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特集「頑張るドイツ映画と女性監督」

2017年4月25日

特集「頑張るドイツ映画と女性監督」③ 
誰でもない女(上)(2012年 事実に基づく映画)

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監督 ゲオルク・マース

出演 ユリアーネ・ケーラー/リヴ・ウルマン

シネマ365日 No.2096

ふたつの人生

ドイツ女性監督

いい映画ですよ。砲声ひとつ聞こえず、一筋の硝煙も立ちのぼらない静かな映画が、無辜の市民を引きずり込み人生を破壊する戦争のむごさを告発します。曖昧な邦題ですが原題は「二つの人生」。戦争によって二重の生を生きなければならなかったヒロイン、カトリネにユリアーネ・ケーラー。アカデミー外国語映画賞の「名もなきアフリカの地で」に主演し、監督のカロリーネ・リンクと共に脚光を浴びました。思うに、オスカーの常連であるドイツ映画が、スキルのわりに大ヒットしないのはなぜ?陰気くさいと敬遠されているのかもしれないけど、決定的なマイナスは女優のアピールが下手なのよ。演技力も容貌もピカイチの彼女らが、ハリウッドに押されっぱなしなのは、ドイツの映画業界の訴求力が弱いからだわ。今どきのドイツの若い女性監督の作品は陰気でも暗くもなく、軽くもない秀作を連発している。メルケル首相はサッカーもいいけど、もっとお国の映画が頑張っていると、各国首脳にいってやりな。プーチンの犬好きは、立派に彼の「コワモテ」を緩和しているじゃない▼本題に入ろう。弁護士がある日カトリネを訪れる。彼女は海軍士官の夫と、法律家を目指す娘と母オーゼ(リヴ・ウルマン)と、幸福に暮らしている。用件は「生命の泉」でノルウェー政府を訴える、証人になってほしいというのだ。生命の泉(レーベンス・ボルン)とは、弁護士はこう説明した「第二次大戦時、ナチス占領下のノルウェーでは、地元女性とドイツ兵が肉体関係を持った。彼女たちはヨーロッパ全域でドイツの売春婦と呼ばれ、迫害された。戦後彼女たちは収容所に送られ、生まれた子供たちの悲劇は知られていない。金髪碧眼の子供をナチスは尊重し、堕胎を防ぐため各地に福祉施設・レーベンブロイを建てた。生まれた子はドイツに送られた。この子供たちは戦後、恥ずべき子供たちと呼ばれ、忌み嫌われた。長い間母親に会えず、そのまま死ぬ子もいた。これらの不当な処遇が裁判の焦点となる」。母オーゼはカトリネを産み、彼女は母と引き離され、東独の施設に送られ、ある夜ボートで漕ぎ出し、デンマークの海岸に漂着した。彼女が海軍士官の夫と出会った時はすでに母親と再会し、ノルウェーの市民として暮らしているときだった。妻の過去を知り「なぜ言ってくれなかった」という夫に「もし話せばすべてが崩壊すると思ったから」とカトリネは答えている。築いてきたすべてを奪われ家庭は崩壊する。それを守るため、彼女は極秘裏に単身ドイツに渡る。これがオープニングのシーンです。空港のトイレで黒髪のウィッグをつけ地味な服に着替え、男に会いに行く。スリリングな出だしです。ユリアーネ・ケーラーは細面のシャープな顔立ちです。夫は優しい父親で、娘はパパっ子である。法律の試験に合格し、本試験に臨みジュリストを目指す。学生結婚して赤ん坊を産み男と別れた。母と祖母がいるからしっかり頼っている。未婚の母で将来の不安はあるのかもしれない。人生はカオス状態だという娘に「なんとかしようと思うな。完璧な人間なんていない。君に必要なのは新しい恋人だ」。いいお父さんね。

 

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