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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2017年5月21日

特集 LGBT—映画に見るゲイ221 
ブラッディ・パーティ(2011年 ゲイ映画)

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監督 デニス・カンゼル

出演 ニーナ・ホス/カロリーネ・ヘルフルト/ジェニファー・ウルリッヒ

シネマ365日 No.2122

廃墟美

特集「LGBT—映画に見るゲイ」

こういうのを損な映画というのだわ。監督、女優みな一流なのに、「ブラッディ・パーティ」というタイトルと、血なまぐさいDVDパッケージを見たら、誰でもおバカ映画だと思ってしまうわ。ニーナ・ホスは「東ベルリンから来た女」「あの日のように抱きしめて」、カロリーネ・ヘルフルトは「パーヒューム」「愛を読む人」「パッション」、ジェニファー・ウルリッヒは「見えない雲」「素粒子」など、ドイツ映画界の30代・40代を代表するイキのいい女優たちよ。監督がこれまた「ウェイヴ」のデニス・カンゼル42歳。お馴染みヴァンパイアものだけど、作り込みが精緻です。ヴァンパイアのリーダー、ルイーズにニーナ・ホス、彼女が運命の女と感じた相手レナにカロリーネ・ヘルフルト、ルイーズに見込まれ夫も娘も捨てヴァンパイアになったが、見放されてしまったシャルロットにジェニファー・ウルリッヒ▼今さらだけど、ヴァンパイアって不労所得者なのね。少なくともこの映画では、昼間は寝ていて、夜になったら妖しいパーティを開き、集まってきた人間たちから、これは、というめぼしい女性を吸血鬼の一族にする。ルイーズによれば「男吸血鬼は騒々しくて強欲で、愚かだから、人間に殺され、自滅して絶滅したの。だから男は仲間にしないと誓ったわ。200年以上男なし。わたしたちは人間にも神にも縛られない。王様もボスも夫もいない。女だけの天下よ。食べて、飲んでセックスしても太らないし妊娠しない。仲間はヨーロッパに40人、世界に100人」。レナはベルリンの雑踏でスリをやっていた。たまたま入ったバーがルイーズたちのヴァンパイア選びのパーティだった。突然首筋を噛まれたレナは体調が狂う。太陽の光を受けると体が焼けるほど熱くなり、ナマ肉にかぶりつき、血のしたたりに吸い付く。傷は瞬時に治り、人間離れした攻撃力、瞬発力、跳躍力を備える。彼女らの弱点は太陽の光だけで、夜の世界は天下無敵である▼パーティとは美女たちが犠牲者を募るイベントであるから、かぶりつかれた相手は失血死する。あたりは血だらけ、死体がゴロゴロ、たらふく血を吸って満腹になったヴァンパイアたちは高級ホテルに引き上げる。彼女らが乗り付ける車はポルシェ、ランボルギーニなどの超高級車である。これらはみな盗難車だ。豪華なドレスは深夜にデパート売り場でより取り見取りで選んできた…。レナはしょぼい女スリから女王さまの暮らしに。ルイーズらのような野蛮な殺しはできないと思っていたが、空腹には耐えられない、やっぱりガブっとやるようになる。警察はベルリンの夜に起こる殺人に神経をとがらせるが、犯人は影も形も見せない。刑事の一人は女スリ時代のレナのときから、まともに付きあいたいと思っていた。恋したわけだが、レナはヴァンパイアになったから無理。しかも男は愚かゆえに絶滅し、二度と仲間に入れない掟だというし。ルイーズはレナを求めるが、レナはまだその気になれない。ベルリンで、毎晩だれかを血祭りにあげているから、警察が騒々しくなった、そろそろ別の町に移ろうとなった。シャルロットは介護施設に娘に別れを告げに行った。シャルロットは30代のまま年をとらず、寝たきりになった老齢の娘が「ママ」とかすれ声で呼びかける。レナは刑事に会いに行った。刑事の愛の告白に人間社会で一緒にやっていくことにし、ヴァンパイアたちとの絆は壊れる▼決壊した堤防みたいに団結が崩れ、彼女らは一人、また一人、ミスとトラブルで太陽の光を浴び、燃え上がって消える。警官の襲撃を食い止め、ルイーズとレナを逃したシャルロットは自ら死を選ぶ。ルイーズは刑事と手に手を取るレナに言う「その男と一緒になっても60年がせいぜいよ。彼に命をあげる条件はひとつ、愛しているといって、そうしたら信じるわ」。レナは「愛しているわ、ルイーズ。愛している」。「最高に美しい嘘ね」寂しく笑ったルイーズは朝日を浴び、夜明けの空に燃え上がって消える。で、レナと刑事は姿を消すのですが、60年どころか、レナが空腹になったらガブリで、終わり、でしょうね▼今は廃墟となったベルリンのテーマパーク、シュプレーパークが撮影されています。年間100万人を集客していましたが、2002年、親会社が倒産しその後放置、全く管理されず現在に至ります。大観覧車が不気味にそびえ、ジェットコースターは落書きで覆われ、恐竜のモニュメントは沈黙。廃墟をめぐるツアーで時たま旅行者が訪れる。美しいヴァンパイアの最期と、凄まじいまでに虚しい廃墟美をマッチングさせた撮影のセンスだけでも、この映画は認められるべき。

 

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