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特集「ダンディズム-dandyism-」

2017年6月11日

特集「ダンディズム3」 ①ファレス・ファレス 
特捜部Q/Pからのメッセージ(2017年 サスペンス映画)

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監督 ハンス・ペテル・モランド

出演 ニコライ・リー・カース/ファレス・ファレス/ヨハン・ルイーズ・シュミット

シネマ365日 No.2143

アサドっていいやつ 

ダンディズム3

「特捜部シリーズ」の三作目。ペースダウン無し、テンションを保ち続けています。いいね。穀潰しども、とみなされている部署「特捜部」の三人組が変わらぬ主要メンバーです。三人ともとても魅力的。有能なのだけどちょっと変わっていて、組織に逆流するとか、上司の許可も得ず勝手に行動するとか、それだけならありきたりのキャラ設定なのですが、ヒーローものにしてしまわない陰影のつけ方がいい。カール(ニコライ・リー・カース)は殺人課からの配転。大チョンボした彼の受け皿のために「特捜」は作られた。だから島流しです。座敷牢みたいな暗い地下室で執務する、ある日部下が配属された。それがアサド(ファレス・ファレス)。カールはこんなところにろくな仕事はないぞ、と腐りきっている。アサドは違う。「俺は前の部署でスタンプを押していた。それに比べたらここのほうがずっと面白い。一緒にやりましょう」と前向きだ▼アサドが大好きです。肝心なときは暴力も辞さず、犯人をなぐり殺し射殺するけど、それは大抵カールを救出するとき。カールはいかつい顔に似合わぬ、感受性が敏感で、事件の後遺症で神経を病み、現場復帰ができないことがある。今回もそう、休職中のカールに代わり、アサドが「特捜」代表で頑張っている。おっと、もう一人、秘書のローセ(ヨハン・ルイーズ・シュミット)がいます。これといって目立たない女性ですが、資料再構築の能力は誰の追随も許さない。断片を組み立て直し推論し、新事実をえぐり出す。「P」も、やる気のなかったカールを放っておいてアサドとローセが瓶に入って漂着した手紙を判読した。シミだらけ、ほとんど字の消えた暗号のような紙くずから、ローセは緊急救助を読み解く。我関せず、だったカールが首を突っ込んできた。(しめた)とアサド。無敵の三人が手を組んだ新事件。それは誘拐事件に見せた連続殺人であり、犠牲になるのは子供ばかりだったが「狙いは子供じゃない」。カールがつぶやいた。目が座ったときのカールの判断に、アサドは絶対の信頼を置いている。事件は新局面にはいった。ヘリコプターから追う空からの視覚、列車内の張り込み、高速の追跡、アクション・シーンも多彩です▼犯人の気色の悪いこと。悪いけど、「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴズリングそっくりだったわ。サイコ男の妻に対する仕打ちは残酷で性的異常で、過去の母親のトラウマから逃れられない。母親の虐待によって、視力を奪われた姉を狂おしく愛している。彼らはこの世に残されたたった二人の姉弟だ。「特捜部Q」の犯罪の特色として、長年にわたって引きずってきた「感情の堆積」が引き金になっています。だからとても動機が濃い。昨日今日の発作的な恨み、ツラミで犯行に及んでいません。そこをじっくり解き明かしていくプロセスが重厚なのです▼事件の背景に宗教的な確執のあることが浮き上がってくる。宗教なぞ「ケッ。神なんか信じない」というカールに、アサドは「人は何を信じてもいいのです」。アサドのこういう人間への寛容な視線って大切だと思うわ。日本人ってもともと宗教は「何でもあり」ってところがあるけど、ヨーロッパやアラブ、シリアでは宗教の違いは生き方を変えるのね。だからアサドのようにシリア系の人が「何を信じてもいい」なんて、なかなかいえないことだと思うのよ。犯人を追い詰めたカールが、逆に捕虜となり、誘拐された姉弟のうち弟は溺死させられそうだ。犯人は姉弟の父親も殺している。長バサミをグサッととお腹に突き刺し、グイグイとこね回し、内臓をプツッ、プツッと切る残虐な殺し方だ。子供一人の頭を押さえて溺死させるのにためらいはない。「俺を殺せ」とカールは絶叫し、犯人はせせら笑う。そこへヘリで上空に来たアサドが「俺を降ろせ」単身、海に突き出た小屋に飛び込む。なんだか肝心なとき、カールはアサドの腕力にいつも助けられているような気がする。アサドは、頭はいいのにひけらかさない。カールの指示を仰ぎ、忠実に実行するが、指示待ち族ではない。カールが判断しやすい材料を整えるのはローセと同じ。つまり特捜部Qは無類のチームワークと高度なリテラシーを備えた各人の能力で成り立つ特殊専門部隊だ。精神的に落ち込みやすいカールを補佐し、ローセの力を引き出し、ここはという判断をボス(カール)に任せ自分は出しゃばらない。無類の腕っぷしの強さ。精悍なヒゲ面。女、子供、高齢者、弱者に投げる穏やかな視線。こういう男を本当に男っぽいっていうのよ。

 

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