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特集「B級映画に愛をこめて」

2017年5月2日

特集「B級映画に愛を込めて6」② 
恋のロンドン狂騒曲(2012年 コメディ映画)

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監督 ウディ・アレン

出演 アンソニー・ホプキンス/ナオミ・ワッツ/アントニオ・バンデラス

シネマ365日 No.2103

弱さ、切なさ、悲喜こもごも 

B級映画に愛をこめて

老いの現実を認めない夫アルフィ(アンソニー・ホプキンス)に、幻想から醒めるよう事実を突きつけたばかりに、離婚された妻ヘレナ。彼女はショックのあまり占師の元に通い、オカルトにのめり込む。元夫は30代の肉体を取り戻すべく、ジムに通い、おしゃれなファッションとスポーツカーで若作りに血道をあげ、元娼婦のシャーメイン(ルーシー・パンチ)と再婚する。娘サリー(ナオミ・ワッツ)は結婚によって人生計画のすべてを狂わせた女。医学生だったロイと結婚したら彼は作家に方向転換、一発は当てたが後が続かず、今やしがないタクシーの運転手で生活はカツカツ、サリーは働きに出て、家賃は母親に払ってもらっている。友人の勧めで勤めた画廊のオーナー、グレッグがアントニオ・バンデラス。渋くてハンサムで、サリーは恋心を抱くが、クレッグは親切なだけ。サリーの夫ロイは向かいの窓から見える、引っ越してきた美人に熱を上げる…▼オカルトに走った母は、交霊会でオカルト・ショップのジョナサンと意気投合する。サリーは子供が欲しい。でも出版社が見向きもしない小説を書く(最近は書こうともしなくなった)夫のおかげで生活に追われ、子供どころではない。夫、仕事・恋人、サリーの行く先には不運ばかり待ち受けている。サリーは父の婚約者シャーメインに会った。「パパ、彼女が元女優ですって?」プロの手腕にアルフィはイチコロ、毛皮、指輪、絹の下着、何でも買い与え、美白した白い歯並びと筋肉を自慢し、密かにバイアグラを服用する。登場人物のやること為すこと、全てが滑稽でサイテーに見えてくる。そう見えるようにウディ・アレンが企んでいるのだ。彼は、こと人間社会の軽薄とイジワルに焦点を定めると冴えまくるのだ。イケメン男のオーナーは、妻とうまくいっていないとサリーに打ち明け、サリーがますますその気になる。でも彼はちゃんと彼女をゲットしていることがわかり、気分はドツボ。クズ亭主ロイは、向かいの窓の美女をデートに連れ出し、元医者だった、本を書いた、今も執筆中だと御託を並べると、なんと、女は式場も日取りも招待客も決まった婚約を破棄し、ゴジラ顔のロイと結婚するというのだ。開いた口がふさがらない▼オカルト・ショップの主人が元妻の霊を呼び出してもらうのは、自分との結婚を報告するためだと思っていたヘレナは、「ダメだ、まだ妻を愛している」という男の一言に怒り狂う。アルフィは、金遣いの荒い妻に、有り金使い果たして破産状態、おまけに浮気の現場を目撃する。元妻とよりを戻そうとするが、当然とはいえ、追い払われる。狂気の沙汰の若づくりは一つも役に立たなかった。ロイは親友ヘンリーが交通事故で死んだと聞かされ、彼の書いていた原稿を盗み、自作だと出版社に持ち込んだところ大反響を呼び、一流作家の仲間入り。ところが死んだのは同乗していたもう一人の友達で、ヘンリーは意識不明であるものの、回復が見込めるとわかった。クズ男は絶体絶命。タイトル通り、狂騒曲で終始する。人生はゴタゴタばかり、生きるってこんなものさ、いやいや、人間ってこういうものだよと、アレンが出演者全員に地べたを這わせている群像劇。確かにコメディだけど、その面白さは苦々しさと表裏一体、面白がりながら最後は、ネガティブな真実ばかりでうんざりするよ、と振り払いたくなる。それがアレンの毒だろう。稀有な才能というしかない▼話はそれるが、アレンは共演の女優が気にいるとすぐ次作にオファーを出した。ダイアン・キートンとの長いおつきあい、ミア・ファーロー、スカーレット・ヨハンソン、最近ではエマ・ストーンが「マジック・イン・ムーンライト」に続き「教授のおかしな妄想殺人」に出演した。女優たちはアレンによって多分な刺激を受け、豊かな才能をいやましに豊かに、花開かせた。アレンも彼女らの受容性に惜しみなく養分を注ぎかけたに違いない。でも首をひねるのだけど、女優としてあれほど才能に溢れたメリル・ストリープとケイト・ブランシェットには、演技を褒めちぎっている割には、彼女らのために脚本を書き下ろした、あるいは次の出演に声をかけた様子がないのだ。アレン好みがどんな女優か、わかる気、しない?

 

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