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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2017年5月27日

特集 LGBT—映画に見るゲイ227 
恋する女たち(2011年 ゲイ映画)

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監督 ミランダ・ボーウェン

出演 レイチェル・スターリング/ロザムンド・パイク

シネマ365日 No.2128

どこへいった、際限ない欲望は?

特集「LGBT—映画に見るゲイ」

D・H・ロレンスの原作をイギリスのBBCが製作しました。ケン・ラッセル監督の同じ映画があります(1969)。本作は3時間の長尺で、そのぶんコッテリ作りこまれています。変態のケン・ラッセルとは全然ちがう品のいい出来上がりでございますよ。ケン・ラッセルのときは俳優たちの辞退があいつぎましてね、どんな役でもことわったことのないマイケル・ケインや、女優魂のかたまりみたいなバネッサ・レッドグレーヴが「ノー」だったのが話題になったくらいでした。男同士のラブシーンもかなり過激でしたし。ケン・ラッセルは後年「レインボウ」に「チャタレイ夫人の恋人」に、ずいぶんロレンスがお気に入りでございました、好きな作家だと思い入れも強く、表現も過激になるのに決まっています。それにくらべると、本作はホント、行儀の良い文芸ドラマでした▼イギリス中部の炭鉱町が舞台。小学校教師のアーシュラ(レイチェル・スターリング)と画家のグドルン(ロザムンド・パイク)は美人姉妹。だれも放っておくはずがなくそれぞれ恋人がいる。でも姉は婚約者アントンの子を流産し、失意の日々だ。妹はロンドンで絵の学校にかよいながら中年の教師と不倫している。もうひとつの流れは視学のルパートと炭鉱主の後継者ジェラルドの関係だ。ルパートはジェラルドに焦がれているが、相手はその気がない。ロレンスの原作でテーマはもちろん「生と性」です。だれも男同士・女同士のセックス抜きのお話なんて期待していませんよ。ケン・ラッセルだと思い切り力コブいれるところが、とってもサラサラと描かれています。ま、それはそれでよしとして、でもね、流産した姉は母親に悩みを打ち明ける。「婚約者とうまくいかないのはセックスが問題なの。彼とは満足しないの。わたしをかりたてるのは肉欲と際限のない欲望なの」。お母さんも返事に困るが、「欲望は当然よ。あなたは真実に気づいた。魂を燃やせる相手をみつけなさい。そうすれば肉体も満たされるわ」と答える。じつは母親も夫とのあいだがうまくいっていない。母親がみるところ「幼い娘(長女)にあれほどの愛を注げば子供の心はふくれあがり、同じくらいの強烈な愛を求め続ける、ある日それが原因で苦しむ」。近親相姦の一歩手前だってことね。姉娘の欲望の強さは父親のせいか。でもこのカップルは劇の重要事項ではない▼問題は姉とルパート、妹とジェラルドというカップルができあがったあとだ。ルパートはゲイであることを隠して姉と結婚する、妹は二言目に自分のことを「芸術家」と言うのが耳障りだが、男のいいなりにはなる人生は選択しないと、元気なことは元気だ。しかし性格の強さがなんでもぶちこわしてしまう。姉とルパートは、世間体のなかで、まあまあ、普通の夫婦としてやっていくのだが、妹とジェラルドはケンカばかり、炭鉱の視察で姉妹と男たちふたり、4人が揃ってアフリカに行くことになった。姉の強すぎる欲望はどうなったか。以前の婚約者というのがひどい男で、女が「あなたとは一度も達しなかった」と別れる理由をいうと怒りまくり、ドライブの途中で姉に車から「降りろ。ここから歩いて行け」「え、30キロもあるのに」男は置き去りにする。姉はひとばん歩いて家に帰る。こういう目にあったから、あんまり正直に「欲望」を言うのも考えものだと思ったのか、ルパートとはものたりないのにきまっているが、今のところ波風たてないでやっている▼ジェラルドと妹はどっちも高慢な者同士で、ぶつかりあいばかりの愛にくたびれてしまう。そうそうロンドンの不倫の相手は、逃げてしまった。ただ逃げればいいものをこうまんちきなグドルンがよほど刺激的だったのだろう、すっかり感化され、妻にむかってお前は退屈な女だと暴言を吐き家庭をすて蒸発。グドルンのいくところ、平安はない、と思われるが、しょせん、親の庇護の下で勉強させてもらい、男にちやほやされ、自分で芸術家といわなければだれもいってくれそうもない画家なのである。ジェラルドもセレブの御曹司で二代目を襲名したばかり、これから本格的な炭鉱経営にのりだすのに、画家の卵に引きずり回されていていいのか、と思ってしまう。だからこの映画についてホンネをいうと、かろうじて大人といえば、愛とはドラマチックなものでもなく、ばかにしたものでもなく、それぞれが生きるパワーになればいい心の持ち方なのだ、と手を打った姉でしょうか。かわいそうにジェラルドは苦悩のあまり砂漠にさまよいでて、そのまま太陽に焼かれ死んでしまいます。あのヘボ画家が死ぬほどの女かよ。そんなことがいえる、母親かしっかり者の姉がいればよかったのにね。

 

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