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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2017年5月9日

特集 LGBT—映画に見るゲイ209 
リリーのすべて(上)(2016年 ゲイ映画)

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監督 トム・フーバー

出演 エディ・レッドメイン/アリシア・ヴィキャンデル/アンバー・ハード/ベン・ウィショー

シネマ365日 No.2110

女の体になる夫

特集「LGBT—映画に見るゲイ」

トランスジェンダーに正面から取り組んだ傑作だと思います。出演は、筆頭に挙げるべきは、のちの「リリー・エルベ」こと、アイナー・ヴェイナーの苦悩を演じたエディ・レッドメインでしょうが、彼の妻ゲルダのアリシア・ヴィキャンデルが圧倒的です。女になりたがっている夫に望みを叶えてあげようとすれば夫ではなくなる。彼らはとても仲のいい夫婦でしたから、ゲルダにしたら夫が日に日に女に近づいていく変容を目の当たりにするのは、白昼夢を見ているようなものでした。最も胸を打たれるのはゲルダが、自分が置き去りにされる寂しさや戸惑いや怒りを、正直に認めながら、それでもアイナーが、アイナーからリリーに移っていく姿を、ありのまま受け入れること。風景画家として名を成した夫は、絵筆も捨て、生きる目的はもはやただひとつ女になることです。ゲルダにしたらたまったものではないはずですが、彼女はアイナーが幸せならそれでいい、と心を決めます▼この決断は難しかったはずです。夫が女になることによって生じるであろう、現実生活のクイア(変態)扱い、戸籍・国籍を含めたアイデンティティーの混乱、アイナー当事者だけでなく、妻に注がれる奇異の目と、人間関係や家族関係の変化。フラフラになるほど悩んだのは、夫より妻でした。アリシアは骨太の演技で、運命を受け入れる女性を、受け入れるだけでなく、愛の在り方とはみなそれぞれに違っていいのだ、人や世間と一緒でなくともいいのだと、新しい自分の在り方を肯定し、迷いなく選択する強い女性を演じました。脇を固めるのは、ゲルダの友人ウラにアンバー・ハード。彼女は悩むゲルダに、性転換の手術が可能であるという、最新の情報を与えます。リリーをいち早く男性だと見抜くゲイの友人、ヘンリクにベン・ウィショー。ダイバーシティ社会、あるいはゲイ・ウーマン、ゲイ・パートナーとしての役の選ぶ人材においては旬の布陣と言えないでしょうか▼それにしてもエディ・レッドメインの美しさには目を見張りました。形象的なリリーにとらわれすぎ、彼の内面の悩ましささえセクシーに見えるのではないかという、恨みすらあります(笑)。レッドメインは先の「博士と彼女のセオリー」ではスティーヴン・ホーキング博士に扮し、見事オスカー獲得。これまた奥さんの多大な協力で宇宙物理学の巨人となった男性を演じたわけです。彼って奥さんに恵まれていますね。「美しすぎる母」ではジュリアン・ムーアと共演し、彼女の息子をやりました。タイトルから察しがつく通り、母との濃厚な愛情によって、自分も母親も破滅させてしまう少年を。彼は25歳でしたが少年というのにピッタリ。ともあれ、難しい役を徹底的なリサーチによって追跡し、まず形から入ることが得意です。「博士」もそうでしたし、今回のリリーにしても、女性としての衣装、靴、メイク、歩き方、座り方、話し方、視線など、仕草や振る舞いから、つまり外側からアプローチしています。レッドメインは口調や語気にこそ充分な配慮を払っていますが、声そのものは特に変えていないことを思うと、人とはなんと「形」と「型」の生き物であることでしょう。外側からのアプローチの極みは多分ここでしょう。監督はレッドメインを全裸にさせます。男性自身は丸映しです。アイナー(リリー)は戸惑いながら自分のそれを眺め、身をよじり、鏡から隠そうとしますがそれだけでは気がすまない。女であるためには女の体でなければならない、彼は男性自身を股に挟みます。鏡からその「邪魔物」は消えすべすべした裸体だけが写っている。アイナーにとって男性の性器は、自分自身を阻害する象徴でした。アイナーとゲルダは何人もの医師と病院を訪ね、治療方法を聞きますが、返ってくる診断は「精神異常」「同性愛者」でした。夫は精神病ではない。ゲルダは最後の頼みとして、ウラが教えてくれた医師、ヴァルネクロス教授を夫とともに訪ねます。

 

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