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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2017年6月27日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力5」⑦
ダークレイン(2017年 ホラー映画)

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監督 イサーク・エスバン

出演 フェルナンド・ベセリル

シネマ365日 No.2159

世界中がみな同じ顔

豪雨のため、9時に到着するはずの長距離バスが4時間たってもこない。すでに真夜中だ。バス発着所の待合室では切符売りの老人マルティン(フェルナンド・ベセリル)が怒って騒ぐ客に言い訳をしている…メキシコ映画です。篠突く雨音と陰気な待合室、そこへ偶然居合わせることになった乗客たち。夫のDVから逃げてきた妊婦のイレーヌ、妻の出産が間近で一刻も早く病院に行きたいと焦るヒゲ男のウルセス、医学生のアルバロ、8歳の男の子イグナシオに母親ゲルトルディス、床に座って占いに耽るシャーマンの老婆、駅舎に住み込みの若い女ローザ。これで8人です。人里離れたメキシコの片田舎。古ぼけた駅舎の壁にマリリン・モンロー、ショーン・コネリーの「007」、ビートルズのポスターが貼ってある。ラジオによるとカナダ、ボリビアで予想外の嵐が吹き荒れ、世界中がハリケーンで覆われたという▼ウルセスはケータイで双子の男児が生まれたと聞く。ローザがトイレで痙攣を起こした。医学生のアルバロが手当する。癲癇らしいと診断する。メキシコ・シティでは学生が反乱したとラジオ、ウルセスのケータイは病院の様子がおかしいといってきた。いつまでたってもこないバス、ますますひどくなる嵐、疲れてきた客たちは当たり散らす。シャーマンの老婆が騒ぎ出し、マルティンとローザが泡を吹き気絶する。駅舎の奥に引っ込んだマルティンは顔を包帯でぐるぐる巻きにして戻り、銃を構えてウルセスを悪魔祓いしようとする。マルティンを気絶させ、包帯を取るとウルセスの顔になっていた。次はローザにヒゲが生え、ローザはこんな姿を見せたくないといい、喉を掻き切り死んでしまう。自分の顔が変わり、しかも同じ顔になるという異変が8人に生じる▼イグナシオは精神の病気で、向精神薬が必要だった。背中にチューブがあり、そこにアセチルコリンを流し込むのだ。母親の薬をみて、アルバロはやめさせたほうがいいといい、薬を流してしまう。雨が降ると息子の様子がおかしくなると、母親が謎のようなことをいう。ラジオは「酸性雨が降ったのは間違いでした。しかし雨に未確認物質が含まれているので、雨が降っている間は外に出ないでください。雨の分子構造が異なり、雲から降る雨ではありません」と放送する。マリリン・モンローにもビートルズにも、ショーン・コネリーにもヒゲが生えた。1966年のW杯の選手全員の写真にもヒゲが生えた。全員同じ顔になるのだ。母親は「わかっています、原因はイグナシオです。雨があの子に影響するのです、あの子はみんなを殺してしまう。昔から不思議な力を持った子だった」それで殺されてはたまらんがな▼少年は「ダークレイン」という一冊の本を読んで聞かせる。「雨に紛れ込んで彼らは来た。地球への旅に雨が必要だったのだ。雨粒と共に地球に来た彼らは、目当てのものだけは奪っていった。町を壊したり、人をさらったりしなかった。地球を征服しようともしなかった。彼らの目的は僕らの人間らしさ、だった。彼らが来た翌日、みなはその来訪者を忘れた。人間らしさ、つまり個性を奪われて同じ顔になったが、自分の顔が変わったことに誰も気づかない。蟻は自分が他の蟻と違う顔だと思っているが、人間から見ると蟻はすべて同じ顔だ」さらに続く「我々来訪者からすれば人間もみな同じ顔だ。本物の個性があれば異常に気づくが、そんな人はいなかった。その日を境に何もかも変わった。地球上の生物に同じものはないが、すべての生物は同じでもある」▼で、世界中の人間はヒゲ面になるのよ。生まれた赤ん坊にもヒゲが生えている。イグナシオは人が感じなかったものを感じ、見えなかったものが見えるらしいのだ。豪雨が止み、警察がやってきて現場を検証、イグナシオが超能力を弄んだせいで、お互いが殺したり殺されたりして、生き残っているのは母親とシャーマンとイレーヌが生んだ赤ん坊だけだ。犯行は薬で頭がおかしくなったアルバロのせいにされた。イグナシオは薬を注入されて鎮静化し、それとともに人々の顔は元に戻った。イグナシオは母親とバスに乗る。行く先はトラテロルコだという。シャーマンの老婆が行ってはいけないと止めるが、母親に追い払われる。バスは発車。エンディングはこうだ。「イグナシオが現れると無実の人がひどい目にあう。闇の力を知る者はなく、止められる者もいない。イグナシオはこの星に潜む不思議な冒険の一つに過ぎない。少なくともそのように見える」。出足や雰囲気作りはいいのだけど、映画の中心軸を子供の本で解説するなど、肝心な箇所の組み立てがザツだ。「不思議な冒険のひとつ」で、死んでしまった人はたまったものではないわ。滑り出しがまずまずだっただけに残念ね。

 

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