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特集「最高のビッチ」

2017年8月5日

特集「最高のビッチ3」⑤ジュリアン・ムーア
理想の結婚(2000年 コメディ映画)

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監督 オリヴァー・パーカー

出演 ケイト・ブランシェット/ルパート・エヴェレット/ジュリアン・ムーア

シネマ365日 No.2198

ジュリアンのきらめき 

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ジュリアン・ムーアとケイト・ブランシェットは本作、「シッピング・ニュース」「アイム・ノット・ゼア」の3度共演しています。「シッピング…」は、ケイトが登場まもなく死んでしまうし、「アイム・ノット…」はケイトの独壇場、二人がまともにぶつかり合うのが本作です。その前年ケイトは「エリザベス」でオスカー候補となり、本作ではトップ・クレジット、ジュリアンはだいぶ後の方で名前が上がります。ケイトは30歳、ジュリアンは39歳でした。でもね、どう見てもこの映画のキモはジュリアンね。原作はオスカー・ワイルドの「理想の夫」です。ひねりがきいて、登場人物は多彩でみな彫り込みが深く、さすがワイルドだと堪能できるおかげか、映画化は4度目▼時代は1895年。ロバート・チルターンは新進気鋭の下院議員、妻ガートルード(ケイト・ブランシェット)は婦人参政権を旗印に活躍中。公人の模範となるカップルだった。ロバートの催したパーティにウィーン社交界の華、チーヴリー夫人(ジュリアン・ムーア)が出席した。アーサー・ゴーリング(ルパート・エヴェレット)はロバートの親友だが、模範的なロバートとえらい違い、早く結婚するよう父親から尻を叩かれ、ロバートの妹メイベルはアーサーが好きだが、独身貴族を謳歌するアーサーは言を左右して煮え切らない。アーサーはロンドン一の怠け者だと自認している。チーヴリー夫人は「アルゼンチン運河会社」に多額の投資をしたが、ロバートの調査で詐欺同然のプランだとわかり、しかもロバートは議会でイギリスは投資から手を引くべきだと表明する、それを知ってロンドンにやってきた。つまり、「運河計画の国際的な価値を主張してほしい」そうすれば計画は推進され、自分の投資は回収できる。ロバートは拒絶、夫人は婉然と微笑し「今の名声に値しない過去があなたにあるとよくわかっているはず。あなたの富と経歴の出所を知っているわ。証拠の手紙もある。あなたがやったことは詐欺よ」応じないとこのスキャンダルを新聞社に持って行くと。当時地位も財産もないロバートは、スエズ運河に関する極秘事項をある男爵に流し、賄賂を得て現在の基盤を築いた。その男爵がチーヴリー夫人のパートナーだったことがあり、夫人はロバートの息の根を止める情報を掴んでいたのだ▼ロバートは窮する。モラルと正義の権化、ガートルードが知ったら許すはずがない。チーヴリー夫人とガートルードは高校時代の同級生だ。その時からウマが合わない。ガートルードは夫に忠告する。「夫人にあってはいけないわ。高校時代から彼女を知っているの。信用できないわ」。ガートルードは訪問した夫人に「二度とこの家に来ないでください」夫人は動じない「変わらないわね、あなた」「人生から学んだわ。不実な行いをした者はまたするかもしれないから付き合うなと」「お気の毒なこと。私たちお互いを嫌っていたわね。それでも忠告しに来たのよ。ご主人は私の手の中よ。私に従えと彼に言って」「よくも主人を自分と同列に扱ったわね。汚らわしい!」「財産を何で築いたか尋ねたら? 内閣の機密を売り渡した話を聞きなさい」▼清く正しく歩く道徳のケイトに比べ、ジュリアンの落ち着き払った綺麗な顔は悪魔的です(笑)。親友を心配するアーサーは夫人に近づき、証拠の手紙を取り返そうとするが失敗。二人は3週間だけ婚約していた時期があった。夫人は賭けを申し出る「今夜の下院でロバートが運河計画の促進を支持したら私の勝ち、あなたは私と結婚する。信念を曲げず計画に反対したらあなたの勝ち。証拠の手紙を渡す」。散々ハラハラさせた挙句、ロバートは正義を貫徹し、次期閣僚入りまで取り付ける。アーサーは年貢の納めどきで、メイビルと結婚する。ガートルードは男を理想化するのはやめ、お互いの欠点を受け入れるのが愛だと気がつく。万事めでたく収まる。チーヴリー夫人は潔く敗北を認めウィーンに帰った。帰り際、馬車から投げた謎の微笑がこわい。どっちかというと登場人物は類型的です。ケイトのガートルードは人形みたい、メイベルは男性依存症でどっちも退屈、何もないことをありそうに話し続ける社交界の、お定まりの女性たちの中で、唯一精彩を放つ刺激的な存在がチーヴリー夫人です。ジュリアンはもっとビッチをやればいいのに。もったいないわ。「キャリー」なんて、気のふれたジュリアンのママ役があったから、冒頭から冴え渡ったのよ。デヴィッド・クローネンバーグ監督はさすがだった。「マップ・トゥ・ザ・スターズ」のジュリアンは、自らを傷つける、カミソリの刃のような狂気と孤独の淵できらめいていました。ジュリアンの「ビッチ」に比べたら、ケイト・ブランシェットさえ「ねんね」だった。そういう役の割り当てだったかもしれないけど、それだけとは思えない。

 

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