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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2017年5月31日

特集 LGBT—映画に見るゲイ231 
ミモザの島に消えた母(下)(2016年 ゲイ映画)

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監督 フランソワ・ファヴラ

出演 ローラン・ラフィット/メラニー・ロラン

シネマ365日 No.2132

永遠の夏

特集「LGBT—映画に見るゲイ」

祖母ブランシュが心臓発作で急死した。葬儀を終えた日、元家政婦夫婦が大事な話があるとアントワーヌを呼び止めた。「妻はお宅の家族のことで30年間苦しんだ。秘密の重荷に耐えてきた」老いた夫婦は苦しげに打ち明けた。「あの日の前日、大奥さまはお母様に内緒で、あなたたちを、わたしたちの農場に預けたのです。わたしは主人にあなたたちを頼み、屋敷に戻りました。大奥さまとお母様の声が聞こえた。これはなに?女と写っているわね。この写真を見たら判事は親権剥奪を命じるわ。おぞましい関係が世間に知れたら大変よ。手紙を書いて。こう書くのよ。ジーン、どうか怒らないで、一緒に行けません…。わたしは島のホテルに手紙を届けに行きました。島から戻ったとき電話ボックスにいるお母さまに会った。お母さまは、もうチェックアウトはしたの、とフロントに訊いていた。わたしに気がつくと手紙を届けたのかと確かめ、自分の車に飛び乗ったのです。わたしは叫びました。満潮になります、奥さま、島へは渡れません!」▼クラリスは耳を貸さず車を海へ乗り入れた。みるみる潮位があがり、波が道を洗い飛沫が車にかぶさる。何かに挑むようにクラリスは走るのをやめなかった。絶望とともに去ったジーンのために、彼女もまた、絶望とともに走ったのだ。ジーンはアントワーヌと彼の娘の訪問を受けたとき、まだ手紙に隠れた事実を知らなかった。彼女はアントワーヌにいった。「この30年間、画廊の前にタクシーが止まるたび、彼女の姿を探した」。最大の悲劇はクラリスの死の真相をジーンは知りようがなかったことだ。クラリスはジーンとの愛をあきらめたのでもなければ裏切ったのでもなかった。地獄に堕ちても追いかけただろう。ジーンはクラリスが、自分を棄てたと思うしかない悲しみに30年を耐え、それでも彼女を待ったのである。いつかアントワーヌが真実を教えるだろう。それにしても、喪失の歳月はあまりにも大きい。クリスマスの夜ジーンからメールが入った。30年前の夏、クラリスを追って「賭けに出た」ジーンが、浜辺で彼女を映したビデオだ。子供たちと手をつなぎ、ジーンを振り返り、振り返り、砂浜を歩くクラリスをジーンが追っている。話しかけようとしてジーンを待つクラリスの、まぶしいような笑顔がそこにあった。夏は過ぎようとしていたのに、彼女らの上に夏は永遠だと、信じられた瞬間がそこにあった。アガットの嗚咽が聞こえる…▼若き日のジーンを、フランス映画界の注目株ケイト・モランが、クラリスをガブリエル・アジェが演じています。出番こそ少ないですが主役の兄妹より完璧な存在感でした。ラストシーンのガブリエル・アジェの、ジーンへの信頼と安心が溢れていた笑顔の綺麗だったこと。もうひとつ。撮影がロラン・ブリュネです。「クロワッサンで朝食を」「セラフィーヌの庭」があります。夜明けのエッフェル塔を見ながら、ヒロインが熱いコーヒーで、焼きたてのクロワッサンを食べる。パリパリした皮、立ち上るコーヒーの香りまで伝わりそうなシーンでした。「セラフィーヌ」では、再現するのが難しいセラフィーヌという画家の、複雑な色とタッチをスクリーンに再現しています。最後に。この映画の第三の主人公パッサージュ・デュ・ゴア。干潮のときだけ現れる幻想的な海の道です。恋人を求め疾走するクラリスに、美しい絶望のサウンドが重なる。このシーンだけでも語るに足る映画です。

 

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