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特集「最高のビッチ」

2017年8月4日

特集「最高のビッチ3」④ジャンヌ・モロー
天使の入江(下)(2017年 恋愛映画)

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監督 ジャック・ドゥミ

出演 ジャンヌ・モロー/クロード・マン

シネマ365日 No.2197

最高の理由 さらば、ジャンヌ・モロー(下)

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怒りに任せて女を放り出して帰ればよかったのですが、どっこい遅かった。ジャンがギャンブルにはまり込んだのです。有り金はたきスッテンテンになったふたり。「ニースに戻ろう。天使の入江にツキがあるような気がする」などというではないか。さらば、モンテカルロ。安ホテルに戻って金の算段だ。「旦那に頼めば?」「乞食したほうがマシ」「女友だちは?」「絶交された。あなたの友だちは? カジノで会った」「ホテルを出た」。思案が尽きたジャンは父親に手紙を書く。深く反省している、パパ、金を送ってください…郵便為替で5万フラン送ってくれた。手紙に「何も聞かん。戻ってこい」いいお父様ねえ▼これで一息つく。ジャンは「明日の夜行でパリに帰れるよ」「一緒には帰らないわ」予想していたこととはいえ、ジャンは傷つく。「一緒に暮らしても最初は幸せだけど、その先は同じ。私は絶対賭けをやめられない。別れましょう」心まで腐っている自分が恥ずかしいのだと、ジャッキーは泣く。「愛している」「わかっているわ」「僕のことは?」「愛しているわ。愛し方は違うけど」(ちょっと笑いました)「君が必要だ。僕は君を救える。力を合わせれば乗り越えられるよ」「そうしたいけど、もう手遅れよ」。翌朝になった。ジャッキーがいない。フロントに聞くと「荷物をお預けになり、カジノに行かれました」。ジャンの父親の5万フランを持ってカジノに走ったのだ。ジャンはルーレットの前のジャッキーを見つける。「泥棒になったのか。パリに帰るのだ」「帰らない」「一緒に帰ろう。ここで帰らないともう抜け出せないぞ」「いやよ、放っておいて」▼万策尽きた。ジャンは卓を去る。背中には男の決意がみなぎっている。「ジャン」呼んだがもちろん振り返りはしない。ジャッキーはうろたえる。「ジャン」走ってあとを追う。ここでエンドです。ドゥミの映画ですから、観客にとても親切にできています。ミヒャエル・ハネケやデヴィッド・リンチや、ピーター・グリーナウェイのように、観客を突き放すのでもなく、観念的でもなく、ひねくれてもいません。説明が行き届き、プロットがわかりやすく、テキパキと進む。でも彼は見かけによらぬ辛口ですよ。人生には幸福になる保証などどこにもない。彼がミュージカルを得意としたのは、ミュージカルという、反時代的な、反現実的な形式でなければ描けない、夢や優しさを描きたかったからです。一皮めくれば黒い現実のあることは百も承知で。本作だって、ハッピーエンドではありますが、ジャッキーが予想しているように、遠からず別れはくるような気がする。ジャンヌ・モローはこのときすでに「死刑台のエレベーター」「恋人たち」「夜」「突然炎のごとく」「エヴァの匂い」などで、ルイ・マル、ミケランジェロ・アントニオーニ、フランソワ・トリュフォー、ジョセフ・ロージーというヨーロッパ映画界を代表する監督のもとで、映画史に残るビッチの名作を撮っていました。彼女にすればジャック・ドゥミはちょっと勝手の異なる監督だったに違いないのですが、そこがそれ「ジャンヌはジャンヌ、ドゥミはドゥミ」で、どっちかがどっちかに譲るなんて気振りはありません。全力投球こそ、相手へのリスペクトだと知っている。それがこの映画をよくした最高の理由だと思います。

 

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