車で事故を起こして入院した。ウィングを外すと見る影もないヨレヨレの母親に「わたしがやってあげるわ」とスザンヌがメークしてやる。やさしい手つきだ。母親は鏡を見て満足し、詰めかけた記者団に向かい、いざ、出陣。背筋をピンと伸ばし胸を張り、首を反らし…つくづく女優というのは「見られてナンボ」だと思わせられます。母親のことをボロクソに言う祖母に娘は抵抗し、病室から「出て行って」と追い出す。母親は「おばあちゃんにとって、わたしはいい娘じゃなかったのよ」としょんぼり。この家系の母親依存は三代にわたっている(笑)。それでいよいよスザンヌの歌うシーンの撮影になった。ママは張り切ってスタジオに行く。特等席の最上階で見るのだ。監督役がジーン・ハックマン。二度しか登場しない贅沢な使い方です。このラストシーンが大げさでなく言葉を絶するのです▼女優になる前歌手を志したというメリル・ストリープの絶対音感。うますぎていやになる。これじゃオスカーの候補にもなろう、マダム・フローレンスだってやってのけよう。スタジオを埋めたエキストラがウェーブを起こす、ママは特等席で身を乗り出す、どよめきの中で、ジーン・ハックマン会心の「カ〜トッ」が響いた。映画が与える限りの幸福感を存分に振りまいた、メリルの「ビッチ」ぶりでした。

 

Pocket
LINEで送る