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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2017年5月14日

特集 LGBT—映画に見るゲイ214 
薔薇は死んだ(下)(2015年 日本未公開)

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監督 アッティア・スアース

出演 パトリシア・コヴァート/ドルカ・グリッウス/ラウラ・ドープローシ

シネマ365日 No.2115

いたわりの視線

特集「LGBT—映画に見るゲイ」

ロージとエルザがカトゥのことでケンカします。「その子の人生を奪わないで」とロージ。「あなたこそ自分の罪を着せるつもり?」「娼婦はダメ!」「修道女にするつもり?」「この詐欺師」「この偽善者。あなただって娼婦だったじゃないの!」つらそうに顔を背けるロージ。黙って雪かきに出たロージをカトゥが手伝う。夜になった。コニャックのグラスを盆に載せてロージが運んできた。エルザが一口飲んで盆に返す。ロージが残りを飲む。これもいつもの通り。明かりを消して退室するロージをエルザが「横に来て。眠るまで」と呼びとめ、隣に空間を作る。ロージは端っこに横たわる。背中を向けたままエルザが「抱きしめて。昔みたいに。親友だったときみたいに」。枕に吸い込まれるようなくぐもった声。「今も親友よ」とロージは肩を抱く。「意地悪をしても?」とエルザ。「大切な人だもの。そばにいたいの」ロージはこらえきれなくなって手を這わせるが、「やめて」とエルザ。ロージは翻弄されるのがわかっていて、エルザを思いきれないのですね▼ロージはエルザが死産した赤ん坊がカトゥに似ているといい、「エルザは理想の子をあなたに見ている。でもわたしたちの関係は神聖なの。絶対に破壊できない」。カトゥはロージの思いつめた様子に恐れを感じる。エルザはゲルゲイと別れるふうもなく逢瀬を重ねている。ある日カトゥがエルザの手紙をゲルゲイに届ける。眠っているゲルゲイを見て、カトゥは手紙を盗み読みする。一緒にアメリカに逃げようとある。今夜の夕方、何時何分の列車に乗ろうとまで、具体的に書いている。起きて歓喜した詩人はカトゥに別れを告げた。カトゥは詩人が好きだった。だがこのときは抑えていた。下の馬車で待っていたエルザが「しばらく外国に行くわ、留守の間は女将のところ(エルザが昔いた娼館)で世話になるといいわ」といった。エルザはほとぼりを覚まして帰国するつもりだったのだ。そしてロージに暇を出す。長年勤めてその仕打ちはあんまりでしょうというロージ。「あなたには貸しがあるわ、エミリア」とエルザを本名で呼び「一緒にいて一緒に眠り、一緒に生きた。マックスにもあわせた。あなたは何もかもわたしから奪ったのよ」「わたしはエルザ・マグナシュ。あなたは惨めな娼婦でどんどん年老いていく。マックスに告げ口したの、あなたね」ロージは手近にあったスカーフでエルザの首を絞めた▼カトゥは再びエルザの手紙を持ってゲイゲルを訪れていた。手紙を渡し、カトゥが玄関を出ると、そこには部屋から飛び降りたゲルゲイが、息を引き取っていた。手紙はエルザの気が変わった、実質別れの手紙だった。カトゥは屋敷に取って返し、怒りに任せてドア越しにいう。「あなたが不誠実で邪悪だか、ゲルゲイは死んだのです。さようなら、エルザさま」。中から返事はない。カトゥは屋敷を去る。ドナウ河畔で衣装箱が流れ着いた。中にエルザの死体が詰められていた。警察が来た。室内ではロージがエルザの赤い下着をつけ、髪を染め、警官らを見てコニャックを口に含んだ。エルザの葬儀を営んだ後、マックスはカトゥに「これは君がもらってくれ」と首飾りを渡す。いつかエルザの部屋を掃除していたとき、あまりの豪華さに見惚れ、手に取っていたのをエルザが見た。咎めるふうもなく、クローゼットからエルザは高価な服をベッドに投げ出し、好きなのを選べといった…ここは留置所。カトゥは面会に来てロージに言う。「エルザの遺言が見つかったの。数週間前のものよ。あなたにこれを。看守には話してあるわ。しばらく身につけられるわ」…しばらく。絞首刑になるまでのしばらくのあいだ。ロージの頬を滂沱と涙がこぼれ落ちた▼数日後、再び家政婦の口を探して、面接に訪問するカトゥの姿があった。ロージ、エルザ、カトゥ。体ひとつで貧しさから抜け出した女、傲慢で冷たく不誠実な、そんな女を愛し、報われない愛に自分自身を滅ぼした女、貧しくても威厳を持ち冷静に人生に対処する女。やるせなく寄る辺ない彼女らを、感傷も甘さもなく、蔑みもせず、過剰な味方もせず、冷たく映し出した監督の目は、でもどこか深い、いたわりを感じさせる。

 

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