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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2017年6月21日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力5」①
ドラキュラ(1992年 ファンタジー映画)

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監督 フランシス・フォード・コッポラ

出演 ゲイリー・オールドマン/ウィノナ・ライダー/アンソニー・ホプキンス/キアヌ・リーブス/モニカ・ベルッチ

シネマ365日 No.2153

芸達者の大宴会

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力5」

変態系詩人がキラ星のように集まっているわ。ゲイリー・オールドマン。アンソニー・ホプキンス。ウィノナ・ライダー。モニカ・ベルッチ。前二者は変態・変人ぶりを疑えといっても疑いようがないが、後者二者、女優ふたりのどこが逸脱組なのか、はたまたおかしいのか。ウィノナ・ライダーはせっかくの素質をもちながら、つまらない万引き事件やゴシップ沙汰で、咲ききれないうらみが彼女をおかしくさせている。「ブラック・スワン」なんか脇にまわって、暗い役をよくやっていたのだからね、だからこの際、女ゲイリーの域に達するくらい、まともじゃない方向に邁進すればいいのよ。モニカ・ベルッチは「イタリアの宝石」だけが魅力ではない。この人、本作の14年後に「変人村」で吸血鬼をやる。本作「ドラキュラ」は、ベルッチが28歳、つまりデビューした時の作品だから、彼女なつかしくなって「変人村」で先祖返りしたのかも。カトリーヌ・ドヌーブと共演した、マンガみたいな怪奇映画とか、わりとこの手の映画好きなのよ▼フランシス・フォード・コッポラの手抜きのない目配り・手配り・気配りが、すみずみまで行き渡ったいい映画です。なかでもいちばん張り切っているのがもちろんこの人、ゲイリーね。お金に困っているわけじゃなし、こんなつまらん役をなんで断らないのだろうと思う役でも、それがイカレタ男だと喜んでとびつくのよ。本作はとくに気合が入っています。彼が扮するのはもちろん主人公ドラキュラ。ルーマニア、トランシルヴァニア城の城主にして伯爵。新婚ほやほやの彼は愛する妻エリザベートを残しトルコ軍勢力との戦争に出征。敵をうちやぶり帰国したら、妻は「伯爵は戦死した」という虚偽情報を受け取り、後を追って自殺していた。伯爵は「神の教えを守るために戦ったのに、なぜこんなむごい仕打ちが下されるのだ。もう神なんか信じない、暗黒の力と結束し生命の宿る血を糧に生き続けてみせる」と誓う▼400年後のロンドン。若手弁護士のジョナサン(キアヌ・リーブス)は、トランシルヴァニアのドラキュラ伯爵の城まで出張を命じられる。伯爵はロンドンに不動産の物件を購入するので、その手続だとか。結婚式をひかえたジョナサンは、婚約者ミナ(ウィノナ・ライダー)と別れを惜しんで出発。迎えた伯爵のいでたちが、ンまあ、衣装デザインはコッポラの仲良し、石岡瑛子です。きらびやかな中に厳かな、厳かななかに妖しさを加え、長い裾をひく赤いガウンに貴族のエレガンスを伴って、ゲイリー・ドラキュラ登場。そのアタマ。真っ白い髪を中央で左右にわけ、ひとつずつを束にしてハート型にまとめたヘアスタイル。顔ぜんたいに深いしわが現れ、肌のいろは異様に白く、おちくぼんだ目でジョナサンを射るように見る。キアヌ・リーブスが「スピード」でブレイクする2年前でしてね、それはもう、デクノボーというにはあまりに気の毒なほど初々しい。ウィノナ・ライダーのこの時期の美しさをみると、彼女が女優としてのメーン・ストリートから外れたのは、ゲイリーの毒気に当たったのかと思ってしまった。モニカ・ベルッチとなると、ドラキュラ伯爵の花嫁です。もちろんフツーの嫁ではない。いつも女3人がつるんで毎晩キアヌを誘惑し、キアヌは息もたえだえ、ベルッチの魔手から脱出するのです▼こんなことを書いているといつまでたっても終わらない。あとひとりだけ大物を。アンソニー・ホプキンスがヴァン・ヘルシング教授、形而上学では当代ふたりといない学者に扮します。ドラキュラ伯爵はジョナサンが持ってきたミナの写真をみて、亡き妻とソックリなことに心を奪われロンドンまでやって来て、ミナに近づく。ドラキュラの能力とは、嵐を呼び、狼やネズミやコウモリを意のままに動かし、霧や煙になって現れたかと思うと消える。ただしその力を保つためには故郷の土に埋もれて眠らねばならぬ。だから伯爵はロンドンまで、トランシルヴァニアの土をどっさり運ばせます▼城を脱出したジョナサンは無事ロンドンにもどりミナと結婚する。ところが「女になってはじめてわかった。わたしは伯爵を愛している」とミナがとんでもないことを言い出す。こうなると映画はもう、なにから書いていいかわからぬくらい、ただならぬ様相を呈してくる。ドラキュラ征伐あり、魔術幻術の対決あり、幽玄きわまりない古城の建築美、ミナとドラキュラは結ばれミナは晴れて吸血鬼一族に迎えられるはずが、「君を暗い魔界によびこむことはできない」といきなり、ゲイリーがマトモなことをいい、グズグズしているうちに教授やジョナサンら征伐隊が到着する。ミナはもはやこれまで、伯爵にとどめを刺し、永遠の安らぎを与えるため首を刎ねるのです。ああ、盛りだくさんだったこと。芸達者ばかりの大宴会みたいな興奮があります。

 

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