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特集「ダンディズム-dandyism-」

2017年6月19日

特集「ダンディズム3」 ⑨ ジェレミー・アイアンズ 
ある天文学者の恋文(上)(2016年 恋愛映画)

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監督 ジュゼッペ・トルナトーレ

出演 ジェレミー・アイアンズ/オルガ・キュレンコ

シネマ365日 No.2151

純愛か、エゴか 

ダンディズム3

ジュゼッペ・トルナトーレ監督の映画作りの背骨であり、ライフワークである「純愛」のひとつです。死者がこの世に残した、愛する人へ手紙を送るのは「P.Sアイラブユー」もあったし、ちょっと違うけど「死ぬまでにしたい10のこと」も当てはまる。珍しくはない手法ですが、ジュゼッペの手にかかると、やっぱり綺麗だわね〜(笑)。役者がジェレミー・アイアンズよ。「鑑定士と顔のない依頼人」でもそう思ったけど、ジュゼッペは、役者を想定して脚本を書き出すのではないかしら。「鑑定士と」のジェフリー・ラッシュなんか、彼以外の誰も考えられなかった配役だったし、ジェレミー・アイアンズにしたって、この映画を見ながら(いいトシして、コンチクショー)と羨望に悶えた男性は少なくないに違いない。ダンディなのである。ハリウッドになびかない、ヨーロッパを代表する俳優です▼天文物理学者エド教授(ジェレミー・アイアンズ)は、博士を目指す教え子のエイミー(オルガ・キュレンコ)と不倫関係にある。6年になる。映画はラブシーンから始まります。ああ見えて、ジェレミーのラブシーンのうまさは抜群です。少なくともわたしはそう思っています。抱くのではなく体が吸い付いていく、蔦が絡むような、細胞的な感覚が出せるのね。彼のラブシーンは、女でないとわからないと思うわ。それにまた、ジュゼッペは言葉のセンスがいかに卓抜か。エイミーがエドに言う。「あなたは未知の星がひしめく銀河。だからあなたの観察は飽きないの」「初めて君を見たときの僕の講義は“天文学における無限の概念”だった。君の輝かしい姿を見た瞬間、あのとき知ったのだ。迷える魂が、その体内で生まれ変わりたいと願うもう一人の自分を。それ以来、僕たち二人は遠く離れていてもいつも一緒だ。これから先も離れない。美しい6年間。君がくれたすべてに感謝する」…シラフで聞くのが難しい(笑)▼いきなりエドは死んじゃう。ガンの末期だったけどエイミーには隠していた。家族にはばれるのだけど、離れて暮らしていたエイミーには隠し通せた。最後の3か月を、自分が死んだ後のエイミーのために費やす。エドの娘はエイミーを憎んだが「あなたを愛する父を見て、これほどわたしを愛する男は現れないだろうと思った。あなたが羨ましかった。あなたの力になりたい。父はあなたの行動をすべて予測し、あなたのためにそばにいようとした。あらゆる可能性を考え、あなたのために永遠に生きようとした」いいお嬢さんよねえ。でもエドの「コレスポンデンス(通信=これが原題)計画」に反対者もいた。彼の友人の医師だ。「反対したのはわたしだけだ。自己中心的でみなを不幸にした。彼の妻や子供や、あなたも。エドの行動は異常だよ。膨大な量の手紙、メール、誰が誰に送り、そこからさらに誰に、メールは暗号化され、エドから指示がある場合のみ、通信を中止できる、なんて」そうよ、サイコの領域だわ。医師の指摘は公平だと思うわ。ジェレミー・アイアンズが優雅端麗な容姿だからこそ、こういうエキセントリックな性格を、隠しもっていることに恐怖を感じさせる。これがロン・パールマン(「ヘルボーイ」の主演)だったら(へ、やっぱり思った通り)だわ。エイミーがいることで妻や娘は傷ついたし、エドは手紙だけじゃない、エイミーに家を遺贈し、実生活の経済面でも至れり尽せりなのだけど、実の息子や娘には何をしてあげたのか、ジュゼッペは触れていないわ。たとえそれが人間の真実でも、下世話なテーマを持ち出すと、透明にして澄み切った愛の世界が濁るのか、混線するのか、どっかとんでもない方向にそれてしまうことを恐れるみたいに、何となく触れたくないみたいよ。同じイタリアの監督でも、ヴィットリオ・デ・シーカやフェデリコ・フェリーニだと、まずこの辺りをコテンコテンに描くでしょうけど(笑)。

 

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