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特集「最高のビッチ」

2017年4月22日

特集「最高のビッチ2」⑩ 
黒い十人の女(下)(1961年 コメディ映画)

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監督 市川崑

出演 山本富士子/岸恵子/岸田今日子/中村玉緒/宮城まり子/船越英二

シネマ365日 No.2093

ご立派

最高のビッチ

愛し合って暮らしたら「泣くこともなくなる。ねえ、子供を作りましょうよ。ちょっとした手術で元どおりになるのでしょ」風は市子が無断で退職届を出したと知って驚き「男が働き場所を取り上げられて、子供を作ると思うか。死んだも同然だ」。市子は平然。「テレビ局の仕事なんて、あなたにとって命より大切なものじゃないでしょ。ただなんとなく毎日やっているだけじゃない。あなた、なぜ働いてなぜ生きて、自分の人生の目的が何か、考えてみたことはあるの?」あるはずがない▼市子は劇団が主催してくれた女優引退パーティーに出席、挨拶を終え玄関に来ると、殺人同盟を結んだ十人、いや一人死んで九人の女たちが迎え、風と市子の先行き真っ暗な(トしか思えない)人生を、シャアシャアと祝福するのだ。そもそも市子と異口同音「あんな男、殺してやりたい」と意気投合したうえ、実行犯を買って出たのが双葉(山本富士子)である。彼女は料理屋を経営して立派な手腕を発揮している。男に未練はないが、時々は寂しいし、それ以上に腹ただしくなる。風はどこで情報を得たのか、女たちが自分を殺す計画を立てていると知り、どうしてそんな酷いことをするのだい…。双葉は二人だけで暮らすならお店もあるし、充分食べていける、あなたも女たちを清算して進退を決めなさいと迫る。「この店がつぶれて食べていけなくなったときはどうするのだ」「二人で乞食をしましょっ!」決然と言い放つ妻の迫力に、風が立ち向えるはずがない。狂言自殺を考え、拳銃は実弾にする、空砲にするとあれこれ策を弄しているうち、女十人が双葉の店の二階に勢ぞろいした▼これは市子が言うように社会機構の隙間風みたいな男の映画なのか、そんな正体のない男の愛人になり、後を追いかけまわしている女たちの浅はかさを描いた映画なのか、わからなくなってくる。女たちが風を砂丘に連れ出し、取り囲んで引導を渡すシーンは、詩情あふれる美しい撮影だ。女も男も、結局はつかみどころのない砂丘の風紋みたいに姿を変えて生きていくのだろう。双葉は生活を腐らす愛ならない方がマシ、きっぱり離婚し、店を繁盛させている。岸田今日子は局長から結婚退職を勧められながら、勤務を続けていくだろう。中村玉緒は新しい男を見つけて結婚した。あとの女たちもいい加減な風を殺すの、殺さないのと騒ぎながら、自らの人生を狂わせたようには見えない。風の無責任な言辞に市子は「人ひとり死んでいるのよ!」ときつくたしなめる。男のいい加減さもさることながら、女の自己主張が強烈だ。双葉は、愛だ、恋だ、などという枠組みをとっくに超え、恋情とか欲情とかいうのさえ型にはまりすぎる、とらえどころがないのに、情愛としては確かにある、自分でも持て余す情念を浮き上がらせる。山本は85歳、岸は84歳(2016)になった。山本がフリー宣言をしたとき、大映オーナーの永田雅一は怒髪天を衝き、映画界から締め出してやると息巻いた。山本は「自分の身は自分で守ります。生きがいがあるし、人間らしいと思います」といって意思を変えなかった。以後舞台で主演を通し現在に至っている。岸は作家志望だった。たまたま映画に出て、そのまま女優になったが自伝的な小説「わりなき恋」を書き、作家の夢を果たした。ばかりか82歳で自作の朗読劇に挑んだ。ご立派ね〜。

 

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