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特集「最高のビッチ」

2017年8月1日

特集「最高のビッチ3」①大竹しのぶ
後妻業の女(2016年 コメディ映画)

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監督 鶴橋康夫

出演 大竹しのぶ/豊川悦司/津川雅彦/長谷川京子/笑福亭鶴瓶

シネマ365日 No.2194

この女に勝てるやつはいない 

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武内小夜子(大竹しのぶ)は後妻業のエース。結婚相談所の所長、柏木亨(豊川悦司)と組んで高齢男性を狙い、後妻におさまる。男の高齢者がもてるには、資産があること、持病があればなおよい。看取る時間が少なくてすむ。柏木曰く「小夜子は泥水に棲むヤモリだ。頭のよさ、臨機応変の口のうまさ、罪悪感のなさ。この女に勝てる相手はいない。この女を怒らせてはいけない」。そういう柏木こそ結婚相談所ぐるみの犯罪の元締めである。次々カモを物色し、後妻業を生業とする女にあてがう。小夜子の結婚はすでに9度。40歳で会員になった小夜子は現在63歳だ。後妻業必須条件とは①住民票を移す、②家具を持ち込む、③近所に顔を売る。小夜子はすべてのテクをマスター、結婚後「武内小夜子に全財産を譲る」と遺言書を書かせ、しかるのち夫たちは何らかの原因で死んでしまった。心筋梗塞、交通事故、理由は何であれ、とにかく遺産は小夜子のものになり、小夜子と柏木は利益を折半である▼9番目の夫、中瀬耕造(津川雅彦)は元短大教授、娘が二人、一人は世間知らずで気立ての優しい専業主婦・尚子(長谷川京子)、次女は気の強い一級建築士の朋美だ。耕造が脳梗塞で倒れた。柏木は「顔に濡れタオルは?」「やった。せやけど爺さん、あそこのウラ拭いたら声出すねんで。この調子やったらまだまだ保つかもわからん。倒れてもう1週間やというのに」。ジレジレした小夜子は注射器で静脈に空気を入れて殺してしまった。葬儀の席、喪主は小夜子である。彼女は娘二人に公正証書をまいた遺言書を見せ、全財産は自分のものになると発表する。しかも、葬式は個人の名誉もあるからみすぼらしい葬儀はできず総額400万にした、200万は姉妹で出して欲しいとテキパキ処理する。おさまらないのは次女だ。保険金詐欺を専門とする元刑事、今は裏社会の探偵本多を雇って調べさせた▼小夜子は朋美を居酒屋の座敷に呼び出し、嫌がらせもいい加減にしろとケツをまくる。朋美は小夜子にビールをぶっかけ、小夜子はやり返し、平手打ち・拳の応酬、止めに入った仲居は尻を蹴られ横転、店中は阿鼻叫喚となり、おんなふたりはお互いの肩を掴んだまま、ゼイゼイ息を切らしてへたり込む。本多は7番目の夫が事故死した夫の家族や事故現場を調べあげ、柏木の結婚相談所が裏で糸を引いていると報告書にまとめる。小夜子は「それ、買うわ」3000万で手を打った。本多は「一生あいつに恐喝される、殺せ」と弟に言いつけるが見事に失敗。足を撃たれた本多は動物病院に逃げ込み、獣医の手当てを受けるが、こいつがまた抜け目のないやつで、治療費10万円、いやなら通報すると脅す。どいつもこいつも破廉恥で罪悪感ゼロ、人を踏み台にし、欲と色と金で凝り固まり「ジジイを騙すのは功徳」「楽しい思いをさせ、お金をもらうのは当たり前」とお見事な割り切り方。柏木が次に紹介したのは不動産王舟山(笑福亭鶴瓶)。ところがこいつが後妻業の上前をはねる凄腕詐欺師。高邁な都市計画で夢を実現したい、あと1億の融資で着工できる、融資のためには3000万円の定期預金が条件だと…小夜子はハッと我に帰り、はねつけると舟山は本性を現し脅し付けた▼あっちでも騒動、こっちでもトラブル、「ミナミの帝王・後妻版」みたいな金と騙しのテクニックはあるものの、テンポとキレのよさ、ワルの二人三脚ぶり、大竹しのぶとトヨエツのえげつなく、でも笑ってしまう人間の本音、懐の深い演技、脇を受け持った俳優たちの実力、隙のない映画とはこういう作品だろう。落としどころは長谷川京子だった。遺産を取り返すと息巻く妹に「受け身で生きてきたわたしから見ていると、まるで正反対の生き方のあの人(小夜子)が羨ましかった。お父さんかって、わたしらはひとつもお父さんの世話をせえへんだ。わたしらが寂しい思いをさせへんかったら、こうはならんかったかも」。柏木は小夜子まで弟に殺させようとして首を絞めトランク詰めにして運び出す。折しも真夜中、不審に思った警官の職務質問に柏木ももはやここまで。ところがトランクが一人でゴロゴロ動き出し、息を吹き返した小夜子が中から現れる。大竹はホントにトランクに入ったそうだ。事件性は問われず、柏木の結婚相談所は不滅である。今日もお見合いパーティが開かれ、小夜子は慎ましく自己紹介している。「わたし、武内小夜子、63歳、40代で主人を亡くし、一人で生きてきましたが、残る人生で主人にしてあげられなかったことをしたいと思いました。趣味は本を読むことと夜空を見ること…」。柏木が満足そうに目を光らせ、獲物を物色している。

 

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