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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2017年5月23日

特集 LGBT—映画に見るゲイ223 
マンハッタン(1979年 ゲイ映画)

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監督 ウッディ・アレン

出演 ウッディ・アレン/ダイアン・キートン/メリル・ストリープ/マリエル・ヘミングウェイ

シネマ365日 No.2124

冷たい男

特集「LGBT—映画に見るゲイ」

ゲイに関係ないことはないのだけど、この映画ではサイド・ストーリーなのよ。それをゲイ映画にいれたのは、メリル・ストリープが主人公アイザック(ウッディ・アレン)の別れた妻ジルに扮し、彼女の離婚した理由が女性の恋人に走ったから、というのもあるのだけど、本作でウッディ・アレンに毒されていないのは、唯一ジルなのよ。それと17歳のトレイシー(マリエル・ヘミングウェイ)ね。ダイアン・キートン扮するメリーは、最初は反発しながらもアイザックが魅力的だと言い出し、結婚しよう、子供をつくろうとまでなる。男性陣もアレンの脚本・監督のレールの上を調子よくすべって、クソ面白くもないアイザックを持ち上げる、退屈な男たちを演じる▼ウッディ・アレンの映画作家としての才能は万人が認めるところですが、彼の演じる男が少なくとも本作で魅力的かというと(どこが?)というのが本音よ。彼の外見の風采があがらないのは衆目が一致しているし、もちろん男は顔でもスタイルでもないわ、それはそうだけど…。この…の部分に女はみな、ハッキリと口にだしてはいいにくいものがあるのよ。アイザックは前妻ジルと別れてから17歳の高校生とつきあっている。ようこんな都合のいいシナリオを書くなと思うが目をつぶろう。アイザックは42歳だ。トレイシーに「君は君の若さにふさわしい相手がいる、ぼくはこの通り小男で髪は薄くなり、君のセックスを持て余すようになるのは時間に問題」だと、歳の差コンプレックスをふんだんに呈するのだが、その実彼女の若い肢体から離れられず、だめだ、だめだといいながらグズグズ関係を続ける、こういう男をアレンにやらせると心底イヤミに演じます。それにいちいち台詞の衒学的なこと。一時彼の恋人だったダイアン・キートンや、アカデミー脚色賞候補に数えきれないほど彼をノミネートした推薦者たちは、現代によみがえったシェイクスピアだと絶賛するのだけど▼さて冒頭にもどります。アレンに毒されていない、と書きましたが、メリル・ストリープは本作ののち同じ業界にいてもこの才人ときちんと距離をとっていますし、劇中のふたりの関係ときたら最高よ。メリルの映画デビュー三作目。彼女は30歳。キツネ目はいやましに鋭く、痩せていてアゴはとんがり、アイザックを一瞥する視線は刃のように光る。ジルはアイザックと別れ彼との結婚生活の一部始終を本にして出版した。アイザックがジルに会いに女同士の家を訪れたときの、パートナーの女性に対する素っ気ない態度に、彼の現金さがよくわかる。アイザックにすれば相手の女は恋敵だが、メリルは「わたしがどんな女かは、つきあっていたときに知っていたはず」と言います。メリルの演技は、アイザックが本来もっていた冷たさこそ、精神的変態であるとばかりに追い詰める迫力があります▼弱者の狡猾さを演じるときのアレンほど、光度を増す役者はいない。友人からメリーが君をほめていたときくとメリーに接近。トレイシーに「ロンドン留学」の話が持ち上がったと聞いたとたん「君の将来を棒に振るな」と、さんざんトレイシーを泣かせたあげく別れ、メリーとラブラブに。ところがメリーがやっぱり別れた妻子持ちの男を愛していると言い出す。アイザックのみごとさは「ぼくが間違っていた、ロンドンには行くな」とアッという間にトレイシーにすがったところです。荷物をまとめて空港に行くトレイシーは「じゃ半年待って」と言います。ロンドンから帰ってきたらもう一度話を聞く、じつに冷静です。「半年もたつうちに、君はロンドンの演劇関係の男たちにとりまかれどうなるかわからない」汗タラ〜のアイザックに「あと2週間早ければね」と声も平静な声で告げトレイシーはタクシーに。アイザックの愛するマンハッタンだけが、心変わりしない唯一の恋人のように彼を見ている。もともとアレンの自虐的キャラは半端じゃないですが、自分も含めた人間の突き放し方は、やっぱり普通じゃないですね。

 

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