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特集「偏愛力」

2017年7月26日

特集「偏愛力2」②
キックボクサー(1990年 アクション映画)

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監督 マーク・ディサール/デヴィッド・ワース

出演 ジャン=クロード・ヴァンダム

シネマ365日 No.2188

最盛期のヴァン・ダム 

シネマ365日Ⅵ 特集「偏愛力2」

「キックボクサー」は1990年代のキックボクシングのみならず、ジャン=クロード・ヴァンダムがマーシャルアーツの星としてブレイクした記念碑的な映画です。本作で見る青年ヴァン・ダムの初々しいこと。悪役やら怪物の中身やら、それまで散々苦労をなめていたヴァン・ダムが、いきなり売れ出したものだから、すっかりいかれてしまい、ハリウッドのゴミ映画に染まって、私生活も含めボロボロ、再起不能とまでいわれた。もともと自信過剰でハッタリの強いヴァン・ダムのこと、本作の主役は何が何でも欲しかった。それだけ自信もあった。プロデューサーに売り込むたった30分に何をしたか、ズ〜と椅子と椅子の間に体を浮かし開脚したというが、事実は知らない。でもありそうな話。幸運にも企画は通り「キックボクサー」は日の目を見ることになった。飛ぶ鳥落とすヴァン・ダム時代の幕開けとなった▼しかるに好事魔多し。人生甘くないのだ。調子に乗りすぎて歯車を狂わせたのか、聞くところによればコカイン中毒だとか、ステロイドのうちすぎだとか、映画はワンパターンで飽きがくるし、アクション俳優の悪夢である、年齢による体力の低下に挟まれ、ヴァン・ダムは出るがアクションのない映画はヒットせず、やけくそになって「この男ヴァン・ダム」みたいな映画まで作った。覚えている限りでは「本当は弱いヴァン・ダム」なんて酷な見出しが週刊誌に出るようになったくらいだ。ヴァン・ダム復活か、と多いに期待した「エクスペンタブルズ2」はひどかった。ヴァン・ダムは極悪非道の悪役の上、罪もない村人をこき使う憎まれ者で、最後に当然として、殺されるのだ。それを考えたら「キックボクサー/リジェネレーション」なんて上出来よ。ヴァン・ダムをタモリと間違えようがなんだろうが、文句なんかつけたらバチが当たるわ▼「リジェネレーション」と比べてオリジナルはどこが勝っていたのか。幾つかあるけど、キックボクシングのトレーニングが、アナログで丁寧に描かれている。何しろ神様のような先生がヴァン・ダムに教えるのだから哲学的だ。「昔の戦士たちがこの石の都で鍛えた。体を動かしながら耳を澄ませ。魂で、心で、体全体で聴くのだ。パンチよりキックより速く動け、そうすれば打たれない」。右の足が沈む前に左の足を出せば沈まない、みたいな理屈だが。井戸の中で型をやる、青竹を蹴りで割る有名なシーン。「蹴るのだ」と先生。「脚が折れてしまいます」「荷物まとめて帰れ」。やけくそになったヴァン・ダムが脛を紫色にして蹴り続け、バキバキッ。ついに竹を倒す。タイの遺跡で見せる、朝焼けをバックにした型のシルエットも美しい。この師匠ジアンの役を「リジェネレーション」ではヴァン・ダムがやった。瞑想とか、格闘技の哲学とか、あんまりなくて、ヴァン・ダム師匠は荷車の後ろに乗り、教えることは「ココナッツ。ココナッツ」だったから違和感ありまくりだった。やっぱり人には「任」というものがあるわね。師匠なんてヴァン・ダムの「任」じゃないのよ。その分、というのもどうかと思うけど、体くねくねの怪しげなダンスは、本作ではもちろんだけど「リジェネレーション」でも上手だったわよ▼本作の成功でヴァン・ダムは一気にマーシャルアーツのトップに躍り出た。その後のことはもういい。青年だから意欲もあれば野心も欲もハッタリもあって当然だ。そんなものをみなひっくるめ、最盛期のヴァン・ダムの見せる、格闘技の美しさに見惚れさえすれば、この映画を見る目的は達せられるのだ。

 

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