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特集「ディーバ(大女優)」

2017年7月11日

特集「ディーバ15」ジュリアン・ムーア⑪
妹の恋人(上)(1993年 青春映画)

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監督 ジェレマイア・S・チェチェック

出演 ジョニー・デップ/ジュリアン・ムーア

シネマ365日 No.2173

コツコツとマイペース

特集「ディーバ15」ジュリアン・ムーア

ジュリアン・ムーアという人は本当に忍耐強い人だと思います。下積みの時代も決してくさらなかった。本作の主演はジョニー・デップやメアリー・スチュアート・マスターソン、当時すでに代表作の1本や2本、世に出していて、クレジットのトップかその次に名前があがる大物である。われらがジュリアンは、出演するのかしないのか、忘れられているのか、と思うころやっと名前が出る。33歳だった。この扱いは6年後の「理想の結婚」でも大して変わらない。ケイト・ブランシェットが飛ぶ鳥を落とす勢いで、ドッカーンとトップ・クレジットに名を連ねたあと、見落としたのではないか、とやきもきするほど遅れて出てくるのだ。ジュリアンの映画を初めて見たのは「ゆりかごを揺らす手」で、カーティス・ハンソン監督の傑作だと今でも思う。不動産会社の社長のジュリアンは、主人公レベッカ・デモーネイの悪巧みを見破ったのはいいが、奸智に長けたレベッカ姐御に、あっさり殺されてしまう▼本作の翌年「42丁目のワーニャ」でボストン映画批評家協会賞をとったものの、この映画、ほとんど誰も覚えていないだろう。監督は有名なルイ・マルだが、内容は「ワーニャ伯父さん」の舞台稽古のドキュメンタリーという地味そのもの。「ブギーナイツ」でアカデミー助演女優賞にノミネートされ、やっと存在をアピールする。「理想の結婚」で、主演のケイト・ブランシェットを差しおいて、ジュリアンがゴールデン・グローブ賞主演女優賞にノミネートされたことは-この映画のジュリアンは特筆もののビッチで-やはり見ている人は見ているのだな、と頼まれもしていないのにひとりで感激し、納得した。「アリスのままで」で悲願のオスカーを手にしたときは(ふん、なにをいまさら)と、世間の遅すぎる認知に横を向きたくなったくらいだ▼思うのだが、ジュリアンという、ひとつもシャシャリ出ようとしない人は…女優だからそりゃ幾分はデバルだろうが、まず自分の持ち場で役割を果たすことを最優先している人に見える。コツコツと与えられた役を演じる。ゲイ・ウーマンを一度引き受けたら以後の役が固定されてしまう、そう考えて断る女優が多いのだが、ジュリアンは何度でも引き受けている。キスシーンはおろか、アマンダ・セイフライド相手に、ヌードもやるし(「CHLOE/クロエ」)、「キッズ・オールライト」ではアネット・ベニングと同性婚のパートナー。ふらふらと男に戻り、やっぱりこっちと女性に帰る、頼りないというかかわいいというか、そんなヒロインを演じた。「めぐりあう時間たち」では、ニコール・キッドマンとハリウッドの怪物メリル・ストリープに挟まれ、家庭も夫も子供も捨てて蒸発する女性ローラだった▼いちばん目立たなかったけれど、原作者ヴァージニア・ウルフが生涯を通して悩んだ、作家の仕事と女性の立場、家庭の維持という闘いを、最も体現していたのはジュリアン演じる架空の女性ローラだったと思う。この役でジュリアンはベルリン国際映画祭女優賞を受賞した…ううむ、なかなか「妹の恋人」にたどり着けそうもないから、このへんにしますがあとひとつだけ。「マップ・トゥ・ザ・スターズ」で、ジュリアンはデヴィッド・クローネンバーグという三度の飯より変態、もとい、変身が好きな監督と組んで、実の母親との近親相姦という難役を、愛慕と叙情に満ちた演技で、カンヌ国際映画祭女優賞に輝いた。「エデンより彼方に」のヴェネツィア国際映画祭女優賞と合わせ、三大映画祭女優賞の制覇だった。

 

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