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特集「遥かなるミルキーウェイ/7月のベストコレクション」

2017年7月15日

特集「遥かなるミルキーウェイ/7月のベストコレクション」②
裸足の季節(2016年 社会派映画)

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監督 デニズ・ガムゼ・エルギュベン

出演 ギュネシ・シェンソイ

シネマ365日 No.2177

ムスタング 

特集「遥かなるミルキーウェイ/7月のベストコレクション」

まずデニズ・ガムゼ・エルギュベン監督に一票。知性的な美人ね(笑)。セシル・ド・フランスに似ているわ。出演する5人姉妹のうち二人は親の決めた男と結婚、一人は自殺、二人は故郷の村を脱出。女が自我を通すことの難しさを、怒りも悲しみも、嘆きもせず、静かに描き出した彼女の感性にエールを送ろう。イスタンブールのボスポラス海峡を臨む町について、姉妹の末っ子ラーレ(ギュネシ・シェンソイ)が道行く人に紙切れを見せ「すみません、この住所に行きたいのですが」と尋ね歩く。一軒の家にたどり着いた。ノックに現れた若い女性は、そこに裸足で立っている少女二人を見る。妹がラーレ。姉がヌル。元いた小学校で担任を受け持った生徒だ。「ラーレ!」と小さく叫び、少女を抱きしめた女性はディレッキ先生。恵まれない生活を送ってきたこの子たちの未来に、やっと光がさすことを予感させる感動的なラストだった▼日本にいるわたしたちが、イスタンブールから遠く離れて1000キロ、海沿いの村の風習や文化に想像がつくだろうか。日本だって同じ制度で女たちは縛られていた。海に入って男の子たちと騎馬戦をしたラーレたちは家に帰り、おばあちゃんに吊るし上げられる。「男の首にまたがって、股を押し付けて、何てことするのだい」「騎馬戦だから肩車するのよ」おばあちゃんにしたら言語道断。姉妹の両親が死んで10年、おばあちゃんは5人の娘を育ててきた。息子は「母さんがあの子らをつけあがらせた」と躾を母親のせいにする。ラーレ以外は処女検査ということになった。全員パス。この村では少しでも疑わしいと結婚できないのだ。肩車事件以来、家には鍵がかけられ、娘たちは外出禁止、閉ざされた家は良妻賢母育成道場と化した。料理、掃除、窓ガラス拭き、スープのダシの取り方。長女ソナイのボーイフレンドが、道路に大きく「ソナイはオレのもの」と書いていった。それを窓から見るソナイ。叔父エロルはせっせと消している▼姉妹の唯一の楽しみは5人揃ってじゃれ合うことだ。子猫のように折り重なって眠る。ソナイは妹たちの手を借り、時々脱出してボーイフレンドと会っている。サッカーの好きなラーレは決勝戦をスタジアムで見たいと叔父に頼むが許可してくれない。先日ファン同士の暴動があり、男性観客禁止になっていた。ラーレは姉たちと脱出し観戦に行く。バスを逃したがトラックの青年ヤシンに頼んで乗せてもらう。スタジアムは女性ばかりで大興奮。ラーレの応援するチームが勝って、姉たちは観客席でラーレを胴上げする。これがテレビに映り、おばあちゃんは真っ青。近所の奥さんたちと村中のテレビを見られなくするため、電柱のコンデンサを投石で潰してしまうのだ。このあたりまでは笑ってみておれる。しかし結婚を急ぐおばあちゃんは、見合いを進め、ソナイはボーイフレンドと結婚できることに。次女セルマは嫌いなおじさんオスマンと結婚させられる。オスマンはセルマが新婚初夜に出血がなく、処女ではないと言い張り、大騒動になる。オスマンの親戚たちはセルマを医者に連れて行き、破れにくい処女膜もあるという診断にやっと納得する。もはや通話「圏外」の会話だろう。セルマと同じ束縛と諦めが、この村の少女たちには遅かれ、早かれ、ふりかかるのだ▼悲劇は三女のエジェだった。叔父エロルが銀行に行き、姉妹3人は車で待っていた。エジェは成り行きで見ず知らずの男の車でセックスする。夕食の席でエジェがいきなり笑い出すと黙って席を立ち、台所に入って拳銃で自殺する。エジェは叔父から性的虐待を受けていた。14、15歳にしてこの子は人生に絶望したのだ。次の結婚は四女のヌルだ。ラーレは一緒に逃げようと決めた。トラックの青年ヤシンにレーナは車の運転を習い、密かに脱出の機会を狙っていた。叔父はエジェまで暴行しようとしたとき、おばあちゃんが気づき未遂に終わるが、もうぐずぐずしておれない。婚礼の日、ラーレはヌルを乗せ、叔父の車で村を脱出する。車を途中で乗り捨て、ヤシンのトラックで長距離バスの乗り場まで行く。少女たちを見送るヤシンがいい男だ。ラーレとヌルはバスでイスタンブールに向かった。先生の家を探しあてた。この先どうなるかわからない。でも人生の主人公は自分であるはず。男の性的対象とは違う。監督は少女たちを被害者ではなく、どんな制度習慣のもとにあっても、自由と自我を求める強い女として描きたかったとインタビューに答えている。ラーレは可愛かったですね。スクリーンの中にも外にもいる、勇敢な女たちに拍手。例によってよくわからん邦題ですが、原題は「ムスタング」。野生の馬。彼女たちに、そして勇気を奮って生きる女たちにぴったりだわ。

 

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