女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「偏愛力」

2017年7月25日

特集「偏愛力2」①
クロノス(1998年 ファンタジー映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ギレルモ・デル・トロ

出演 ロン・パールマン/フェデリコ・ルッピ

シネマ365日 No.2187

トロのファンタジー 

シネマ365日Ⅵ 特集「偏愛力2」

ギレルモ・デル・トロ映画の主たるキーワード、昆虫、ヴァンパイア、子供、機械(歯車)などが全て出揃っています。彼の長編第一作です。「永遠のこどもたち」や「MAMA」(いずれも製作総指揮)がそうであったように、本作も主人公ヘスス(フェデリコ・ルッピ)の孫娘アウロラが可愛くて、ともするとかなり不気味でグロテスクなトロ映画をファンタジックにします。思うに、トロの主人公とはどこか「永遠のこどもたち」ではないか、どの程度それが具体化されるかは作品によって違いますが、その「こどもの目」は現実をファンタジーに擬するのではなく、現実とはそもそもファンタジーと表裏一体であって、ファンタジーがなければこの世の何ひとつ真実ではありえない、というトロの信念に裏打ちされています。本作のアウロラも例外ではなく、彼女は直接ストーリーに関係ありません、でも大好きなおじいちゃん、ヘススから片時も目を離さず、彼が人間であろうとヴァンパイアであろうと彼を信じ見守り、ヘススもまた目の中に入れても痛くないほど可愛がり、どこに行くにもアウロラと一緒です。この子はトロの分身です▼1937年、丸天井が崩れ落ち、心臓を直撃された男が死んだ。「時は永遠なり」が最後の言葉だった。彼は大理石のような肌をした時計商だった。彼は400歳の命を永らえた錬金術師のウベルト・フルネガリ。1536年、宗教裁判から逃れメキシコに来て、総督御用達の時計商となり、永遠の生命を与える鍵となるものを作り、クロノスと名付けた。政府は死んだウベルトの家と家財を競売にかけた。家には裸の男が吊り下げられ、足元におかれた容器にはしたたる血が溜まっていた。ヘススは初老の古美術商だ。売り物の天使像の中から奇妙な機械を見つけた。いじると時計のように動き出し、中から飛び出した針が手をさした▼大した傷ではなかったが、ヘススはその針で刺される快感と、渇きを覚え、朝になると若返っていた。アンヘル(ロン・パールマン)という男が叔父の使いで天使像を買いに来たが、中に機械(クロノス)がないことがわかり、アンヘルにヘススから奪いかえすよう言付けるが、面倒になったアンヘルはヘススを車ごと谷から突き落とし殺してしまう。死んだと思われたヘススは息を吹き返し、火葬に付される前に棺から脱出した。訪ねてきたヘススに叔父が説明するには「自分はもう直ぐ死ぬ。化学療法、X線療法、精神療法、医学のメスが私を蝕んでいる。私の内臓の半分はこのガラスケースに入っている。しかしクロノスによって永遠の命がえられることを古文書で知った」だから時計をよこせというわけね。最後はアンヘルとヘススの大乱闘でアンヘルが死に、ヘススは自分の手でクロノスを打ち砕く。彼は穏やかに眠りにつき、枕元には恋人のメルセデスと彼女の娘、アンヘルがつきそっている。永遠の命など馬鹿げた幻想だと彼は拒否し、家族のもとで死ぬわけね。ストーリーはシンプルですが、クロノスの内部のネジやゼンマイが巨大にクローズアップされ、おもむろに動き出すメカ仕様、王朝時代の黄金の細工物のように凝ったクロノスがオーラを放っている▼ヴァンパイアとなっても決してスーパーヒーローでも、アクションヒーローでもなく、人がこぼして床に滴った血を舐める。痛みは感じるが死なない。ヘススは孫娘を助けようとアンヘルもろとも屋上から飛び降り、アンヘルだけ死にます。ヘススと、枕辺につきそう家族が、柔らかい光と静寂に包まれたラストは幻想的です。命も死も永遠の輪廻をめぐる一瞬の時間に過ぎない…トロのファンタジーと哲学が表象されています。

 

Pocket
LINEで送る