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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2017年5月29日

特集 LGBT—映画に見るゲイ229 
ラ・タービュランス(2002年 日本未公開)

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監督 マノン・ブリアン

出演 パスカル・ビュシエール/ジュリー・ガイエ/ジェヌヴィエーヴ・ヴィジョルド

シネマ365日 No.2130

強く祈っていただけ

特集「LGBT—映画に見るゲイ」

監督と主要人物のいずれも女性という映画。ゲイ映画としたのはジュリー・ガイエがゲイのジャーナリスト、カトリーヌの役で、故郷を出ていったままのヒロイン、アリス(パスカル・ビュシエール)を片思い。結ばれなくて、結局地元の女性警官と仲よくなるという、ゲイはあくまでサイドストーリーです。が、彼女のセリフが泣かせる。地震の震源地調査のため生まれ故郷の片田舎、カナダのケベックに帰った地質学者のアリスは大学時代の旧友カトリーヌと再会する。カトリーヌはアリスを愛している。今も変わらない。アリスは地元の男マルクに惹かれている。カトリーヌはいつか故郷に帰ってくるかもしれないアリスを待っていた。アリスは「わたしが戻ることを知っていたの」と訊く。「まさか。強く祈っていただけ。わたしはそんな愛に生きる女。素敵な愛では?」オランド仏大統領は、役柄とはいえ、そんな「素敵な愛」が似合うジュリーだから不倫に走ったのでしょうか。どっちかというと、やたら脱いでいるヒロインより、カトリーヌのほうが魅力的なのですけどね▼それにしてもだ。本作はミステリー・サスペンスだと謳っています。事件の発端は1週間前の木曜日、村の海岸は潮の満ち干が止まり、砂漠化してしまった。異常な熱波による山火事が多発、大地震の予兆ではないかと調査が命じられ、アリスが東京から出張してきたわけ。潮の満ち干が止まってから異常な現象は人々の間で頻発した。中国系の少女の夢遊病が再発した。ある女性は自宅の庭の木々を10分で全部切り倒した。工場長は突然男性に関心を覚える。ある家庭の電子レンジは24時間動きを止めない。海岸に打ち上げられた貝の死骸は一様に「先週の木曜日4時」に死骸となっていた。アリスの調査は進展しない。少なくとも映画は中ダルミして、どこに着地するのかわからなくなる。つまり、異常現象はミステリーなのか、オカルトなのかあやふやになってくる▼やっと1年前の事故が関係していることがわかる。飛行機が海に不時着した。乗客は翼にすがって救援を待っていたが、だんだん弱ってきた。いちばん体の弱いヴァンダル夫人が引き潮に流された。みな探したが、力尽きてしまった。夫人はそのまま行方不明となり未だに遺体は上がっていない。ヴァンダル夫人とは、アリスが好きになった男マルクの妻である。夫人はカウンセラーだった。住民は、離婚、ウツ、心的外傷、何らかの形で夫人の世話になっていた。乗客の写真を見たカトリーヌはあっといった。「電子レンジの男性、工場長、木を切った女性、みな飛行機事故に遭遇していたのよ」。彼女は「ユングのいう強い共時性があるわ。偶然の一致にこそ真の意味があるという。一種の予知能力よ」と指摘した。え〜、いったいどんな解決になるのよ、という気になる頃、ついに決め手が現れた。マルクの同僚が来たのだ。消火用の飛行機のパイロットだ。湖水で水を補給した時側面に軽い衝撃を感じた。鈍い音だった。枯れ木も流木もなかった。彼は気味悪そうに聞くのだ。「沖へ流れたものが、流れ出たところへ戻り、1年も漂う頃がありうるのか」▼ぶっちゃけて言うと、彼がタンクに補給したときに一緒に入ったのは夫人の遺体と思われ、水と一緒に山中に撒かれたそれを捜索の結果、間違いなく確認された。マルクは妻の葬式をあげ、関係者一同冥福を祈った。マルクとアリスは心おきなく砂浜でセックスする。「体まで揺れるわ」とアリス。冗談ではなく地震が来たのだ。それもかなりの大きさ。家屋の壁は落ち地割れし、建物は倒壊、マルクはかろうじてズボンをはいたが、アリスはスッポンポンで波に巻き込まれる。やっと地震がおさまり、救出艇がアリスを引き上げる。つまり、沖に流された夫人が自分の遺体を発見させるために念力で潮の満ち干を止め、アリスら調査チームが因果を探っているうちに彼女の遺体は発見され、成仏した夫人のおかげで潮の満ち干は元に戻り、ついでに地震も起こったってことなのね。あっソ▼記憶に残る登場人物はカトリーヌとこの人、小さなカフェのウィトレスとしている元修道女のジェヌヴィエーヴ・ヴィジョルド。眠れないアリスは深夜のカフェに来る。「ここへ来る人は夜が好きなのよ。夜は格別、世界も違うわ。暗闇が嫌いだったり、眠れない人たちが来るの。この世界に違和感を持っている人たちよ。彼らの中にはゴルフ好きもいないしね」と女が言う。昼の世間、つまり現実社会から脇道にそれた暗闇にホッとする人種。いる、いる。60歳になったヴィジョルドが「心は時々世捨て人」みたいな逃走願望を、巧みに表していました。タービュランスとは仏語の「欲望」だそうです。

 

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