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特集「遥かなるミルキーウェイ/7月のベストコレクション」

2017年7月24日

特集「遥かなるミルキーウェイ/7月のベストコレクション」⑩
ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち(下)(2017年 ファンタジー映画)

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監督 ティム・バートン

出演 エヴァ・グリーン/エイサ・バターフィールド/ジュディ・デンチ

シネマ365日 No.2186

ひとりでいるエヴァ 

21-24_7月ベストコレクション

エヴァ・グリーンさま。初めて手紙を書きます。最初に見たあなたの映画が「汚れなき情事」でした。「シネマ365日」の連載スタートから大して日が経っておらず、グリーン家の女優としては、叔母さまのモニカ・グリーンしか知りませんでした。デビュー作が「ドリーマーズ」であることも、アルマーニの肝いりで映画界に入ったことも、あなたの代表作にすぐあげられる「カジノ・ロワイヤル」も知りませんでした。こう言ってはナンですが、あなたの代表作は未だに「汚れなき…」だと思います。それ以後、賞取り映画には無縁、大作も、これといった話題作もない女優の映画を全部見てきたのは、反社会的、といってさしつかえがあるなら、あなたの演じる女性たちが、おしなべて社会不適合者に似た気質のように思えたからです▼DVDの特典映像で、インタビューを受けているあなたを見て「スクリーンとは似ても似つかぬ内気なお嬢さん」が実感でした。はにかみながらスッピンで質問に答えるところは、場慣れしたふうもなく、つい先ほどスルスル脱いだ女優とは思えない。あなたが演じる女はねじれていて屈折していて、すくすく素直に成長したうら若い女性という人物は少なかった、いや皆無だったと思います。そういう役が似合わないことを承知の上で、ビッチを選択しておられる。多分そういう女に響きあうものをあなた自身が備えているからでしょう。なんでも一人でやる女。復讐も戦争も、クローンを産むことも、売女も、男たらしも。女とは社会制度上、本質的にマイノリティであり反社会的存在でした。女は男の姿を二倍に写す鏡であり、人類の半分が自分より下位にあるという認識こそ、男に自信を与える根拠だったとウルフは書いています。でもあなたはちょっと違う。よくはわからないけれど、あなたの映画を見ていて、思想的な拠り所があるとは感じない。マイノリティからの、ダイバーシティへの積極的なあなたの発言も、寡聞にして読んだことがありません。全ての社会的運動に、どうも興味がなさそうなのです。自身の好みとして「一人でやること」が性にあっているようなのです▼「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」は、あなたの出演作の中では異例です。ペレグリンとはハヤブサでしたね。ふと思いました。ハヤブサだったかしら、卵をよその鳥の巣に押し付けて子育てしなかった鳥は。それほど母性と縁のなかった映画ばかりでした。エヴァ・グリーンの映画としてはつまらなかった。とんがったところがひとつもなく、ループを作って永遠に歳をとらず生きる、退屈で死にそうではありませんか。これまでのあなたの映画とは対極にありますね(笑)。ティム・バートンと組んだ前作「ダーク・シャドウ」の方がよっぽど生き生きしていた。ジョニデもミシェル・ファイファーも影が薄かった。失恋の逆恨みで、200年にわたって一族を苦しめる、いかれた魔女でこそ、あなたは精彩を放ちました▼これから女優人生の難しい時期がきますね。若い女の役はやれなくなる。「エヴァ・グリーンが歳をとっているのに驚いた」という口さがない批評が出るようになる。あなただけじゃない。歳はみな取ります。キャサリン・ヘプバーンは「私は女優としてくだり坂にいる」と自伝に書いた時期がありました。年齢によってハリウッドで破滅する女優は何人もいました。キャサリンはどうしたか。どうもしない。「人間は仕事によって精神を破壊されることはない、と私は思う。仕事のないことによって人格が破壊されるケースのほうが、実はずっと多いのではないか。そしてそんなとき、人は悪習に蝕まれる(略)、私たちの肉体は厳しい試練にさらされる。しかし魂が試練に屈しない限り、私たちは立ち上がってやり直すことができる(略)。演じるだけなら、確かにどんな役でも可能かもしれない。が、どの役も素晴らしく演じることはできない。得手不得手は必ずある。大事なことは気質に合った役を選ぶことだ」。キャサリン・ヘプバーンのダメージ・コントロールこそ異能とも呼べる才能でした。不得手に手を出さず、得手を追随のできないものにする。それこそあなたの気質に最も適した「ひとりでいるエヴァ」ではありませんか。思いませんか。誰にでもできることではないでしょうが、これからの難しい時期の選択はそれに尽きる気がします。

 

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