女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集 LGBTー映画にみるゲイ

2017年5月24日

特集 LGBT—映画に見るゲイ224 
ボストニアン(1984年 ゲイ映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ジェイムズ・アイヴォリー

出演 ヴァネッサ・レッドグレーヴ/クリストファー・リーヴ/マデリーン・ポッター

シネマ365日 No.2125

浪花女にボストニアン?

特集「LGBT—映画に見るゲイ」

ジェイムズ・アイヴォリー監督と原作者のヘンリー・ジェームズは相性がいいのでしょうね。監督として注目された「ヨーロピアンズ」も同じ原作者でした。本作のあと「眺めのいい部屋」でアカデミー賞3部門を、「モーリス」でヴェネツィア国際映画祭監督賞を、「ハワーズ・エンド」でカンヌ国際映画祭35周年特別賞を受賞、「金色の嘘」で再びヘンリー・ジェームズの作品を映画化しました。本作と「眺めのいい部屋」と「モーリス」と立て続けに制作された3本を、わたし、勝手にジェームズ・アイヴォリー監督のゲイ3部作と名づけております。本作はアイヴォリー監督がまだ女優たちからひっぱり凧になる前、ブレーク寸前の映画ですが、選択に葛藤するヒロインという、彼の好きな構図はできあがっています。でも葛藤することはするのですが、いつまでも葛藤などしていない、信念に生き、戦うヒロインというイメージがラストで鮮烈になっています。お気に入りのヴァネッサ・レッドグレーヴ主演のせいでしょうか▼時代は1980年代、フェミニズム創設期。女性の権利運動に活動するオリーブ(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)は、ある会合でヴェレナ(マデリーン・ポッター)の演説に聴衆を説得する天賦の才能を見出す。いっしょにいた従弟のランサム(クリストファー・リーヴ)はいかさま師だと決めつける。原作は知らないけど、映画に関してはこの3人の三角関係がテーマです。ランサムは悪口ばかりいいながらヴェレナにひかれ、ヴェレナはオリーブとランサムの間で、行ったり来たり。さらにヴェレナにはセレブの求婚者が現れ、彼の母親は結婚をまとめようと、オリーブに直談判する。オリーブは女性の権利拡張活動にヴェレナのマネージャーとして各地で講演を開催している。母親いわく「ヴェレナさんの結婚には反対なのね。親密な友情が壊されると思って。でも考えてみて。息子が身をひけばほかの男が近づくわ。素性の知れない男でも平気?」とゆさぶりをかける。たいしたお母さんです▼ヴェレナはハーバード大学で講演するなど、人気者になってきた。オリーブは「あなたを好きでたまらないわ。わたしはわがままなのよ。約束して、結婚はしないと」。え〜そんなこといっていいのか。思わず引いちゃうけど、オリーブはヴェレナの父親に5000ドルの小切手を切り(彼女は資産家です)「1年間はふたりだけにして」と要求する。とにかく思う通りのことをしたい女性なのであります。でも従弟はヴェレナにつきまとうし、ヴェレナも満更ではなさそうだし、オリーブは気のやすまる間がない。ヴァネッサが知的であるがヴェレナだけが弱みである女性を、強がったり不安に陥ったりしながら巧みに演じています。でも本当のところどうなのでしょう。ヴェレナはだれにも嫌われたくない女性で、オリーブには「約束するわ。あなたの言うとおりにする」「結婚しないで。結婚の申し込みがあってもわたしが許さないわ」「心配なの?大丈夫よ。わたしのすべてをあなたに。どうか信じて」。いいのかよ、こんなこと、うわごとみたいに言っていて。ヴェレナは各地で女性の権利について講演し聴衆を酔わせる。天下無敵の彼女の雄弁は、まあこんな調子です。「わたしたちは自由がほしいだけです。長い間わたしたちを閉じ込めていた箱の蓋を取ってほしい。この箱の中は居心地がいいよ、ガラス張りだし外からよく見える、出たかったら鍵をまわせばいい、これは安易な答えです。男性のみなさん、箱に入ってみますか。それがどんなものか理解できるはずです」確かにうまいな▼ランサムはランサムで猛烈なアタック。彼は男性権利社会の権化であるからオリーブとは犬猿の仲だ。女性の権利活動に対しては「わたしはあなたを自然な女に変えたい。君には男が必要だ。女性解放を叫ぶギスギスした女でなく」。ヴェレナはとうとうオリーブに言う。「あなたは彼を憎めと言っているけど、わたしにはできない」。ランサムはうろうろとヴェレナの周辺に出没し、ヴェレナは1時間だけとか10分だけとか、オリーブに許可をもらってランサムに会う。ばかばかしいにもホドがあるが3人とも大真面目だ。でもとうとう破局の日がくる。ヴェレナの特別講演会の当日、ランサムは強引に楽屋に押し入り、ヴェレナは動転。会場は満員で開始時刻がすぎてもヴェレナは現れない。ブーイングが始まり、オリーブも司会者も早く姿をだしてくれと要請するのに、ヴェレナはランサムと押し問答、あげく手に手を取って会場から逃亡するのだ。トンズラである。ドタキャンである。これはちょっとルール違反でしょう。聴衆は怒りながら席を立った。そこへ「ヴェレナの講演は中止です」とオリーブが登壇する。「申し上げたいのは、重大な問題に対処するのに個人の力だけでは困難です。みなさんの力を貸してほしい」出口に向かっていた参加者は足を止める。「聞いてください。確かに女性の声は微力です。しかしその声が結集すれば全女性の過去、現在、未来への熱い力となるでしょう。奴隷解放運動の勇者、W.L.ガリソンは言っています。真実には厳格に、正義には妥協はないと。この言葉のようにわたしたちは安易に話したり、書くことをやめ、弁解もせず、ごまかしもしない、一歩も後退しない。必ず勝利は来るのです」。堂々たる演説は拍手で迎えられた。監督は感極まったオリーブのアップでエンドにしている。結局、ヴェレナは例によってあっちにうろうろ、こっちにうろうろするだろうが、オリーブはヴェレナなしに運動はやっていけると確信し、新たな展開にはいるだろう。いいんじゃない。ランサム君も幸せになることだろうし。ボストニアンってニューヨーカーに対比されることがあるわね。カリフォルニアンVSボストニアンとか。かなり地域色の濃いキャラをさしているのでは?浪花女とか京女とか、江戸っ子とかの呼び方に通じるようなね。ランサムの出身は南部だし、ヴェレナはどこだった。まあここでボストニアンに該当するのはオリーブでしょう。

 

Pocket
LINEで送る