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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2017年6月28日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力5」⑧
FOUR NIGHTS 4夜(2004年 日本未公開)

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監督 カトリーヌ・ブレイヤ

出演 アミラ・カサール

シネマ365日 No.2160

喪失

禁断のメルヘン」に続くカトリーヌ・ブレイヤ監督の作品。この人の映画、全部見たわけじゃないのですが、持って行き所のない「困った感」がつきまとうような気がするのです。本作なんかラストは「え、それでどうなったの?」。4夜を共にした男は「彼女のすべてを見たのに名前も知らない」。女(アミラ・カサール)が忘れられず「やり直しがきかないことを認めたく」なくて、彼女の家に戻ってきた。部屋は空っぽ。床にはネズミがチョロチョロ這い回り、ベッドには血で汚れたシーツが投げ出してある。家は断崖の上にあり、男は女を突き落とす幻想を見る。男の友人は「もう忘れろ。ろくな女じゃない。アバズレの女王だ」。4夜とは何だったのか。わたしもよくわかりません(笑)。彼らの劇中のセリフが手掛かりになるかもしれないから、追いかけてみます▼男はゲイバーで手首を切って自殺を図った女を助ける。深夜の街を並んで歩きながら女が提案する。「4夜一緒に過ごしてくれない。お金を払うわ。女嫌いのあなたならわたしを冷静に見てくれる。見るだけでいいの。触れる必要はないの。何を見たか教えて」。変な頼みに男は興味を惹かれ契約成立。海辺の家にタクシーで到着。「タクシー代は別に払ってくれ」と細かい注文にもOK。最初の夜。女の独白。「彼はまんまと騙された。うんざりしながらも予想外の展開を期待している。あるはずもないのに」。のっけから虚無的な言葉。女は裸でベッドに。男「なぜ裸を見せる。女の肉体のはかなさは、嫌悪感や残忍な欲望を掻き立てる。すべては偽り。うわべだけの付き合い」。女「脇の下、剃るべき?」「たとえ陰毛を剃り落としてもその淫らな本性は隠せない」。おかしいわね、この男性。いきなりベッドで裸になった女が、いまさら淫らな本性を隠すと思っているのかしら。ブレイヤ監督得意の「男と女の平行線」が始まっています。おそらく最後まで交わることはない、と確信しました▼男「女が股を開くと気分が悪くなる。鮮やかすぎる色。ヌルヌルした醜い陰唇。薄い皮膚。どこもかしこもデコボコしていて、水分が滲み出ている。カエルの皮膚のように有毒だ。女を見ていると暴力的な気分にさせられる。それが女嫌いになった原因かも。この黒光りした不快な毛の塊は、孵化したばかりの濡れた小鳥のようだ」。男が子供の時、うっかり死なせたヒナ鳥を地面に打ち付け、小さな透明なからだを踏みにじった残酷なシーンが出る。男は家の中を歩き回り、勝手に酒を飲む。女「あなたは女がわかっていない。なぜそこに座るの。もっと近くで見て。お金を払っているのよ」。いったい女はなぜ、何を男に見てほしいのでしょうね。死にたかったくらいだし、男も小難しいことばかりいって全然楽しそうじゃない。彼はゲイだけど、好きな男がいるでもなさそう。女は生理が始まります。男は血だらけにしてセックスする。血を含んだタンポンをグラスの水につけ、飲み合う。グロテスクね。脚を広げたり、膣に鋤きの柄を入れたり、全く辟易します。「男は女を閉じ込め力を奪いとるのよ。男は女を所有したいの。自由にはさせない。わたしたちを脅し、勝手な貞操観念やモラルを押し付け、自分の手元に置こうとする。安心したいために。でも証拠を求めてはダメ。愛の意味がなくなる」▼女「どんな人がタンポンを設計したか知らないけど、きっと男よ。自分たちが偉いと思い込み、女を嫌う動物。男には決して女が理解できない。闇を怖がる子供のように女を恐れる。教えて。目の前でこんなこと、はしたない?男は、男の肛門に入れれば便がつくのに、女の膣に入れることには怒りも恐れも感じないのね」「便はただの排泄物さ」女に圧倒され男の口調はトーンダウンしています。男は帰りがけに「金を渡された。受け取れば彼女を失うとわかっていたが拒めなかった」。男は女と関係を続けたいと、少なくとも一瞬思ったのね。でも女はいなくなった。文字通り「喪失」だわ。人生とは失うことだ。いやというほど失い続けてきた女は、誰かが自分を見ていることで、自分がいることを確かめたかった。男は幸せらしいかけらを手にしたと思ったとたん、夜が明けたら失っていた。人が本当に孤独なのは嫌うことでも嫌われることでもなく、憎むことでもなく憎まれることでもなく、死ぬことでも死なれることでもなく、失い、失われることだといっているのね。

 

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