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特集「クラシック音楽の名場面」

2017年6月2日

特集「クラシック音楽の名場面」② 
ある愛の詩(1971年 恋愛映画)

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監督 アーサー・ヒラー

出演 ライアン・オニール/アリ・マッグロー

シネマ365日 No.2134

バッハ「チェンバロ協奏曲」第3番ニ長調

01-05_クラシック音楽

1970年代の社会現象の一つといってもいいくらいヒットしました。のちにアーサー・ヒラー監督が打ち明けていますが、製作費200万ドル以内という条件でゴーが出た映画です。ギャラが出せなかったから、配役はライアン・オニールもアリ・マッグローもほとんど無名。ところが蓋を開けると興収1億ドル、「愛とは後悔しないこと」は流行語となり、主演二人は次々オファが舞い込む大スターとなりました。これは脚本と監督の勝利ですね。いま見ても歯切れのいいセリフと、テキパキしたシーンの切り替えで、上映時間100分。まあこれ以上「愛している」は食傷したかもしれませんが、とにかく圧倒的な純愛物語に日本中はボ〜となりました。そうですね、ヨンさまの「冬のソナタ」の大騒ぎを思い起こしてくれたら、ちょっと似ていますね。アリ・マッグローもライアン・オニールも、素人に毛が生えたようでしたけど、アカデミー賞主演男女優賞にノミネート▼いいえ、そればかりか、作品賞・監督賞・脚本賞・助演男優賞候補となり、作曲賞で受賞しました。これはフランシス・レイの傑作です。バッハの「チェンバロ協奏曲」3番ニ長調は、音楽を教えるジェニファー(アリ・マッグロー)が音楽会で演奏するシーン。恋人オリバー(ライアン・オニール)が(僕はここだよ、来ているぜ)と合図する。アリ・マッグローはピアノの名手という設定でしたが弾けませんでした。でもこのパーツのため3週間特訓、13秒の演奏シーンを持ちこたえました。監督は、ちゃんと本人が弾いているよ、とわからせる親切な撮り方をしています。アーサー・ヒラーってこういうとこ、あるのよね。そうそう、バッハは冒頭のセリフと大いに関係する。オープニングでは、すでにジェニファーがなくなっていて、雪のつもったグラウンドの、誰もいない観客席に座ったオリバーがつぶやく、このセリフも受けたのですよ〜▼「25歳で死んだ女のことをどう言えばいいのだろう。美しく聡明。彼女が愛したものはモーツアルトとバッハ、ビートルズに僕…」。監督はこうもいっています。「映画は目に訴えるものでなく、心に訴えるものなのだ」。監督の見解は「60年代になって自己中心的な考えが強調され、他人を思いやる気持ちは薄れた、意見が合わない人がいたら敵対するのが社会の空気だった。この映画が大ヒットしたのは、意見が合わないからって憎む必要はない、恋人同士だって意見が合わないことはある。人にはそれぞれの立ち位置がある、と教えるからだ」。ハーバード大學を出たばかりのトミー・リー・ジョーンズが、オリバーの学友役でチョコっと顔を出しています▼監督は作曲を誰にするか悩んだ。そしてフランシス・レイに手紙を書いた、英語の手紙をレイは読み、しばらくしてスコアを送ってくれた。それを読んで監督は「泣いた」と言います。バッハを出しておいてこういうのはナンですが、この映画の音楽はやっぱり、フランシス・レイですね。監督が惚れ込んだこともあり、いくつかのシーンで奏でられるスコアは、どんな言葉も寄せつけません。音楽はただ聴けばいい、絵はただ見ればいい、愛はただ愛すればいい。脚本もいいですよ。印象に残ったセリフを一つだけ。ジェニファーが病院のベッドで、自分が死ぬことをオリバーと話しています。「崖から落ちるような気持ちだよ」「崖から落ちたこと、ないくせに」「あるさ、君と出会ったとき」。

 

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