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特集「遥かなるミルキーウェイ/7月のベストコレクション」

2017年7月16日

特集「遥かなるミルキーウェイ/7月のベストコレクション」③
モーガン プロトタイプL—9(2016年 SFサスペンス映画)

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監督 ルーク・スコット

出演 ケイト・マーラ/アニヤ・テイラー=ジョイ/ローズ・レスリー

シネマ365日 No.2178

遺伝子編集 

特集「遥かなるミルキーウェイ/7月のベストコレクション」

モーガンは人工生命体。人工知能(A.I)を超える人工生命が、大企業シンセクト社の隔絶した研究所で密かに開発され、試作品は「モーガン プロトタイプL—9」と名付けられていました。危機管理コンサルタントのリー・ウェザース(ケイト・マーラー)が研究所に呼ばれる。モーガンが担当者を襲い大怪我を負わせたからだ。鳥も通わぬ山奥にリーが車で到着する。姉妹とはいえ、体つきや声、身長、歩き方まで妹ルーニー・マーラーにそっくり。双子ではないかと思うほど似ています。ケイトは「オデッセイ」や「トランセンデンス」でみましたが、主演というのはこれが初めてといっていい▼モーガンが高度な感情反応と、自発的な意思決定能力を備えた製品であることを、担当者たちが競って説明しますが、リーは事務的に聞く。この辺りから伏線に入っています。研究員たちがみなモーガンを自分の子のように可愛がっているのを、ケイトは冷ややかに見る。目を突かれて重傷をおったキャシー。このチョイ役がなんと、ジェニファー・ジェイソン・リーです。ルーク・スコット監督、贅沢な使い方ね。キャシーは、事故は自分が油断していたからで、モーガンのエラーではないとかばう。行動分析学者のエイミーは、外に出たがるモーガンを研究所から連れて出したことがあった。モーガンは初めて森や木や草とともに、矢を射込まれて死にかかっているシカを見ると、首の骨を折って死なせてやるのがよいと判断するなど、5歳にして高度な知能レベルに達していた。翌日心理評価の専門家シャピロ博士が到着する。モーガンと二人きりで対話を進めた博士は、高圧的な態度で尋問する。モーガンが強い抵抗を感じ、テンションが危険水域に上がってきたことが、透明な防御壁越しにリーには見て取れる。「わたしを好きかね?」「いいえ」「エイミーと湖にいくとわたしが判断したら好きになるかね?」「わからない」「君をこの部屋から出さないだけでなく、廃棄すべきだと判断したら?」モーガンの目が光る。「行動で示せ、今やってみろ、気持ちを表せ」威圧的な命令にモーガンは博士の喉を噛み切り、逃走した▼リーは言下に「プロジェクトは失敗よ。回収して破棄します」「生命を作り出したのに棄てろと?」麻酔銃で台に縛り付けられたモーガンはエイミーに訊く。「わたし、失敗した? 頑張ったのに。処分はやめて。死にたくない。もっと頑張る」。エイミーたちはモーガンを解放し、一緒に逃げようとする。「お母さんに最後の挨拶を」と言って責任者チェン博士の部屋に行ったモーガンは、博士が本部に報告している内容を聞いてしまう。「モーガンを最高の人間に育てるつもりだった。高度で平和的な人工生命体の可能性を示すつもりだった。感情豊かな知性の強化を試みたものの、モーガンは兵器としての仕様を超えられなかった。プロジェクトは崩壊。モーガン計画はプロトコルに従い、廃棄作業を実施」モーガンは博士を絞殺します▼暴走に歯止めは利かない。味方であるはずの研究員たちを殺し、エイミーだけは「あなたは殺さない。二人で幸せになれる」…ふうん。モーガンは禁を破って外を見たいという自分の願いを叶えてくれたエイミーが好きなのね。逃走した車を追跡するのはリー。彼女もモーガンにボコボコにやられたのですが「任務を全うする」といって追いかけるのです。彼女の任務はモーガンの破棄です。結局は兵器として造られたモーガンと、それを破棄するリーは戦う運命です。リーの強いの、なんのって。殺された…と思ったらラストで生き返っている。どういうこと? こういうこと。彼女こそ完成した人工生命体だった。会社は新規開発としてモーガン(L—9)を作ったが、システムに狂いが生じて、リーが後処理を指示された。研究所を破壊、プロジェクトを消滅、モーガンも廃棄、関係者は全員抹殺。任務を完了し帰社して待機しているリーを眺めながら、社長と幹部が会話している。「みごとな働きだ。見通しの立たない任務を完璧にこなした。慎重かつ的確に。不測の事態にも冷静に対処した。何より大事なことは、ためらわず指示に従ったことだ。今後、資金はL—4につぎ込む」…そういうことなのね。美しい女性の体と容貌と、知能と感情を備えた人工生命体が、ためらわず男の指示に従えば完璧なわけなのね。なんて馬鹿らしい映画。どうせならリーは、モーガンと一緒に派手に狂って、神をたぶらかそうとする勝手な男たちに、一泡も二泡も吹かせてやればよかったのだ▼こういうこじんまりしたまとめ方が、父親のリドリー・スコットとルーク・スコットのスケールの違いだと思えるのだ。2003年に全ゲノムの解読が完了して以来、ゲノミクスや遺伝子工学の発展は著しく、映画ではすでに、本作もそうですが新たな遺伝子操作技術、つまり「遺伝子編集」が映画の一ジャンルを作ろうとしています。科学の解析がドラマになろうとしている。壮大にもなればファンタジーにもなるジャンルです。ちょっと不満は残ったものの、クリエイターとしての挑戦にとりあえず一票。

 

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