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特集「クラシック音楽の名場面」

2017年6月9日

特集「クラシック音楽の名場面」⑨ 
さよならドビュッシー(2013年 ミステリー映画)

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監督 利重剛

出演 橋本愛/清塚信也/ミッキー・カーチス

シネマ365日 No.2141

ドビュッシー「月の光」

06-10_クラシック音楽

素直な映画であることに感動しました。原作は読んでいませんので、あくまで映画の感想です。両親を亡くしたルシアは叔父の家に引き取られ、従姉妹の遥とともに育つ。養子縁組をして「私たちの娘になれよ」と叔父は勧める。でも両親が生きていて、自分が養子になったことを知ったら寂しがるだろう、そう思うからルシアは断っている。スマトラ沖の地震でルシアの父母は行方不明のまま遺体は発見されていないのです。その夜も「遥、どこへ行くの?」ママの制止も聞かず「ルシアと寝る」遥は離れに走っていき、ルシアとパジャマを交換してベッドで喋る。二人はピアニストを目指しているが「あなたはなれるけど、私は無理だわ。遥、ピアニストになったら私のために弾いてね。いっぱいのお客さんがいるけど、遥は私のためだけに弾いてくれることを私は知っているの。そのとき私は何になっているかな。お母さんだよね」「ドビュッシーの“月の光”を弾く。ルシアのために」その夜、祖父(ミッキー・カーチス)の部屋から火が出て、ルシアとおじいちゃんは焼死、遥だけが生き残ったが、全身の皮膚を移植する大火傷だった。顔はやっと整形したものの声も出ず指も動かせない。失意のドン底から、遥の壮絶なリハビリが始まる▼遥が祖父の莫大な遺産を相続する。それとともに遥は不吉な事故に遭遇するようになる。遥の母まで石段から突き落とされ意識不明の重症となった。その一方で、指が完全に動かない遥の、ピアニストへの道は険しく、指導の先生から無理だと引導を渡される。そこへ名乗りでたのが先生の弟子で、岬洋介(清塚信也)と名乗るピアニスト。彼の指導は誰とも違い「手首が呼吸するように」なんて、とても詩的な表現で教えてくれる。それにピアノの技が素晴らしい。清塚信也がすべてのシーンを自分で弾いています。「クマンバチの飛行」は高難度1分ちょっとの曲。「実はね、これはいちばんリハビリにいいのだよ」などと言ってリラックスさせる。でも清塚のピアノを強調するあまり、長々と演奏シーンが続くのは辟易したわ。聴くのと見るのは別のものなのよ▼岬先生はいつの間にか岬探偵になって事件を解決します。これがね〜、あっけにとられるくらいすんなり、こんな頼りない犯人なんか、放っておいてもなにもできんでしょうが、なんて思っちゃうのよね。遥は指導の甲斐あってぐんぐん腕を上げ、いよいよコンクール。「先生、キスして」なんて言って、おいおい、いつから青春映画になったのかよ。ドンデン返しがあります。途中で勘づきますけどね。「私はルシアなの!」。交換したパジャマ(Tシャツだったかな)のために、死んだのは遥で、全身整形したのがルシアで、以後ルシアは遥として生きてきたわけね。なんで? さあ。思うに遥が死んだことで叔父叔母を悲しませたくなかったのかも。でもそのおかげで遺産相続人になって、欲ボケの連中に狙われたわけね。さすがに母親は遥ではなく、ルシアだとわかったけど、階段から落ちたのは明らかに事故。殺人でもなんでもない。犯人は弁護士と乳母。子供の頃から世話をしてきた遥とルシアの違いに気づいた乳母に、弁護士は「ルシアが悪巧みを企んでいる」と吹き込み、正直な乳母は怒っちゃうのね。その程度の犯罪なのよ。ルシアは警察に事実を話し、処分を待つ▼見どころはやっぱり清塚洋介の演奏でしょうね。超絶技巧がバンバン出て、音楽映画のピアニストやバイオリニストほど、いい役ないわね。手練の技っていいものよ。それだけで惚れ惚れする。「クラシック音楽の名場面」のために何作か見て、この映画はフェデリコ・フェリーニの「オーケストラのリハーサル」と、ジャン・リュック・ゴダールの「ウィークエンド」に挟まる形になったのね。感動したのはそのせいね。似ても焼いても食えないあのふたりの映画に比べ、清水のような素直な仕上がりだというのが、わかってもらえると思います。

 

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