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特集「ディーバ(大女優)」

2017年7月4日

特集「ディーバ15」ジュリアン・ムーア④
ゆりかごを揺らす手(1992年 サスペンス映画)

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監督 カーティス・ハンソン

出演 レベッカ・デモーネイ/ジュリアン・ムーア/アナベラ・シオラ

シネマ365日 No.2166

はじめに悪事ありき

特集「ディーバ15」ジュリアン・ムーア

この映画が好きな三つの理由。ジュリアン・ムーアの実質デビュー作。監督がカーティス・ハンソン。レベッカ・デモーネイとアナベラ・シオラといういい女優が出ている。産婦人科医の夫が患者にわいせつ行為を行い、訴えられて自殺。妻ペイトン(レベッカ・デモーネイ)は保険金もおりず家を追い出され、ショックで流産、子供を産めない体になる。ペイトンは夫を医師会に訴えた患者クララ(アナベラ・シオラ)一家に復讐を誓い、ベビーシッターとして入り込む。逆恨み復讐劇です。クララ一家の友人の不動産会社の社長マーリーンがジュリアン・ムーア。クレジットは5番目にJulianne Moorと単独ででます。うれしかったでしょうね▼人のいいクララは行き届いた仕事振りのペイトンに露ほどの疑いも持ちません。マーリーンは違う。一目でペイトンが気にいらない。できがよすぎる。先回りしすぎる。ウケ狙いが見え見え。こいつは心の邪悪な女に違いない。ジュリアンのよく光る張りのある目が、意地悪いまでに人物を査定します。もし彼女が上司ならたまらんな、と思わせます。レベッカ・デモーネイがタフです。クララ夫婦を騙すのなどちょろいものだがマーリーンは強敵だ。女には女がよくわかる。カーティス・ハンソン監督が書いた脚本を思い出そう。オスカー脚色賞をとった「L.A.コンフィデンシャル」。キム・ベイジンガーもオスカーの助演女優賞に輝いています。同じ監督の「8Mile」もよかった。女の内面の「昏さ」を逃さない監督なのです。「イン・ハー・シューズ」のキャメロン・ディアスなんか、ラストに詩を朗読するシーンは泣かされました。本作ではレベッカ姐さんが「守」に、ジュリアン番長が「攻」にまわります。恐竜相打つ「ジュラシック・パーク」番外編みたいです▼マーリーンは「はじめに悪事ありき」でペイトンを捉えていますから、やれクララの誕生祝いだ、やれパーティだとお祝いしたところで(ケッ。マムシが微笑んだところでマムシはマムシだわよ)。ペイトンもまた(吠え面かくのはお前なのよ)と、絶対優位を確信している。どこからそんな自信が来るのだろう、なんて考えるのが間違い。自信のあるやつなんて、ときと場合によって自信が増えたり減ったり、あったりなかったりするものではない。鉄板なのです、鉄板。ジュリアン・ムーアにせよ、レベッカ・デモーネイにせよ、彼女らが強烈なオーラを放つのは、作中人物の性格把握にブレがないからです。迷いも疑問もないからです▼ふたりに挟まれてワリ食った形がアナベラ・シオラ。本作のヒロインですけど、トラとオオカミにスリスリされるウサギみたいになりました。とてもいい女優ですよ。彼女の出演作でいちばんよく覚えているのは「蜘蛛女」のナタリーね。ゲイリー・オールドマンの恋女房です。レナ・オリンという最強の女殺し屋に夫のゲイリーがコテンパンに痛めつけられる。彼は最後に男気を振るい、砂漠の町で落ち合うことを決め、悪徳警官をやって稼いだ金を女房に預け、ギャングの追跡から逃す。アナベラって好感度抜群だから助けられる役が似合うわね。これがレベッカやジュリアンだったら大笑い。カーティス・ハンソンは2016年9月20日、ロスアンゼルスの自宅で亡くなりました。71歳でした。本作は公開後25年経っても新しさを失っていない、カーティス・ハンソンの佳品です。以って瞑すべし。

 

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