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特集「B級映画に愛をこめて」

2017年5月5日

特集「B級映画に愛を込めて6」⑤ 
ミミック(1998年 ホラー映画)

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監督 ギレルモ・デル・トロ

出演 ミラ・ソルヴィノ/ジェレミー・ノーサム/F・マーリー・エイブラハム

シネマ365日 No.2106

残念な映画 

B級映画に愛をこめて

「世界一うつくしい昆虫図鑑」という本がある。著者はクルストファー・マーレイ、幻想のような昆虫の世界だ。本を開けば魔法のように現れる優美な昆虫の姿に息を飲む。昆虫とは、変態・擬態・変容において、染色、デザイン、絵画、小説、あらゆるといってもいいほど、アーティストたちのお気に入りのジャンルだった。エドガー・アラン・ポーの「黄金虫」というきらびやかな語感に惹かれ、初めて読書の世界で「虫」に出会ってから、ワンデマル・ボンゼルスの「みつばちマーヤの冒険」ファラデーの「昆虫記」、カフカの「変身」、最近では川瀬七緒氏の「法医昆虫学捜査官 赤堀京子シリーズ」など、昆虫とは脳の壁に迷宮を描くミステリアスな存在となった▼ところがこの映画の昆虫が残念極まりないのだ。汚らしく、気色悪く、姿形はグロテスクで悪役だったから、粗筋をどうこう、いうまえにげんなりしてしまった。俳優とか、演技とかをつべこべ評するつもりは全くありません。それどころか、ギレルモ・デル・トロが監督だからどんな「ラビリンス」になるか、胸躍らせていたのだ。配役だって豪華ですよ。ミラ・ソルヴィノは「誘惑のアフロディーテ」のオスカー女優、F・マーリー・エイブラハムは「アマデウス」でこれまたアカデミー主演男優賞という演技派揃い、だけど本作で彼らが演技という演技を示す前に、これというシーン、ぜ〜んぶ、バカでかい虫たちがぞろぞろ出てきてさらっていっちゃったからね、まったく気の毒だったわ。どうでもいいことだけど、ミラ・ソルヴィノと夫婦役になったピーター博士のジェレミー・ノーサムはケンブリッジ、ソルビノはハーバード、秀才コンビが昆虫に食われてしまうのだから、こういうところがトロのホラーなのかしら▼マンハッタンでゴキブリを媒介とするストリックラー病が猛威をふるい、子供達を死に至らしめていた。ほとんどの子は死亡、助かっても体が不自由になった。昆虫学者のスーザン(ミラ・ソルヴィノ)は、疾病予防管理センターのピーターから要請を受け、遺伝子を操作して媒介源のゴキブリだけを殺し、一定期間後に死滅する新種の昆虫「ユダの血統」を作り出した。それによって事態は鎮静した。3年後、ホームレスが次々行方不明になる事件が相次いだ。ニューヨークの地下鉄周辺だ。スーザンの元に巨大な昆虫の幼虫が持ち込まれ、ゲイツ博士(F・マーリー・エイブラハム)によれば死滅したはずの「ユダの血統」が生き延び、繁殖していた事実が判明する。粗筋だけを追うとそうなるのだけど、例えば、スプーンをカチカ鳴らす少年が何のために登場するのか、靴のサイズをすぐ言い当てられる少年の特殊な才能が、親父が「あの子は特別だ」とセリフで片付けるだけで、ストーリーのなかでは何にも役に立っていないとか、思わせぶりでしかない内容があって、興ざめする▼後半は、巨大化した昆虫が人間を襲うパニック・ムービーになるのだけど、女王蜂とか女王蟻とかは知っていたけど、この新種の昆虫はオスが種族のボスなのね。だからボス虫を殺せばあとは根絶やしになるらしい、のだけど無理やり自然に反して設定したみたいで説得力、ないな。ピーター・グリナウェイの「ベイビー・オブ・マコン」では、赤ん坊に触れば多産が叶うという「お触りビジネス」を女性が仕切っている。これも女性だから「多産」に説得性があるのであって、もし男性マネージャーだったら、お前きっと金を儲けて鉄砲でも買いしめ、紛争地に売りつけるのだろ、なんておよそ多産と関係ないどころか、あべこべの減産破壊消滅の方向を勘ぐってしまわない? その世界がたとえ残酷であれ、奇形であれ、グロテスクであれ、昆虫とはカタコンベみたいな地下網で、力強く生き延びるスタイリッシュな生き物だと思っていたのに。それなのにこの残念な映画は「ミミック3」まで作られたのね。…(声なし)。

 

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