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特集「ディーバ(大女優)」

2017年7月1日

特集「ディーバ15」ジュリアン・ムーア①
ハンズ・オブ・ラブ/手のひらの勇気(上)(2016年 事実に基づく映画)

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監督 ピーター・ソレット

出演 ジュリアン・ムーア/エレン・ペイジ/マイケル・シャノン/スティーヴ・カレル

シネマ365日 No.2163

「家族よ」「公認だね」

特集「ディーバ15」ジュリアン・ムーア

「これこそ自分がやらねばならない役だと思った」とジュリアン・ムーアは語っています。オスカー受賞作「アリスのままで」もよかったけど、本作が公開された今は、ためらわず「ジュリアンの最高作品」だというわ。認知症を取り上げた映画なら差し支えないけど、ゲイの女性ふたりの社会的挑戦となると、ハリウッドはまだまだおおっぴらに褒める人、少ないのね。そもそもこれは短編部門でオスカーを取ったドキュメンタリー映画「フリーヘルド」の長編映画化です。ヒロインのひとり、エレン・ペイジはプロデュースに加わり、ゲイであることを公表しました。勇気、愛、信念、すべてにおいて心を打たれる映画です。しかも映像の美しさ、女優の演技力、俳優の個性、脚本の運び、音楽、どれを取り上げても映画的言語の魅力に満ちています▼2002年ニュージャージー州、シーサイドハイツから映画は始まります。冒頭からテキパキと主人公ローレル(ジュリアン・ムーア)が男社会の警察でゲイであることを隠し、仕事一筋、勤続23年のキャリアを築き、上司同僚の信頼の厚い優秀な刑事であることがわかります。シーンは一転、ローレルは職場のあるオーシャン郡から遠距離の体育館で、ゲイ・ウーマンたちとバレーボールをしている。ここでステイシー(エレン・ペイジ)と出会います。ゲイであることにオープンなステイシーと違い「私たちがここで会ったことも内緒に」とローレルは約束させる。初めてのデート。「私、すごい年上よ」「だから?」「慣れていなくてうまく話せない」。ローレルはかなりその道に疎く、ステイシーが終始リードします。「うちに来ない?」とローレルが誘い、それなりの仲になりますが、仕事最優先、ゲイ関係は秘密のローレルに、ステイシーは拗ねるが「警察で女は出世できない。ゲイなんて論外」とローレルはピシャリ。仕事がたまっている、相手になっておれないと、さっさとステイシーを帰す。ジュリアンはジーンズにシャツ、スニーカーに紺の(子供が着るような毛糸の)チョッキ、機能性一点ばりのいでたちで通します▼ローレルがステイシーに電話する。ステイシーは自動車の整備工だ。「緊張するわ」とローレル。「年が違いすぎる」「年は関係ない。違うのは頭のデキ」とステイシー。ちゃんと学校を出て刑事になったローレルにコンプレッスクがあるようです。「あなたは賢くて面白くて正直で魅力的よ」ローレルが褒めちぎる。「それをいうために電話を?」「そうよ。また会える?」重圧のある社会的テーマであるにもかかわらず、この映画がサクサク前に進むのは、ローレルとステイシーのピュアな純愛物語が、縦軸を貫いているからです。ローレルの家は海の近くにある。目の前に広がる大西洋。ローレルが釣りをする。ステイシーが浜辺で見ている。誰もいない。まあ、この海のシーンの美しいこと。無造作な金髪、サングラスをかけ、振り向いてステイシーに笑いかけるジュリアン・ムーアがハツラツとして若々しい▼「なんでも手に入るとしたら、何が欲しい。人生の夢ってある?」ベッドでローレルがトレイシーの髪を撫でながら訊く。「ちっぽけな夢が。愛する女に愛されて、家と犬と…」「私もよ。家と犬とパートナー」。ローレルは郊外にトレイシーと住む中古の家を買った。町役場に行き、施行されたばかりのドメスティック・パートナー制度に登録した。ローレルはジャケットを着て、トレイシーはスーツにネクタイをして、目いっぱいフォーマルな装いで来ている。何故かというと、今日はふたりの「パートナー記念日」になるのだ。係の女性が複雑な手続き書類をテェックし「ドメスティック・パートナーは新制度だから男女の結婚よりずっと大変。はい、証明書」。ローレルはトレイシーにプレゼントとして警察組合のカードをあげる。「家族欄にあなたの名前が書いてある」「家族か。公認だね」「公認よ」役場の前でトレイシーにローレルがキスする。派手なラブシーンではなかったけど、社会的に「家族」の認知を得たふたりの嬉しさが、しみじみと伝わるとてもいいシーンだった。

 

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