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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2017年5月18日

特集 LGBT—映画に見るゲイ218 
孤独のススメ(上)(2016年 ゲイ映画)

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監督 ディーデリク・エビング

出演 トン・カス/ルネ・ファント・ホフ

シネマ365日 No.2119

ありのまま生きさせて 

特集「LGBT—映画に見るゲイ」

ゲイ映画とはしたものの、拍子抜けするほど日常的に飄々、淡々とストーリーは進みます。妻に先立たれ、息子と絶縁したフレッド(トン・カス)はオランダの美しい小村で、静かな日々を送る。家族も友達もいなくて、日曜には教会に行き、食事は自炊、妻と息子の写真を見ながらひっそりと摂る。大したメニューではないが、丁寧に作り黙々と食する。朝も夕も夜も、フレッドに変化をもたらすものは何も起きそうになかった。ある日ガソリンがないといって隣家にお金をせびりに来たホームレスふうの男がいた。「僕の家にも昨日、きたろう、詐欺だな」と問い詰め、金を返せと言ったが使ってしまってない、肩がわりに庭掃除をさせた。彼の真面目な仕事ぶりが気にいったフレッドは家に上げ食事をさせた。男はテオといい、ナイフもフォークも使い方を知らず、言葉も喋れなかった。食前のお祈りもしない。泊まる家もないのでテオにフレッドは一泊させる▼フレッドは几帳面な男だ。家具の少ない整理整頓された清潔な部屋。朝食の時間、手づかみでチーズを食べようとするテオに、ナイフとフォークを持たせる。バラバラの髪を梳いてやる。服を着替えさせ、ネクタイを締め「おいで」そういって教会に連れて行った。村人は奇異な目で見た。「突然現れたので食事をさせて泊めました」とフレッドは説明した。帰路テオはヤギのいる家で、「めえ〜」とヤギの真似をした。フレッドは庭でテオにサッカーを教えた。「足でするのだ。手を使うな」。スーパーに買い物に行ったとき、テオは床に四つん這いになってヤギのまねをし、少女が面白がった。父親が娘の誕生会の余興に来てもらえないだろうかと頼む。テオはアヒルの子のヨチヨチ歩き、鶏の鳴き声などをして好評だった。家に帰ったフレッドは写真に写っている妻と8歳の息子を紹介した。妻はトゥルーディという。テオは妻のクローゼットから女性の服を出しスカートを履いてサッカーをするものだから、近所の子供達は「ホモ野郎」と囃し立てた。口コミでテオのモノマネは評判になり、あちこちの余興に呼ばれるようになった。フレッドはギャラとチップを日常の家計とは別の小さな金庫に入れて貯金した。彼にはマッターホルンに登る夢があった。そこで妻にプロポーズした。もう一度行こうといった約束を果たしていなかった▼旅行代理店でパスポートを作る時、意外にもテオがIDを持っていることがわかった。その住所を訪れた。妻がいて「ダーリン。愛しているわ」といってテオを抱きしめた。テオは事故で重傷を負い、常に監視が必要な状態になった。病院は抜け出すし施設も脱走し、徘徊し、すぐいなくなった。そして数日したらふらりと戻ってくるのだ。「だから時々見に来てね。いつでも電話して」と妻はものなれた態度で優しくフレッドにいった。フレッドはテオを妻の家に置いて帰り、再び一人の生活に戻った。誰もいない駅。ホームレスの眠るビルの下。ヤギの庭を通るとテオがいないか覗いていた。スーパーで酒ばかり買って帰った。余興のオーダーがきたが「コンビ解消です。解散しました」と断った。翌朝テオが家の前にいた。ドアを開けてやると自分の家のように、さっさと中に入った。教会の牧師の助手みたいな男が「教会から締め出す」といいに来た。フレッドは怒った。「君に何の権利がある。神の家はみんなに開かれている」。フレッドの家の壁には「ソドムとゴモラ」とでかでか落書きされた。テオの妻が着替えを持ってきてくれた。夫に「落ち着く家を見つけたのね。元気そうね」と微笑みかける。写真を見て「息子さん?」と訊いた。「家出した」とフレッド。妻は「貯金の半分よ。マッターホルンに行く足しにして」。フレッドはテオに妻の衣装を着せ、雨の夜、教会に連れて行った。「いいかい。こういうんだ。病める時も健やかなる時も、死が二人を分かつまで私から離れないと約束しますか。返事は? 僕たちは結婚したのだよ」▼「不届きもの」と怒鳴り込んできたのは牧師の助手だ。「トゥルーディを愛していたのに、君が奪った。テオまで奪った」。おいおい、そういう事情だったのかい。フレッドは怒る気もせず「いっぱい飲むかい」といった。助手は「うちで飲むかい?」と訊き、テオとフレッドは家にいった。写真の暗室があり、写っているのはテオの写真ばかりだ。「今夜、テオを泊めてやってくれ」とフレッドはいって帰る。フレッドはテオの妻と小さなバーに行った。「息子はゲイだった。私が追い出した。妻はそれを許さなかった。息子は天使の声をしていた」。ステージで歌っているのが息子だった。「寂しい日はついいってしまう、私の人生ってなんなのだろう。心が傷つくと嘆いてしまう。人生ってなんだろう。別の考えを見つけよう。この大きな世界は私の人生の一部。これがあるままの私、ありのまま生きさせて、こんなに愛に憧れていた私。ありのまま生きさせて。これが私の人生」。フレッドはステージの真ん前で、思い切り拍手していた。ラストはマッターホルンだ。フレッドとテオが登ってきて、抱き合っている。ゲイとかLGBTとかと、ことさら表現するのに違和感を覚えるような、さりげない映画です。

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